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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第3章 フェイリス
37/52

緊張感

8/23 描写を強化しました。

勇者に言われ、ついていく。

 ネネコは俺の横に寄り添い、勇者達を警戒しながらもついてきた。

 本当なら、今すぐにでも斬り捨てたい気持ちでいっぱいなのだろうが、俺が命令しているおかげでなんとか攻撃していないにすぎない。

 だからアリサ達が少しでも変な行動をしようものなら、攻撃するだろう。そうなれば今の俺では止めることはできない。

 人間界に来て、こんなに緊張感を持った空気は初めてだ。

 強すぎる優秀な部下を持つのは、止めるのも大変だ。ネネコは特に、俺関係のことになるとかなり敏感になる。

 それをなだめるのがルシエル達だったんだけどな…。

 そこで俺ははっとする。

 

「そういえばネネコ、ルシエル達はどうしたんだ?」


 俺がそう言うと、ネネコはバツが悪そうに顔を伏せた。

 ん……?

 なぜそこで顔を伏せるんだ。


「……」

「ネネコ?」


 そう言うと、ネネコは重い口を開いた。


「ルシエルは………殺されました」

「…………は?」


 今なんて言ったんだネネコは。

 殺された?


「ネネコ、こんな時に冗談はやめろ……心臓に悪い」

「冗談ではありません。ルシエルだけでなく、オザルリオ、ミリアも殺されました…」

「―――!?」


 嘘だ……。

 そんな…あいつらが死ぬなんて……。

 俺は思わずネネコの肩を掴んだ。 


「一体誰が殺したっ!?」

「わかりません」

「わからない……?」

「はい。私達が帰ってきたとき、仮面をつけた男に襲撃されたのです。それで3人共殺されました」


 当時の状況を思い出したのか、ネネコが顔をしかめる。


「3人まとめて殺されたのか…」


 あいつらは俺の従僕の中でも、上位を争う強さだ……。勇者達とも互角に戦えるぐらいの強さはもっているはずだ。

 それをまとめて殺しただと……。

 俺は思わずその場に崩れ落ちそうになるのをすぐさま、ネネコが俺を支える。

 俺は勇者をキッと睨みつけると、

 

「お前が俺を封印さえしなければこんなことにはならなかった……!」


 と、まくし立てるように叫んだ。

 わかっている。ここで勇者を攻めても何の意味のないぐらい。

 そもそも俺が慢心してあの日、部下達を休ませなければこんなことにはならなかった。

 いつも働き詰めで疲れていると思っての行動が結果として死なせることになってしまったのだ。つまり、全ては俺の責任。

 しかし、それでも勇者に一言言わずにはいられなかった。

 

「ルイ君……」


 勇者は、申し訳なさそうに顔を伏せるだけだった。

 何と声を掛けていいのかわからないのだろう。 


 「くっ……」 


 俺は振り上げかけた拳を下ろすと、深呼吸をする。

 部下が死んで激昂したところで、事態が解決するわけではない。

 

 俺達の間に、緊迫した空気が流れる。

 それはまるで、数時間のようにも感じられた。 

 やがて俺は落ち着きを取り戻すと、ネネコの方を向き、


「今、襲ってきたのは仮面の男と言ったのか?」

「はい。その者は黒い影のようなものを自在に操り、私達を攻撃してきました。私も応戦しましたが、全然歯が立たず更に怪我もしてしまい、殺されそうになりました。ですが男の影が私の腹を貫く直前、急に視界が眩しくなったかと思うと、人間界に飛ばされたんです」 


