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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第2章 怒涛の学園生活
25/52

潜在能力

2016 3/4 編集

 その後、予想を上回るアネットの成長ぶりに、俺はフェイリスとの決戦前日にしてついに完膚無きまでに叩きのめされてしまうようになった。

 元々のアネットが持っていた潜在能力に加え、あの液体による相乗効果だろう。

 あの液体は魔界でも滅多に手に入らないとされる秘薬で、名前は成長くん。ふざけた名前だがその効果は凄まじく、一時的に飲んだ者の魔力、精神力、身体能力の成長率をあげてくれるという代物で、俺も一時期飲んでいた。

 ただ飲むだけでは効果はないものの、鍛錬することでとんでもない効果を得られる。

 一度、どのぐらい効果があるのか部下で試してみたことがある。およそ同じぐらいの実力を持っている2人の内1人にこの液体を数滴与え、効果の切れるおよそ10日間みっちり鍛錬させた結果、この液体を与えた方が強くなりすぎて、飲んでない方は手も足も出ずに瞬殺された。

 更にそいつを担当している軍団長と互角になってしまうというとんでもないことが起きてしまった。だから、この効果は既に証明済み。

 ただ、人間に効くのかどうかは不明だった。

 そのため心配していたものの見ている感じだと普通に効いているようなのでよかった。

 鍛錬を終えると、俺は汗だくのアネットに向かってこう言った。


「とりあえず、1週間ご苦労だったな。まさか俺もこれほどまでに成長するとは思っていなかったぞ。この分ならフェイリスにも十分勝てる見込みはあるだろう」

「そ、そうかなぁ…? 流石に厳しいんじゃないかなぁ…。6も数字が離れてるし…」


 そう言いつつも、顔を綻ばせ嬉しそうにしているアネット。自分でも成長ぶりが信じられないらしい。


「もう俺から教えることはない。常時反射は勿論、4の字斬りもできるようになった。巻き上げは教えていないのでアレだが…」


 常時反射が身に付いたのがやはり一番大きいな。俺はとにかくそれを重視したからな…。

 あのフェイリスの光の矢が一撃でも喰らえば、恐らくいくら鍛えたアネットといえど一撃で倒される可能性がある。だから、常時反射は必須だ。 

 成長くんの力を使っているとはいえ、1週間でアネットが勝てるかどうかというと、賭けになるだろう。だが、俺はアネットが勝つと必ず信じている。

 途中、コウヤが成長したアネットと対決したいなどと言ったため対決させたところ、かなり互角のいい勝負をしていた。

 コウヤもこれにはびっくりで、2人共まさに本気でぶつかり合っていてすごく面白い勝負だった。


「じゃあ、明日の昼にここに集合になっているからな。ちゃんと休んでおけよ」

「うん、わかった! ルイ君、本当にありがとね!!」

「お礼はフェイリスに勝ってからにしてくれ」


 そう言うと、俺はコウヤと共に男子寮へと戻っていく。

 コウヤと別れ、ご飯と風呂も済ませて部屋で休憩をとっていると、勇者が帰ってきた。


「随分遅かったんだな」


 俺が言うと勇者は椅子へと腰掛け、何かの資料に目を通しながら、


「まあね…少し用事が長引いたんだよ。

 というかクラスの人から聞いたんだけど、明日広場でルイ君のクラスの子とフェイリスが戦うらしいじゃないか」

「あ、ああ。そうだが…、クラスの人が何故知ってるんだ」

「さぁ。だけど皆この話で持ちきりだよ。明日、広場にたくさんの人が見に来るだろうね」


 どこからそんな話が漏れたのだろうか…。フェイリスが自ら言いふらすことはないだろうし、アリサか、もしくはアネットかコウヤか…。

 なんとなく、アネットのような気もするんだよな…。

 私今度フェイリスさんと2人で戦うことになったの! とか嬉々としていいそうだし。それにアネットは他のクラスの奴とも仲がいいらしいしな。まああれだけ明るければ、敵も作りにくいだろう。


「どうして突然、そんなことを?」


 勇者の問いに、俺は腕を組みながらこう言った。


「お前は知っているだろうが、フェイリスは男に触れられることをひどく恐れている。それが何故かはわからないが、俺はそれを治してやりたいと思った。ただそれだけだ」

「ああ…。確かにフェイリスは男子に対しては一歩引いた態度をとっているね。僕に対してもそれはあるし。

 けれどそれがどうしてなのかは僕もわからない。アリサかエリカなら知っているかもしれないけど」


 あの2人は確かにフェイリスと仲がいい。特にエリカに対してはわりかしべったりだ。

 だが、フェイリスが倒れてしまったあの症状がもし戦場で出てしまえばどうなる? 何もすることができず殺されてしまうだろう。

 俺はいずれ来るだろう過激派との交戦において、重要戦力であるフェイリスを失うのはまずいと判断した。

だからこそ、こんなまわりくどいことをしている。

 しかし、フェイリスのあの症状は多分、いや確実に過去に何かあったからと見て間違いない。つまり心的原因によるもの。それならば、今すぐに治せる方法はない。男に触るだけで気絶なんて、相当症状が重くない限りありえないからな。

 今すぐには無理だが、徐々に改善していくことはできる。

 その手伝いをしてやるのが俺の目的だ。


「なるほどね。僕も、そのことについては気にかけていたんだよ。なんとかしてやりかったんだけど、フェイリスは大丈夫ですの一点張りだからね…」


 やはりな…。

 フェイリスは自分から治そうとする努力を怠っている。勇者ですらフェイリスは拒んだんだ。俺がこのまま手を貸そうとしてもフェイリスは応じない。だが、明日の対決でもしアネットが勝てば俺は1つだけフェイリスに命令を聞かせられる。それでこの命令をすればフェイリスも拒めないだろう。

 少しおせっかいだと思ったが、俺は彼女の事をこのまま放っておく気にはなれなかった。

 それは、なんとなくフェイリスがネネコと似ているからかもしれない。


「でも、ルイ君が手伝ってくれるのなら、フェイリスもなんとかなるかもしれないね」

「さあな…」


 俺はぶっきらぼうにそう言ったが、何故か勇者はニコニコしている。

 俺は少し引きながら言った。


「……なんだよ」

「いや、ルイ君がフェイリスの事ちゃんと考えてくれていて嬉しいなと思っただけだよ」

「ふん、無駄死にされたら胸糞悪いだけだ」

「ふふ、そういうことにしておくよ」


 ちっ…なんだよ調子狂うな…。

 その後、俺は勇者とどうでもいい話をしながらそのまま寝床へとつくのだった。

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