遺物
私達は台座の上に置かれている本に近づきます。
こんなところに保管されている本なのですからさぞかし貴重な物なのだろう。どんな内容なのだろうか…私の知らない事だと最高ですね。
「…フフフ。」
「リ、リズ…ちょっと怖いぞ。」
おっといけない。早速調べてみましょう。
………見た感じ台座の上に置かれた本は二冊とも表紙や背表紙には何も書かれていませんね。
「リズまだ何か仕掛けがあるかもしれない。…気をつけろよ。」
「わかりました。」
そうですね。ここは焦る場面ではありません。慎重にいきましょう。
台座の方に目を向ける。
「………んっ?」
なんだろうか?一見なんの変哲のない台座なのだが何故か違和感がある。台座をじっと集中して観察すると台座に魔法陣が複数浮かんで見えてきた。
これは…隠蔽と結界の魔術ですね。結界の方は迎撃機能までついた物騒な物だ。知らずに本に手を伸ばしていたら………。危ないからさっさと解除してしまおう。
「危ない結界が張ってあるのを見つけたので私が解くまで手を出さないで下さいね。」
「わかったが…できるのか?」
「今回は結界の発生源…術式が見えているので力ずくで破る必要はないです。正攻法で無力化できますよ。」
私は術式を見ずらくしている隠蔽の魔術を先に無力化してしまう。そしてはっきり見えるようになった結界を改めて解析してから対抗魔術を組み無力化した。
「よし、解けましたよ。」
早速本を一冊手に取り最初のページを開く。中身はこの遺跡で使われていた古い文字で綴られていた。
「さすが、早いな。…で、どんな内容の本なんだ?」
「待って下さい。まだ一行も読んでないです。」
急かされたからではないがとりあえず斜め読みしながらパラパラとページをめくっていく。
手持ち無沙汰になったお兄さんはもう一冊の本を手に取って開こうとする。
「あっお兄さん。そっちの本は読んだら発狂するってこっちの本に書かれているので気をつけてくださいね。」
「怖いな、おい!」
お兄さんは開きかけた本を勢いよく閉じた。
「ん~私の読んでいる方の本はこの遺跡で昔されていた研究の要約が書かれていますね。」
「どんな研究だったんだ?」
「一言でいうと古代で使われていた魔術についての研究ですね。古代から魔術は使われていてそれが現代の魔術に受け継がれているものも少なくないみたいですね。でも失伝してしまったのも多いみたいで…。ここの遺跡ではそういった魔術を再現しようと研究していたみたいです。」
「魔術研究所か…。」
「ええ。それで失伝した魔術を再現するための手がかりとして用意したのがそちらの本…古代の魔術書らしいです。」
「でも読んだら発狂するんだろ。」
「はい。なんでも魔術書のところどころに古代魔術の術式が隠されていて読んでいると気づかない内に自分で自分に呪いをかけてしまうんだそうです。なので読む際は一時的に魔術を行使できないように自分に処置してから読むらしいです。」
「読むだけで大変だな。」
「読んでも古代文字で書かれたものらしいので思うように解析できなかったみたいですが。要約を見るかぎり研究もかなり迷走しています。」
「よく研究が成り立ったな。」
「あくまで手がかりの一つだったみたいですし。それでも他の資料に比べてかなり希少な物だったのでこんな所に厳重保管されていたんでしょう。」
「そっちの本も一緒にか?」
「研究成果の一覧みたいなものですからね。迷走はしていますが失伝したと思われる魔術についての考察とかそれらを再現するための基礎研究とかその過程で新しく開発した魔術とかが約100ページほどにわたって書かれています。………残りの500ページほどは白紙ですけど。」
「ほとんど白紙なのかよ!」
「後々埋めていく予定だったのでしょう。未完成ですけど内容はとても興味深いです。」
「そうか…ところで新しく開発された魔術で何か使えそうなのはあったか?」
「いえ。古代の魔術を無理やり摸そうとしたものなので魔術としては未完成といった印象です。単体では使えた物ではないですしこのまま進めても完成しそうにないですが、どういった効果を出したいかといった方向性や面白い術式の組み合わせ、構築の仕方がいくつかありました。………それでお兄さん…この本私が貰ってもいいですか?」