 黒い影、仮面、男。

 そいつのことは俺も思い当たりがあった。いわずもがな、さっきまで俺とフェイリスが戦っていた男だ。

 だが、もしそいつだとしたら気がかりがある。

 ネネコがそれほど苦戦した相手を、俺の魔力を受け取ったとは言えフェイリスが倒したということだ。

 ネネコの強さは俺の従僕の中でも群を抜いている。過激派の連中も、ネネコが出てくれば黙るほどの強さだ。

 もともとそんなに強くなかったものの、努力の天才だった彼女はどんどん強くなっていった。

 そんなネネコが歯が立たないということはよほどのこと。

 謎が深まるばかりだった。

 だが、今はそれよりもネネコだけでも無事だったことを喜ぶべきだ。

 俺はネネコをそっと抱き寄せる。


「ルイ様……?」


 俺の突然の行動に戸惑いを見せたものの、拒絶するようなことはしなかった。


「3人が殺されたことは本当に許せないが、お前だけでも残ってくれて本当に良かった」

「私はルイ様に死ねと命じられない限り絶対に死にませんから」 


 耳を震わせながらそういうネネコ。

 その時、先導している勇者が立ち止まった。


「ここだよ」


 ネネコと話しているうちに、学園の地下室に来ていたようだ。

 奥にある大きな扉を勇者が開けるとそこは書斎だった。

 かなり広いものの、ほとんど誰も触っていないのかほこりっぽい。

 しかし、中心部に置いてある円卓のテーブルやソファーはちゃんと掃除されているのか綺麗だった。

 

「じゃあとりあえず皆座ろうか」


 そう言うと、勇者とアリサはソファーに腰掛けた。

 俺も2人と対面するようにして座る。

 ネネコは俺に密着するようにして隣に腰掛けた。

 それを見ていたアリサが突っかかる。


「ちょっとあんた、ルイにくっつき過ぎじゃないの?」

「…それが何か?」


 何言ってるんだお前と言った様子でアリサを見るネネコ。その表情には不快と言った感情が見え見えになっていた。


「何か? じゃない。離れなさいよっ」


 こめかみをぴくつかせながら言うアリサ。

 機嫌が悪いのが伺える。


「こうしてくっついていた方がルイ様に何かあった時すぐに蹴散らせますから」

「ふーん…。つまり、あたし達が何かすると?」

「ええ」

「あんたねぇ…」


 苛立ちの様子を隠しもせず言うアリサ。

 尚も警戒を怠らないネネコに勇者が微笑みながら言った。


「まあまあネネコさん。さっきも言ったけれど、僕達は君達に被害を加える気はない。

 だから、その右手に持っているものをしまってくれないかな」


 どうやらネネコがずっと右手に何か隠し持っていることに気づいていたらしい。

 だが、ネネコは首を横に振った。


「黙れ。私はルイ様に言われたから渋々攻撃をとりやめただけ…。腐れ勇者の命令を聞く気はない。

 もし貴方達が何か変な行動を起こせば、その首を掻き斬るから」

「ちょ、あんたね! 私達は丸腰なのに変なことなんてできるわけないでしょ! 少しは考えなさいよ」

「丸腰の相手だからと言って油断してはいけないとルイ様に教わりましたので」

「ルイ……」


 アリサに睨まれる。

 後で色々言われると面倒なので、俺はネネコにしまうよう命じたものの危険ですと言って渋ってきたが、再度強く命じるとネネコは隠していたものをポケットにしまう。 

 それを見届けると勇者は手をたたいてこういった。


「よし、後はエリカとフェイリスが来るのを待つだけだね」


 そうして俺達は緊張した空気に包まれながらも、2人を待つ。

 ネネコは、周囲の本が気になるのかチラチラと視線をおくっていた。耳と尻尾が所在なく揺れる。

 2人が来るまでの間に、俺はこの部屋についての説明を少し受けていた。


「ここは僕達だけに与えられた部屋なんだ。ここでいつもエリカ達と会議しているんだよ」

「ふーん。しかし、このほこりっぽいのはなんとかならないのか」

「ははは…。掃除しようとは思ってるんだけどね、広すぎてなかなか手が回らないんだ」


 そう言って苦笑する勇者。

 するとそこへ、エリカとフェイリスがやって来る。


「ごめんなさいね。ちょっと事情聴取されちゃっていてフェイリスを連れてくるのに手間取ったわ」

「すみません……」 


 そうしてフェイリスとエリカもソファーに腰掛ける。

 そこでフェイリスがネネコの存在に気がついた。


「あの…この方は?」


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