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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第1章 学園入学まで
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連行されし者

3/10 16:25 大幅に編集

 拉致された俺は、勇者達が通ってきた道を歩かされていた。


「じゃあとりあえず、逃げられないように…と」


 俺は、戦士の女によって手をロープで縛られた。後ろ手に拘束され、動きづらくなる。


「痛いな。縛るならもう少し緩く縛ってくれよ」

「嫌よ。緩くしたら解いて逃げるかもしれないでしょ」

「この状況でどう逃げろって言うんだよ。魔法も使えねえし、お前にもらったダメージであんま動けないのに」

「う…それでも念の為によ!!」


 はぁ~…どれだけ警戒心が強いんだよこの女は。

 その乳、揉みしだいてやろうか。

 あ、でも揉むほど大して大きくもなかったな。

 

「ていうか、俺を何処に連れて行くつもりだ」


 手をロープで縛られ、歩かされている俺は睨むようにして言った。


「とりあえず、まずは魔王を倒したことを王様に報告しに行く」


 勇者は周囲を警戒しながらそう言った。

 俺を倒したことを報告?

 何を言ってるんだこいつは。


「俺を倒したことを報告って、俺はここに生きているじゃないか。

…生きてるよな?」


 まさか本当は死んでるんだとか言われたらどうしようか。

 だが安心したことに、勇者は頷いた。


「うん。確かに君はまだ死んでいないから厳密には倒したとは言えない。

 けれど、さっきも言ったけど、力が封印された以上君はもう魔王としての能力はもうないんだ。

 だから――」

「だから、魔王としての俺はもう倒されたと?」

「察しがいいね」

「まあな…ってお前な……じゃあ俺にはもう生きる価値がないじゃないか」


 勇者は微笑む。

 俺にはそれが嘲笑にしか見えず、ただただむかついた。 

 だが、魔王としての力が使えない以上俺にはどうすることもできない。


「……」


 そうして俺は、勇者たちと共に自分の城から出る。

 従僕たちは既に制圧されており、皆気絶していた。

 俺は心の中で静かに謝罪した。


「(すまない。どうやら俺は勇者たちに連行されるみたいだ。まあ後処理が大変だと思うが…ネネコがいれば大丈夫だろう)


 そして戦士たちの栄光を称えて祈りを捧げる。

 祈りを終え、勇者たちの方を振り向く。


「ここからなら使えるか。

 じゃあエリカ。ミスティックドアを頼めるかな」

「ええ、わかったわ」


 エリカと呼ばれる魔法使いの少女が呪文を唱えると、光り輝く扉が目の前に現れた。


「この扉を入れば王様のいる場所まではすぐだ。

 魔王。君が先に入るんだ」

「何で俺から?」


 俺がそう言うと、戦士の女がしゃしゃり出てきた。


「そんなの、あんたが逃げ出すかもしれないからに決まってんでしょ」

「はぁ? だからこの状況でどう逃げろって言うんだよ。さっきも言ったが俺はもう魔王としてのちからは封印されたんだ。逃げたところでどうしようもないだろ?」

「どうかしら?

