編入
「ん? どうかしたかね」
俺が立ち止まったのを不審に思ったのか聞いてくる学園長。
なんでもありませんと言い、学園長の後ろにつくと、改めてJOKERと書かれたカードを眺めた。
そこには陽気なピエロの姿が書かれており、まるで俺を見ているかのような描き方だった。
「…」
そしてもう1枚のカードには黒の3のクローバー。
一体どういうことだ?
俺はどっちのカードを使えば良い?
でも、俺は今魔力が封じられていて使えない状態だ。それならばやはり3か?
確か機械は゛今使える魔力゛で判断しているとアリサ達は言っていたよな? ならば3が正しいのだろうか。
とりあえず、皆には3のカードを見せておくことにしよう。どちらにせよ、俺は今はJOKERなど使えないはずだ。
それに、アリサ達はK(13)が現時点で最強と言っていたはず。
もし、JOKERのカードを持っているなんてことが知られた時にはどうなるかわかったものではない。
変に期待されても困るだけなので、俺はJOKERのカードを内ポケットへとしまった。
そうこうしているうちにクラスへと到着した。
名札を見ると大貧民。
予想はしていたものの、やはり大貧民か。
しかし、今のところ大貧民と思われるような要素はあまり見当たらないけどな。
廊下が少しボロいぐらいか?
でも、アリサ達はサービスがどうのとか言っていた。だから大貧民と実感するのにはまだなのかもしれない。
「ここが君のクラスだ。入りなさい」
学園長に続いて俺はクラスの中へとはいる。
既に授業をしていたのか、講師が学園長を見て驚いた。
「これは学園長。どうされたのでしょうか?」
「ん、いや編入生を紹介しようと思ってな」
「はぁ。編入生ですか」
講師に話はまだいってなかったようで、戸惑いの様子を見せた。
突然の学園長の訪問にクラス内でもざわめきが起きる。
俺はクラスの連中を見渡した。
皆普通そうに見えるものの、全員魔力を内に秘めている立派な学園生だ。
真面目そうな者、ちゃらそうな者、やる気のない者、別のことをしている者、怖そうな者など様々な面子が揃っている。
その中に一人、じっと俺のことを見ている生徒がひとりいた。
フェイリスだ。
俺はフェイリスを一瞥したあと、学園長に促されたため教壇の前へ。
「ではルイ君。自己紹介を」
自己紹介?
なんでそんなこと…と思ったが、皆が注目している以上するしかないか…。
「ルイ=フリードリヒ・ジハードだ。
よくわからないが今日から世話になる」
淡々とそう言うと、皆の反応を待った。
暫くして、一人の女生徒が手を挙げた。
「はいは~い!ルイ君のカードの数字はいくつですかー!」
「3だ」
俺は指を3つ立てて手を前に出す。
その瞬間、クラスの一部の人がため息をついたのがわかった。
女生徒は続ける。
「じゃあ私と同じだ! 宜しくね、ルイ君!」
学園長がわざとらしく咳をする。
「あー質問は授業の後でするように。
じゃあルイくん。君はあそこにいるフェイリスくんの隣が1つ空いているだろう?そこに座ると良い」
俺は頷くと、フェイリスの元へと向かう。
こんな時期に編入など珍しいのか、俺に興味を持っている人が多いようだ。皆から注目されていることがわかる。
学園長は講師に一言言った後、去って行った。間もなくして、授業が再開される。
皆は俺のことが気になるものの、とりあえずは授業を聞くことにしたようだ。本を開き、ノートにメモをとっているようだが、俺にはそんなものはないのでただ講師の話を聞くだけになってしまう。
すると、横にいたフェイリスが小さな声で言った。
「あの、よかったら一緒に見ますか…?」
「おお、それは助かるよ」
俺はフェイリスに本を見せてもらうことに。
が、言語が異なるので読むことができなかった。
「悪いんだけどこれ、言語が違うから読めない」
「そうでした。ルイさんは魔王だから、本の言語も違うんですよね。
どうしよう…」
フェイリスは俺のために何か良い方法を考えようとしてくれているみたいだが、思いつかなかったようで、あたふたとしていた。
俺はそんなフェイリスに礼を言う。
「ありがとう。
まあ、本の言語はわからずともあの講師が言っていることぐらいはわかる。
だから、メモとペンだけくれないか?」
「は、はい。どうぞ」
そう言って、俺はフェイリスからメモとペンを受け取る。
その際に、一瞬俺の手とフェイリスの手が触れてしまった。
「きゃぁ!!」
フェイリスは突然悲鳴を上げて俺から距離を取る。
その際メモとペンは音を立てて床に落ちてしまった。
「フェイリスさん? どうかしましたか?」
講師が不審そうに聞いてくる。
フェイリスは少し引きつった顔で言った。
「い、いえなんでもありません・・・。突然目の前に虫が現れたので」
「そうですか。
ですが、貴方はこのクラスを代表する一員です。虫ぐらいで驚いていてはいけませんよ」
「はい…。すいません」
フェイリスが謝っている間に、俺は落ちてしまったペンとメモを拾った。
「大丈夫か?」
俺は小さく声をかける。
「ご、ごめんなさい。突然触れたことに驚いてしまって」
「いや、気にするな。
それよりも、今は授業に集中したほうがいい。皆、フェイリスのことを見てるぞ」
フェイリスはこくこくと頷くと、前を向いた。
俺は講師の話を聞きながら、メモを取っていく。
しかし、さっきの反応。
あれは驚いていたというよりは怯えていた?
「…」
まあいい。
今はそれよりも、講師の話に少し興味があった。
というのも、内容が魔王討伐についてだったからだ。
「皆ももしかしたら話は届いていると思うが、先日、勇者リュート、戦士アリサ、魔法使いエリカ、そして、我々大貧民クラスのフェイリスさんの活躍により、ついに魔王が討伐された」
講師の発言に、クラスが騒がしくなる。
フェイリスは少し恥ずかしそうにしていた。
さっきの怯えた様子はもうどこにも見当たらない。
「静かに。
これで、我々の目的は終了したことになる。しかし、だからと言ってこの学園は閉鎖したりはしないぞ。
魔王以外にも敵が現れる可能性は十分あるからな。
これからもこの学園は運営を続けるぞ」
講師はそういうものの、皆魔王討伐という一番の目的は失ったのか、イマイチ反応が薄い。
だが、講師のその判断は正しい。
俺が言ったところでどうせ信じはしないだろうが、そのうち過激派が襲ってくる可能性が大いにあるからだ。そうなれば地獄絵図になるのは確実。
だから、腕を磨いておいておくに越したことはない。
「ん?」
そこで俺は違和感を感じる。
なんで俺は人間の肩を持っているんだ?
どうしてかわからないまま、俺は授業を受けたのだった。




