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ホムンクルス

※この物語の本編は少女の視点・主観のみの情報で書くため謎や伏線は少女が知ろうとしないかぎり解決も回収もされず後日どうなったかも分かりません。閑話や外伝で補足させる場合があります。

 眩しさを感じ、同時に自分という物を認識した。まるで夢を見ているかのようなはっきりとしない意識の中薄っすらと目を開ける。


「よし、成功だ!さすがわし、世界一の天才だな。」


 なにやら狂喜し小躍りしている初老の男性。

それが、ホムンクルスとして生まれた私の初めて見た光景だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「マスター、朝です。起きて下さい。」


 声をかけながら部屋の扉をノックする。

しばらくすると扉が開き中から部屋の主が現れた。三日前、私が生まれた時目の前にいた初老の男性であり、私の創造主だ。私の生まれたこの場所はかなり大きなお屋敷らしく部屋の数もかなり多いので最低限の場所しか把握できていない。下手に動き回ると迷子になりそうなのである。窓からはどこを見ても林しか見えない。また、この屋敷には私とマスターしか居ないみたいだ。当然屋敷で使っていない場所は多くマスターはもちろん私もまだ本格的な掃除をしていないが何故かこの屋敷はどこを見ても最低限の清潔さを保っている。


「おはようございますマスター。朝食の準備ができています。」

「ああ、おはよう。もう朝なのか。」


 どうやらずっと起きて何かの研究をしていたようだ。この三日間ずっと私の体の最終調整をしていたので寝ている所を見ていないのだが何時寝るのだろうか?


朝食を済ませ片付けを終わらせるとマスターが近づいてきて口を開いた。


「これからお前の勉強を見てやろう。」

「ありがとうございますマスター。…ところで何の勉強をするのでしょうか?私はマスターの記憶を貰っているのであまり必要性を感じないのですが。」


 そのおかげで生まれたばかりの私でも言葉を喋れるし読み書きや様々な道具の使い方も分かる。今朝だって朝食を作る事ができた。


「記憶じゃない知識だ。記憶なんか与えたらわしの複製になってしまうではないか。お前にはわしがこれまで生きてきて知りえた全ての知識とついでにわしにもよく分からん古代の知識っぽいのを片っ端から詰め込んだのだ」


 ちょっとマスターさらっと何してくれてるんですか。頭の中にある知っているのに解らないという不思議な感覚はそのせいでしたか。


「失礼しました。ですがマスター、知識だとしてもすでに私はマスターと同等以上の物を持っています。やはり勉強する意義がないように思えるのですが。」

「知識を持っていてもそれをどう使えばいいのかという経験がないだろう。今は暗記しているだけの状態だ。きちんと理解しなければ応用することも新しく創造することもできん。知識は実際に使うことができなければただのゴミでしかない。」


 古代の知識というゴミを私の中に入れたのはどこの誰だというのか。


「わかりました。そういう事でしたらありがたく教えて貰いたいと思います。まず何からはじめましょう?」

「そうだな。まずお前自身のことから始めよう。己のことを知るのは大事なことだ。お前は自分が何かわかるか?」

「ホムンクルスですよね。ところで早速質問があります。ホムンクルスの製作は非常に難しいとのことですがマスターはとてもすごい人なのでしょうか?」


 私はこの三日間のマスターとの会話でひそかに狂人というレッテルを貼っていたりするのだが。


「もちろんだ。わしは人類史上最高の頭脳を持っていると自負しているからな。」


 その自信はいったいどこからくるのだろう。


「そんなわしが製作したのだ。お前はただのホムンクルスではない。先達が作ったホムンクルスは人の劣化版でしかなく欠点も多くあったが、お前はその欠点を克服しさらに人の性能を超えた人外の存在なのだよ。」


 なにそれ喜べない。そもそもホムンクルスは人工的に人を作ることを目的にした研究で生まれたはずなのに改良したら人外になったとか本末転倒ではないのか。


「ホムンクルスの最大の欠点である数時間、長くて数日しか生きられないという短命は肉体と魂が上手く同調せずに結合しなかったことが原因であることをわしは突き止めた。そこでわしが集められる最高の素材で肉体を作りそれに同調できる魂を一から設計したのだ。設計はできたが素材を集めるのにてまどってな。数年かかった。」


 マスターがそのまま語りだしてしまった。なにかのスイッチを押してしまったらしい。


「魂の素材になったのは何ですか?」

「魂の素材は魂だよ。人、獣、魔物、亜人、その他多くの少数種族のな。わしの魔法でこの世界を検索して素材にできる魂を見つけていった。ほとんどはこの世界を循環して漂っているだけで楽に捕獲できたが、肉体をもっている奴は肉体を破棄させなくてはいけなかったから面倒だったな。それらをパズルのように組み立てていたんだが最後の1ピース。一番重要な部分がどうしても見つからなくてな。この世界には存在しないと結論づけていたのだがつい先日急にこの世界に現れてようやく完成させることができたのだ。」


