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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第2章 怒涛の学園生活
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核心

「どうだったかい、大浴場は」


 部屋に戻ると、寝巻き姿に着替えた勇者が開口一番にそう言ってきた。俺は、まだ少し湿り気のある髪をいじりながら、


「まぁ、悪くはないな」


 そう愛想なく言うと勇者は微笑んだ。

 そして、冷蔵庫からコーヒー牛乳を2つ持ってくると1つを俺に向けて投げてきた。

 反射的に俺はキャッチする。

 

「どうぞ」


 そう言ってビンのふたをとって勇者は飲み始める。 

 俺もそれに習って飲んだ。

 甘い味が俺の喉を潤す。

 一気に飲み干すと、ゴミ箱に捨てた。

 俺はソファーに腰掛けると、ゆっくりと目を閉じる。


「ふぅ…」


 やっとのことで一息をつく。

 その様子を見て勇者が言った。


「お疲れのようだね。肩を揉んであげようか?」

「いらん」


 誰が勇者の施しなんか受けるか。

 コーヒー牛乳はありがたくもらったけどな。


「というか、さっきの俺の質問について答えてくれてないぞ」

「さっきの質問って…、何故僕が君をこの学園に連れてきたかってことかな?」

「そうだ」


 結局こいつは肝心な質問に答えていないからな。

 確か、答えることができないとか言ってはぐらかしたんだ。

 だが、それで納得できるだろうか?

 いや、できるはずがない。

 ちゃんと説明をしてもらわないことには、俺はこいつをずっと警戒しなければならないからな。

 結局こいつは敵なのか、それとも…。


「この前も言ったけれどその質問には…」

「答えられないって? そんな答えで俺が納得できるとでも?」

「うーん…。僕も話せるのなら話したいんだけど…」


 そこで勇者は目をそらした。

 こいつは一体何を隠している…?

 俺はしばらく勇者に対して揺さぶりをかけると、苦し紛れにこう言った。


「うーん全部は答えられないけど、少し、ほんの少しだけなら」

「はぁ?」

「それで本当に勘弁して欲しい。

 というか、僕は君には絶対教えるなと言われているんだ」

「俺に教えるなと言われている?」

「あっ」


 失言だったのか、手で口をおさえる。

 今、俺には教えるなって言ったよな。

 その言い様だとまるで…。

 観念したのか、肩を落とすと勇者はこう言った。


「君もどうやら気づいたようだから、これだけは言うよ。

 君のことを生かし、力を封印し、更に学園に通わせることにしたのは僕の独断ではない」

「お前の独断ではない?」


 勇者は頷く。


「つまり、勇者以外の第3者がお前にそうするように命令したと?」

「まぁ、そうなるのかな」


 勇者はまいったなと言わんばかりに頭をかいた。


「ごめん。今言えるのはここまでだ。

 というより、この事も本当はまだ言うつもりなかったんだけれどね」

「その第3者とは?」

「…」

「黙秘か」


 勇者はすまないと言った表情で頷いた。

 そいつさえ分かれば、元に戻す方法を吐かせてとっとと帰るんだが…。


「じゃあそいつの性別と特徴だけ教えろ。見つけ出して、俺が問い詰める」


 俺が勇者に詰め寄るようにして言うと、勇者は目を泳がせた。


「え、ええ…!? それはさすがに…」

「あのな、俺が早いとこ力を取り戻さないととんでもないことになると聞いていなかったのか?

 そいつに吐かせれば封印を取り消せるかもしれないだろう」

「う、うーん…まあそうなんだけど…。

 でも絶対に言うなって言われてるし…、それに言ったら僕殺されちゃう」


 殺される?

 そんな物騒な相手からの命令だったのか?

 まあ勇者にそんな命令をするぐらいだから、まともな奴ではないと思ってはいたけど。 


「でも君の敵ではないということは言っていた。

 ごめんだけど、答えられるのは本当にここまでなんだ」


 俺の敵ではない?

 そんなこと信じられるはずがない。

 それなら何故俺の力を封印する必要があったのかという話になるし。

 俺はしばらく考えてみたものの特に思い浮かばなかった。

 本当にいったい誰なのか…。早急に調べたいところだ。

 だが、とりあえず今日はもう遅い。

 勇者はベッドの2階に登ると、体を横たえて寝る準備に入ったため俺も寝ることにした。

 まさか、勇者と寝床を一緒にする日が来ようとはな…。

 世の中わからないものだ。

 今、お互いに寝首をかこうとと思えば可能だろう。

 だが、それでも俺はぐっすりと眠ることができた。

 何故なら、あの甘ちゃん勇者にそんなことをする度胸などないと確信していたからだ。

 そして次の日。

 勇者は既に出ていたため、俺は朝食を済ませたあと1人で学園に向かう。

 

「少し肌寒いな」


 まだ秋とは言え、朝は気温が低いため寒い。

 学園に着き、クラスに入るとコウヤとアネットが手を挙げるようにして挨拶してきた。


「ルイくんおはよっ」

「ちーっす」

「おはよう」


 何故かハイタッチを求められ、それに従ったあと席に着く。

 アネットは俺の前に立つと、身を乗り出してこう言った。


「ねえねえ、ルイくんって勇者様と同じ部屋なんでしょ?」

「ああ」


 どこからそんな話が漏れたんだ。


「どう、あの勇者様と一緒の部屋にいるという優越感は?」

「…? 何を言っているのかよくわからないぞ。別にどうもしないけど」


 するとアネットはこける仕草をする。


「まあなんとなくルイくんならそういうと思ってたよ。

 とりあえずルイくん。今日も鍛錬宜しくねっ!」


 そうしてウィンクするアネット。

 昨日くたばっていたのが嘘のような笑顔だった。


「時間は少ない。厳しいかもしれないが、立派な戦士には絶対してやるから」

「おぉっ! それは楽しみ!」


 そうしてアネットのテンションが上がっていると、フェイリスがやってきた。

 

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