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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第3章 フェイリス
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自分勝手


 ネネコについては後でフォローする必要があるな…。

 だが、それよりも今は一つ言いたいことがある。


「おい、アリサ」


 俺が呼ぶとアリサは少し不快そうに言った。


「何よ」

「何よ、じゃない。ネネコに謝れよ。お前がいきなり斬りかかったから事がこんなに大きくなったんだろうが」

「はぁ…? どうして私が魔族なんかに…」

「アリサ、それは言ってはいけないよ。例え魔族だとしても悪いことはきちんと謝らないと」

「う…」


 珍しく勇者までもがアリサを責めた。

 どうやら魔族とはいえ、いきなり斬りかかったことは勇者にとってもよくないことのようだ。

 アリサも自分が悪いことをしたことはわかっているのか言葉の歯切れが悪かった。

 しかし、今更あとには引けないのか、アリサは謝らない。

 その態度に対し、ネネコはこう言った。


「別に私はあなたが謝っても謝らなくても敵であることにはかわりないですから」


 その言葉にカチンと来たのか、アリサがおもむろに立ち上がる。


「やってられないわ。じゃあね」


 そう言うと部屋を後にしてしまった。


「あいつ、なんであんなにカリカリしてるんだ?」


 ここに来る前から様子が少し変だと思っていたが、こんなに怒るとは。

 しかも自分が悪いことも認めようとしない。もともと感情に直上的なものがあると思っていたが、ここまで考えのない奴だったか?

 勇者は申し訳なさそうに、頭をかきながらいった。


「アリサが迷惑かけたようで申し訳ない。でも、アリサもきっと何か理由があっていきなり斬りかかったんだ。問答無用で斬りかかるなんて、絶対にしないはずだよ」

「いくら理由があろうとなかろうと、いきなりネネコに斬りかかったことは事実。

 そのことについて俺は許すことはできない」


 そう言うと、俺はネネコを抱き寄せる。


「ネネコは俺の大切な部下だ。次に傷つけるようなことがあれば例えお前達でも容赦はしない。それだけは覚えておけ」


 そう言うと俺は勇者を思い切り睨みつける。

 俺の気迫に少し怖気づいたのか勇者の額を汗が伝うのがみてとれた。


「……わかった。肝に銘じておくよ」

「ふふ…」

「……? 何がおかしい」


 俺の殺気に全く動じることなく、逆に微笑むエリカに俺は疑問を抱く。

 エリカは、ネネコの方を見ながらこう言った。


「気を悪くしたらごめんなさいね。

 でも、ネネコさんがルイ君を慕う理由がなんとなくわかってね」

「エリカもかい。僕もちょうど今同じことを考えていたところだよ」

「はぁ…?」


 よく意味がわからんな…。

 しかし、今の言葉で毒気を抜かれた俺は、険しい表情を緩める。


「ふふ、まぁでもルイ君? とりあえずネネコさんを離してあげたほうがよさそうよ。

 彼女、頬を真っ赤にさせて可愛らしいわね」


 そこで俺は、ネネコをずっと抱き寄せていたことに気づく。


「わ、悪い。苦しかったか」

「いえ……そのようなことは。むしろ…いえ、なんでもありません」


 あまり表情を変えていないものの、緊張しているのか耳がピンとしているのがみてとれた。


「うー……」

「ん…?」


 フェイリスの方を見ると、指をくわえながら羨ましそうにネネコを見ていた。


「どうしたフェイリス?」

「な、なんでもありませんっ」


 俺が聞くと、慌てたようにそう言うフェイリス。


「…?」


 一体どういうことなのだろうか。

 エリカを見ればニヤニヤしているのがうかがえたが、とりあえず無視しておく。  

 俺は一度咳払いするとこう言った。


「……っと、話がそれたな。

 じゃあまずは今後についてだが……」


 そこで俺はネネコを見る。

 まずネネコをどうするか考えなければならない。


「ネネコ、今魔界に戻っても仮面の男に襲われる可能性がある。

 だからしばらくこっちにいないか?」


 俺の提案に困惑の意を見せるネネコ。


「え……? でも、仮面の男はルイ様達が倒したと…」

「ああ。だが、俺はどうもネネコが戦った仮面の男と俺とフェイリスが戦った仮面の男が同一人物には見えん。お前が殺される直前まで追い詰められた敵だ。例えフェイリスが俺の魔力を受け取ったとしても、ネネコを超えられるとは思えないしな」

「その、ネネコさんがどのぐらい強いのかは私は知りませんが、ルイさんからその、魔力を受け取ってからは苦戦する相手ではありませんでした。なのでルイさんの言う事もわかります」

「僕もそう思う」


 俺の意見に同調するフェイリスと勇者。

 エリカは、その意見には半信半疑といったところだった。

 勇者が一番疑ってきそうな気もしたが、やけにあっさり信じたな…。


「それを証明するなら、ネネコさんとフェイリスが決定的な力の差がある必要があるね」

「それなら今度、カードの更新があるからその時にネネコさんにカードを引いてもらって、フェイリスと差があるのか見てもらえばいいんじゃないかしら」

「なるほど。カードの数字の強さは絶対的ではないとはいえ、ある程度は信用できるからね」

「カード…ね」


 アネットのこともあるし、あまり信用してないんだよな…。

 いくら魔力と精神力が高くても戦闘技術を身につけていなかったらただの宝の持ち腐れだし…。

 勇者の案に対し、ネネコは首を横に振った。


「カード…? よくわかりませんがその必要はありません。

 私がその方と決定的な力の差を見せつければいいのですよね?」

「…まぁそうなるな」

「ならば簡単です」


 そう言うと、ネネコはいきなり短剣を鞘から抜くと、フェイリスの首元に短剣を突きつけた。

 その速さはもはや視認できるものではない。


「っ―――!?」


 突然のことに反応できず、なすがままのフェイリス。

 ネネコはため息をつくと、短剣を鞘におさめる。


「この程度で何も反応できないようでは、私には指一本も攻撃を与えられないでしょう…。

 仮面の男は、今と同じ速度で攻撃した私を軽々と避けましたから」

「ふむ……」

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