 ツッコミ所満載だがスルーだ。確実に横道にそれるし長くなりそうだからね。


「私の魂はまるでキメラのようですね。」

「全然違うぞ。キメラはベースとなった素材の性質が大なり小なり残るものだがお前の魂は素材となった魂の性質など欠片も残っていない全くの別物だからな。キメラを1+1=2と表現するならお前は1+1=Aだ。」


 私は数字ですらないのですか…


「苦労しただけあって凄まじく強大な魂ができ肉体との同調も上手くいった。これで肉体と魂が結合しないことで起こる短命を克服したのだ。まあ魂が強大すぎて肉体が性能負けしてるから一年ほどで肉体が崩壊してしまうがな。」


 マスター大事なことをさらっと言わないで下さい。


「心配するな。魂と違って肉体は後からでも弄りやすいからな。やり様はいくらでもある。」

「例えばどの様な?」

「そのうち思い浮かぶ。」

「………………」


「他にはホムンクルスの身体的特徴にオッドアイがあるがわしの作品にそんな縛りはない。それどころか身長、体重、年齢、性別、他細かな造形すべて自由自在よ。せっかくだから凡人達にお前がホムンクルスだと分かり易いようにオッドアイにしてあるがな。」


 まだ、鏡を見てなかったがオッドアイだったのか。そして何がせっかくなんだ?ホムンクルスだと分かり易いようにするなんて……余計なことを。


「私の体の造形は全てマスターが決めたのですね」

「そうだ。芸術方面でもわしは超一流だからな。性別は男より女の方がいいに決まっているし、造形もわしが全力を尽くした結果人ではとても体現できないほど美しくできたよ。」


 比べる相手なんかいないので美醜については割とどうでもいいのだが問題は年齢である。身長も低いみたいだし体もいろいろ育ちきっていない。まだ10代前半ではないだろうか。

マスターはもしかして少女趣味なのだろうか?


「そうでしたか、それはお疲れ様でしたマスター。次の質問ですが、ここ数百年全ての国でホムンクルスの研究・製作は全面禁止されていると思うのですが…」

「そうだな。」


 それがどうしたと言わんばかりの態度である。いやいや、もし捕まったら研究者は極刑、研究内容も全て破棄される。研究成果である私も破棄対象なのではないだろうか?なのに私はホムンクルスの身体的特徴であるオッドアイを持っている。マスター本当に余計なことを。


「ええっと…その…マスターは何故禁止されているホムンクルス…私を作ろうと思われたのですか?」

「わしは数年前にな、そこそこの大きさの街を生贄に世界を滅ぼすといわれる魔物を召喚したのだ。」

「…はい?」


 あれ?ホムンクルスの製作理由を聞いたはずなのだが今の話がどう繋がるのだろうか?というか何してるんですかマスター。ほんと碌な事してませんね。


「わしはその魔物を暴れさせその結果小国がいくつか滅んだ。」

「………マスターは世界を滅ぼしたかったのですか?」

「いや、本当に伝承どうりその魔物が世界を滅ぼせるのか確かめたかっただけだ。」


 なぜそれを実行に移したしたんだ。そしてマスターにその伝承を教えたのは誰ですか!いや、マスターと親しくしている人なんて居なさそうですし自分で調べたんでしょうね。


「実際その魔物は伝承どうり人では太刀打ち出来ないと思うほど非常に強力だった。しかし、わらわらと群がった人によって討ち取られたのだ。その時わしは人の可能性という力魅せられそして考えた、もし人外といえるほどの力を人が持ったらどれほど強くなるのだろうかとな。だが後天的に人にそれほどの力を持たせるのは難しい。それなら最初から力を持った人を作ってしまおう。それがわしがお前を作った理由だよ。」


 おお、繋がった………なぜ繋がったし。そしてマスター、注目箇所が少々残念に思えるのですが。聞く限り人の強みとは大勢で協力して力を合わせられるところなのでしょうね。なのに個人に多少の力を持たせたところで、その討ち取られた魔物とたいして変わらない結果になりそうなのは私の気のせいでしょうか?私の存在理由を否定することになるので口に出したりはしませんけどね。出してしまった結論にショックを受けてしまいました。

 他にも疑問に思ったことをいくつか質問し答えてもらいました。聞きたいことはまだあったが重要そうなのは粗方聞いたのでまた違う機会に訊ねることにしましょう。


「質問に答えて頂きありがとうございますマスター。次はなにを教えてもらえますか?」

「次はわしの本来の専門でもある魔法についてだ。」


「マスター話が長すぎます。もっと手短にお願いします。」

「わしはまだまだ話たりんぞ~!」


※次回一週間以内の更新を目指します。

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