「まあ、読めない本を俺が持ってても仕方ないし…ただ下手な奴の手には渡したくないから売ったりせずにきちんと所持していてほしい。」
「売るわけないじゃないですか!」
「それなら二冊とも持っていって良いぞ。その代わりと言ってはなんだがその本の事で何か面白いことでも見つけたら教えてくれ。」
「そんな事でいいのですか?」
「すでに古代文字の解読を頼んでるしな。俺にとったら優秀な魔法使いと縁ができたのが一番の収穫だよ。」
十分に満足のいく物を手に入れたことでご満悦になりながら私達は遺跡を出ることにした。
降りてきたのとは違う階段で上の階へ向かう途中にあることに気づく。
「お兄さん、これから向かう出入り口の前ってゴーレムがいるのではないでしょうか?」
入り口の門番の役目をしているのならこれから向かう場所にもいる可能性は非常に高い。さすがに最深部にいたようなゴーレムはいないだろうが数は大量にいるだろう。
「十分考えられるな。俺はメインの武器が使えなくなったし戦闘は無しだ。認識を阻害する魔術を使うから一気に走り抜けるぞ。」
階段を上りきる直前で一度立ち止まる。案内図ではこの先は私達が入ってきた所と違って部屋はなく広間のあとは地上への階段があるだけである。
「よし、リズ乗れ。」
「何をしているのですか?」
お兄さんはこちらに背を向けてしゃがみ込んでいる。
「走り抜けると言っただろ。お前を背負った方が早いし離れていると認識阻害の魔法もかけにくい。」
私、身体強化の魔術が使えますし遅くはないのですよ。ただゴーレム戦で見ましたがお兄さんが速すぎるだけなのです。…まあお兄さんの言っているはもっともなので従います。
「それでは入り口を開けますよ。」
魔法陣を起動させ階段の入り口を開けると同時に私達は階段から飛び出しす。そこには予想通りに数十体のゴーレム達がいた。しかし…これは………。
「お兄さん認識阻害の魔術を本当に使ってますか?」
「もう使ってる。」
「でもゴーレムにばれてませんか?………ばれてますよね!!」
「チッ…やっぱり生物以外には効かなかったか…だが予定通りに走り抜けるぞ。」
効かない事前提だったのですか!魔術使って姿を隠すのに私を背負ってまで速く走り抜けようとすることにちょっと不思議に思ってたんですよ!
ゴーレム達がこちらに踊りかかってきました。
お兄さんはゴーレム達の間を縫うように走り抜ける。スリル満点なんてもんじゃない。ちょっと怖い怖い、怖い!!ゴーレムの手足が掠めていく。お兄さんは避けてても私に当たりそうになってますってば!
ちょっとでもお兄さんが余裕を持って避けられるように必死に魔術でゴーレム達の動きを阻害していく。しかし、お兄さんは回避運動を最小限にして走ろうとするため私がどんなに頑張ってもギリギリを回避していくのだ。嫌がらせか!!
広間を抜け階段を駆け上がる。ゴーレム達は一体ずつしか通れない階段の入り口で少し詰まったがそれでも順序良く追ってこようとしているのを私は上から水を出し押し流そうとする。しかし、水流に逆らってなおも追ってこようとするので流した水を凍らせた。頭と体の一部以外氷で埋まったので障壁を張っていようと簡単には動けないはず。ミシッバキバキバキッとかいう音が聴こえてくるが気のせいだろう。
階段の上に着いて魔法陣で入り口を開ける。半分ほど開いた所で今度は入り口を閉じるように操作して入り口が閉じてしまう前に私達は地上に出た。
そこは入ってきた遺跡とは少し離れた場所だ…多分…。ちょっと自信がない。
何故なら地上に出た場所の周囲が更地になっていたのだ。木々や草花は土ごと掘り返されたかのように根こそぎ倒れている。少し見ない間に風景が変わりすぎではないだろうか。
ギェャギェャギェャー
唖然とする私達の上空には怒りの収まっていないソニックバードが飛んでいた。
地下遺跡帰り道
「…フフフ。」
ゴンッ 「あうっ。」
「本ばっか見てないでちゃんと前見て歩けよ…。」
※次回の更新は一週間以内を目指します。




