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命名

「ねえ、どうしたの?」


 ポンポン


 肩を叩かれようやく私は再起動しました。


「大丈夫?なんか急に黙り込んじゃったけど。」


 バレてない?この反応は私がホムンクルだとバレてないよね。


「は、はい大丈夫です。」


 それならいいのだけどと言いつつアリスは自分の胸に手を当てて話かけてきます。


「それじゃあ改めて。わたしの名前はアリス。あなたの名前を教えてもらえる?」


 名前ですか。今までマスターと二人きりだったので気にしたことがなかったですがやはりあった方がいいのでしょうか?そういえば宿屋に泊まる時も名前が必要でしたね。その時はAさんで通しましたが。でも私どういう名前がいいのかさっぱり分からないです。生まれて初めて聞いた名前がアリスですし。マスターの名前?マスターはマスターですよ。


「私に名前はありません。アリス、私の名前を考えてもらえませんか?」


 アリスに丸投げしました。


「え…そうだったんだ。でも本当に…私が名前を考えていいの?」

「はい、お願いします。」


 アリスは悩みだしました。なかなか決まらないようですね。そんなにこだわる事なのでしょうか?


「私もアリス同じようにアリスって名前でもいいですよ。」

「だめよ。ややこしいじゃない。名前をつける意味がないわ。…でも、そっか。完全に同じはダメだけど少しだけ似てるのはいいかも。…アリス、アリス………リズ!リズなんてどう!」


 リズ…か、うん良いんじゃないかな。


「良いと思います。私の名前はリズです。ありがとうアリス。」


 アリスは照れくさそうに笑いました。


「リズ…その…お願いがあるのだけど。」

「何ですか。言ってみて下さい。」


 アリスは顔をうつむかせて言いづらそうにしている。どうやら今から言う事はかなり勇気のいる事らしい。


「わたしの友達になって下さい!」

「いいですよ。」

「ほ、本当にいいの?わたし…呪い…じゃなかったけど変な力を持ってるよ。リズ大怪我するかもしれないよ。」

「心配は要りませんよ。もう私がアリスの固有魔法で怪我をする事はありませんから。」


 少し身構えてしまいましたが私の応えられる内容で良かったです。アリスと仲良くなるのは私も大歓迎ですからね。


「ありがとうリズ!」


 よほど嬉しかったのかアリスが抱きついて来ました。力の制御が出来ない彼女は今までこういう事も出来なかったのでしょう。私もアリスの背中に手を回して抱きしめ返しました。

 アリスが落ち着いた後、用意してくれた椅子に座わりました。アリスはベッドに腰掛けています。


「リズの事知りたいわ。聞いてもいい?」

「いいですよ。」


 勿論、答えられる範囲でですが。…そうすると話せる事が少ないな。


「リズは旅をしてるんだよね。今までどういう所に行ったの?」

「あ~まだ初日なので…これからです。」

「あれそうだったんだ。それじゃあリズはどうして旅をしようと思ったの?」

「一言でいうと知りたいからですね。この世界を見て回りたいのです。」

「世界か…わたしにはあまり実感ないな~。わたしはこの力で人を傷つけるのが怖かったから外にほとんど出たことないのよ。この街の事すらよく知らないわ。」

「固有魔法ですか…。」


 制御できないとかなり厄介ですね。………考え事をしてたら眠くなって来ました。


「服の上からとかなら触っても大丈夫なんだけど万が一を考えると不用意に人に近づけなくて…。」


 アリスが目を伏せて悲しそうな顔をします。なんとか元気づけられないでしょうか?


「………私この街には夕方に着いたばかりでまだ街を見て回ってないのです。アリスの力は私がなんとかするので良ければ明日一緒に街を回りませんか?」

「大丈夫…なの?」

「他の人に触れるようにするのは難しいですが触らないようにはしてあげられると思います。」


 いくつか案はありますが具体的にどうするかは眠いので明日考えましょう。頑張れ明日の私。


「…本当に…ありがとうリズ。それじゃあ…午前中は手伝いがあるから午後からなら行けるわ。」

「それでは明日の午後にここにきますね。…眠くなってきたのでそろそろ宿屋に戻りますね。」


 アリスの顔が曇る。

 私ももう少し話ていたいが眠気に襲われさっきからあくびがでそうになるのを我慢している。


「…わかったわ。…それからリズ。眠れないからって宿屋を抜け出しては駄目よ。他の人にも心配をかけるわ。」

「他の人?…私一人旅なので他に人はいませんよ。」

「一人旅!リズ一人だけなの!…リズわたしと年変わらないわよね。」


 一人旅は珍しいのだろうか?見た目の年齢は確かにアリスと変わらないだろう。本当は私はまだ生後1ヶ月くらいだけれど。混乱するだけなので言わないが。


「はい、宿屋にも一人で泊まっていますので心配をする人はいませんよ。せいぜい宿屋の店主が不思議に思うぐらいでしょう。」


 そろそろ本格的に帰ろうと椅子から立ち上がった時、ガシッとアリスが腕を掴んできた。


「えっと…どうかしましたかアリス?」

「リズ今日はもう遅いわ。ここに泊まっていきなさい。」

「えっ!」

「夜の街を一人で出歩くのは危険よ。心配する人がいないなら無理して帰ることはないわ。」

「いや、でも…。」

「このままリズを帰したらわたしが心配で眠れなくなるわ。お願い。」


 最初に宿屋に戻ると言った時はそうでもなかったがいざ立ち去ろうとするとアリスは必死に引き留めてきた。別に寝る所は宿屋でなくてはいけない訳ではないし何より眠い。


「わかりました。今日はここで寝ます。」


 私は早々に折れることにした。

「この部屋ベッドが二つあるんですね。」

「元々二人部屋だからね。でも今はこの部屋はわたししか使ってないから空いてる方のベッドをリズが使っても大丈夫よ。」



※お盆の前後は更新ペースが落ちます

次回の更新はなるべく早く

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