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勇者パーティに拉致された魔王は辛い  作者: リザイン
第2章 怒涛の学園生活
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理由

 とは言ったものの、治療室って何処にあるんだ…?

 このままだと、この広大な学園をさまようハメになってしまう。

 俺は近くを歩いていた女生徒に聞いてみることに。


「ちょっといいか。

 治療室ってどこにあるか、わかるか?」


 突然話しかけてきた俺に一瞬不審そうな態度を見せたものの、気絶しているフェイリスをみて理解したのか指を指して教えてくれた。

 俺は礼を言って、治療室へと向かう。

 

「ここか」


 看板に治療室と書いている所を見つけたので、俺は中へとはいる。

 すると医師が俺に気づいた。

 俺は軽く事情を説明する。

 フェイリスだとわかると、すぐに医師は寝かせるように指示してきた。

 俺は、ベッドにフェイリスを寝かせると医師の対応を見守る。


「少し胸の動悸(ドウキ)が激しいみたいですね。

 何か、彼女を驚かせるようなことでもしませんでしたか?」


 驚かせるようなことか。

 でもあれは、驚いたというよりは怖がっていたように見えたが…。

 一応、こうなるまでの経緯を説明すると医師は納得したのか、頷いた。


「なるほど。事情はだいたい理解しました。

 とりあえず、安静にしておけばじきに動悸もおさまってくるでしょう。

 ですが念をとってもう少し詳しく調べてみましょう」


 そうして医師が詳細な検査をしている間、俺は少し時間が空いたためさっきの2人を見に行くことに。

 2人はロイ先生の攻撃を直にもらったものの、割と元気そうだった。


「はぁ~やっぱロイ先生はつえーわ。

 攻撃が全く見えなかった」

「まさかこのわたくしが手も足も出ないなんて…」


 2人共、今は喧嘩する気はないのかぶつぶつと何か言っているだけだった。

 いや、というよりもお互い相手を見ないようにしているのかもしれない。

 まぁ、さっきの罵り合いから考えて、顔を見れば再び喧嘩が始まるのは見えてるしな。

 俺は、治療室内を少し歩いたあと、再びフェイリスのもとへ行き椅子に腰掛ける。

 どうやら他に異常はないらしい。

 彼女は、今は落ち着いた表情で眠っている。

 

「…」


 俺は立ち上がると医師に言った。


「もしフェイリスが起きても、俺が連れてきたとは言わないでください。

 フェイリスは、゛男に触れられたら恐怖を感じる゛みたいなので」


 さっき言ったロイ先生の゛フェイリスに触れてはいけない゛という言葉。

 あれは詳しく言えば、゛男はフェイリスに触れてはいけない゛だ。

 あの時男がフェイリスの腕を掴んだ瞬間、彼女は明らかに怯えていた。 

 思えば、授業の時もそうだった。 

 それまでは普通だったが、俺の手とフェイリスの手が触れた瞬間に彼女はひどく驚き、悲鳴を上げた。

 だが、昨日の宴ではフェイリスは普通にエリカに触れていたし平気そうだった。

 なぜ男だけなのか。それを知ることは恐らくフェイリスの闇を知ることになるだろう。

 だが、俺は無理に聞くつもりはない。

 魔族の中にも、男性嫌いというものは存在する。元から嫌いという奴もいるが、大抵は男からひどい仕打ちを受けたりして嫌いになっているやつが多い。中には男に見られるだけで恐怖し震えが止まらなくなり、頭痛や吐き気を(モヨオ)す者までいるぐらいだからなぁ。

 俺はそういう魔族達の苦悩というものを何度か聞かされた。

 治してやれたらよかったのだが、俺は心を癒す魔法というものは会得していないしそれ以前にそんなものは聞いたことがない。


「わかりました。ではフェイリスさんにはクラスの女の子が連れてきたということにしておきましょう」


 医師が頷いたのを確認すると、俺は治療室をあとにした。

 再び、外へ行くとちょうど模擬戦が終わったところだった。

 あんなに激しい衝突をしていたのに、周囲には一切傷がない。

 魔力を使い切って疲れたのか、座り込んで息を切らしている者や、まだまだ戦えそうな者まで様々だが、大富豪クラスの連中は割と涼しげな顔をしている人が多かった。

 ロイ先生は俺に気づくと手を挙げた。


「フェイリスくんは大丈夫だったかい?」

「ええ。少し動悸が激しいぐらいで、安静にしていれば治るとのことです」

「それは良かった。

 魔王を倒したその翌日に彼女の身に不幸が起きたなんてことになれば、リュートくん達に何をいわれるかわかったものじゃないからね。

 とりあえず、模擬戦は終わったからルイくんも自分のクラスへ戻るように」

「はい」


 そう言って俺はクラスに戻ると、制服に着替える。

 クラスの連中は、皆悔しそうにしていた。

 やはり大貧民と大富豪では能力に差がありすぎるか…。

 いや、待てよ。

 そのように考えるのは早計かもしれない。

 確か勇者が、クラス分けは数字に関係なくランダムと言っていた。

 それなのに、そんなにクラスによって差が出来るものなのか?

 それに、このクラスにはフェイリスもいる。

 僧侶なので攻撃手段には欠けるものの、それでも大富豪の連中に善戦していた。それも4人相手にだ。

 

「…ふむ」


 俺はこのクラスが何故1年間ずっと大貧民なのかという理由が1つ思い浮かんだ。

 それは、皆魔力の使い方をうまく知らないから。

 フェイリスを治療室へと送っていったので皆の戦いぶりは少ししか見れなかったものの、それで十分だった。

 皆はただ相手に魔法をぶつけ、ごり押しして倒そうとしている。そして、拳で殴り合いをしていた者や剣同士で勝負していた者も、ただ闇雲に攻撃しているだけのように見えた。

 相手の攻撃を読み、攻撃を避けて無駄な労力を減らしながら攻めていく…、それができていないのだ。

 特に魔法を使う者にとっては、これは基本的な行動と言える。

 相手に防御されるとわかっていて魔力を無駄に消費するだけの魔法を使うのは、全くもって無意味だ。

 それなのに、突破できるとでも思っているのか魔法を撃ち続け、最後には魔力がほとんどなくなり回復を待たずして大富豪の連中に止めを刺されていた。

 そう。

 大富豪の連中が強いのではない。

 俺達のクラスが゛弱すぎる゛のだ。

  


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