 封印された、とか言って実はまだ何か隠してるって可能性も否定できないもの」


 いや、あのな……。

 そうして戦士の女は俺が逃げられないように、背後につく。



「さあ、早く中に」

「はいはい、わかったよ」


 勇者に促され、俺は渋々ミスティックドアとやらに入ることに。

 そのあとに続いて勇者たちが入ってくる。

 魔法使いの女が再び呪文を唱えると、扉は閉じ、別の場所へと繋がった。

 俺たちは出口へ向けて移動し始める。

 歩きながら、先に口を開いたのは勇者だった。


「そう言えば自己紹介をしていなかったね。

 僕の名前はリュート。 

 そしてこの、戦士の女の子がアリサだよ。

 アリサ、自己紹介」


 勇者がそう言うと、アリサはぷいっと顔を背ける。


「どうしてこいつに自己紹介しなきゃいけないのよ」

「アリサ?」


 勇者が微笑むと、アリサと呼ばれた女はたじろぐ。


「う…。はぁ、仕方ないわね。

 アリサよ。リュートの護衛やってるわ。以上」

「えっお前、勇者の護衛だったのか? くっ…ハハッ」


 俺が馬鹿にするように笑うと、アリサはあからさまに顔を赤くして怒った。

まるでゆでダコのようだ。


「何あんた、私を馬鹿にしているの?」

「さあな~。そう思ったのならそういうことじゃないか?」

「なっ、こいつ…!!」


 アリサがハンマーを取り出そうとしたところで、制止の声がかかった。


「まあまあ。二人共喧嘩はやめなさい」


 そうして俺とアリサとの間に入り込んできたのは魔法使いの女。


「エリカぁ、私こいつ嫌い」

「これから行動を共にするのだからそんなこと言わないの。

 魔王、貴方もよ。そんな喧嘩腰にならなくてもいいじゃない」

「なんだろうな。こいつと話をしていると無性に腹が立つ。というか、嫌いならできれば逃がしてくれ」


 皮肉を込めてそういうがエリカは全く動じなかった。


「残念だけどそれはできないわ。ごめんなさいね。

 っと話がそれたわね。

 私の名前はエリカよ。主にリュート達を傍で補助する係をやっているの。

 あまり得意ではないけれど、攻撃魔法もいくつか使えるわ」


 エリカは呪文を唱える。すると、エリカの体が浮き上がった。

 浮き上がると同時に、エリカの豊満な乳が揺れた。

 そして再び地面に降り立つ。


「こんな感じにね」

「ほう…人間にしてはやるじゃないか」

「魔王にそう言ってもらえるなんて光栄だわ」


 浮遊の魔法は、俺も習得までに結構な時間を費やしたものだ。

 まさか人間に使えるものがいるとはなぁ。

 世の中わからないものだ…。


「ん?」


 その時、エリカの背後で何かが動く気配を感じた。

 というより、誰かが隠れていた。


「こらこらフェイリス、何怖がってるの。前に出なさい」

「えぇ……でもぉ…」


 そう言いながら、おずおずと俺の前に姿を現したのは俺が一番初めに倒そうとした僧侶の少女だった。

 エリカやアリサに比べると明らかに年が低いことがうかがえる。

 少女は黙っていたが、エリカに促され、やっとのことで小さな口を開いた。


「フェ、フェイリス…です。僧侶…です」

「そうか」


 俺が観察するようにフェイリスを見ていると、怖がっているのか俺から視線を逸らす。

 そしてエリカの背中に隠れてしまった。


「もうこの子は…。

 ごめんね、この子すごく人見知りするから」

「いや、まあ本来ならばそれが普通の反応だろう。

 これでも俺は一応人間からは畏怖されている魔王だ。その本人を前にしてびびらないはずがない。むしろフェイリスの反応こそ自然だとも言えるだろう。どこぞの暴力女と違ってな」

「あん…? 誰が暴力女ですって?」

「別に俺は暴力女と言っただけであって、お前だと言ったわけではない。それなのに反応したということは自分が暴力女だという認識はあるということか。なるほどな」

「くっ…こいつ…!!」

「まあまあ、アリサ落ち着きなさい


 とはいえ、これで一応勇者パーティの自己紹介は終わった。

 流れ的に考えて、俺も何か言わないといけないのだろうが、あいにく別に俺は勇者たちと宜しくする気はない。

 面倒だしな。

 だが、案の定アリサが突っかかってきた。


「ちょっと、私たちが自己紹介したんだからあんたもしなさいよ!!」

「はぁ?何でお前らが自己紹介したからって俺もしないといけないんだよ。それはおかしいぞ」

「あんたこそ何屁理屈言ってんのよ、往生際が悪いわね。

 エリカ、強制的に言わせてやって」

「え~? でも、こういうのは無理やり吐かせるんじゃなくて本人の意志で言わないと」


 そう言って渋るエリカ。

 魔法を使ってまで吐かせる気かよ。

 まあでも魔法なんか使われたらいらないことまで喋りそうで怖いな。

 なので俺は渋々答えることにする。


「…ルイだよ」


 一言だけそう言うと、俺は黙った。

 暫くして、勇者が口を開く。


「ルイくんか、いい名前だ。

 じゃあこれからはその名で呼ばせてもらうから」

「ふーん。あんたルイって言うんだ。くっ…馬鹿にしてやろうと思ったけど別に変な名前でもないから何も言えない…!!」

「じゃあ私もルイくんって呼ばせてもらうわ」

「勝手にしろ」


 そうこうしているうちに、出口が見えてきた。


「あれを抜ければ王宮まですぐだよ」


 王宮か。まさか魔王である俺が(オモム)くことになるとはなんたることか。

 扉から出ると、俺は照りつける太陽に顔をしかめる。

 やがて目が慣れると、どうやらここが城下街であることがわかった。

目と鼻の先の距離に、王宮が見える。


「やっぱりこっちの世界のほうが落ち着くわ」


 そう深呼吸するアリサに、俺はこう言い返した。


「確かに魔界に比べて空気が汚いし、お前のような女にはピッタリの世界だと思うぞ!」


 俺は不敵に微笑みながらそう言う。


「…リュート、こいつ殺していい?」

「まあまあ」


 そうして俺とアリサは口論しながら、王宮へと向かっていく。

 門前に着くと、兵士が勇者に敬礼した。

 そしてすぐに通してもらえる。

 これが勇者特権ってやつか。

 王宮内では、兵士やメイドたちがセワしなく動いている。

 大臣らしき人物が、勇者に気づくと駆け寄ってきた。


「おぉ、これはリュート様。お早い帰還で」

「うん。魔王を倒してきたよ」


 勇者が軽い口調でそう言うと、大臣は目を見開いて驚く。


「な、なんと…!それは誠ですか!?」

「うん」

「これは、大変だ…。すぐ王様のところへご同行願えますか!?」

「大丈夫だよ。皆もいい?」


 勇者の言葉に3人が頷く。

 そこで大臣が俺に気づいた。


「ところで、この青年は…」

「ああ、後で説明するよ。とりあえず王様の元へ案内してくれるかい」

「え? ああ、はい。ではついてきてください」


 大臣にそう言われ、俺は勇者達と共に王様の元へ向かう。





 

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