山鯨って、イノシシのことだよん
携帯電話を耳に埋め込むようになったのはいつの頃からか
私は仕事や家庭に追われ、携帯からの電話に息が詰まり
仕事や家族から逃げ出して
いまこの辺鄙な村にいる
「あんた初めて見る顔だね?客人かい?」浅黒い肌の筋肉隆々の汗臭い男
「はい」(客人ってのはよくわからないけどニュアンスはわかる)
「へ~こんな何にもないところによくきたね~」
「いやまぁいろいろあって・・・」
「まぁ、ここは電話も何にもないから都会の人には静かすぎるだろうけどね」
「えっ?」(そういえば・・・・私の耳に埋め込まれている携帯は不通状態に・・・)
「えっと電話がないとなると緊急時とかどうしてるんですか?」
「大声出せば大概は助けに来るだろうし、声の届かないところでもいろいろ方法があるさ」
「?」
「!!!」鳥の鳴き声のような断続的な音が響いた
「ん?東か!サンジの野郎ドジったな」
「え?」
「客人ちょっと相手できなくなったから、そんでちょっと危ないからその辺にいてくれ」
「はい!」(わからないけどそうします)
「オン爺!!サンジがドジったらしい山鯨を追って東の山から下りてくるはずだ!!仕留めねぇとな!!!」
「お前の耳は曲がって付いてるから、ほんとに東か?」
「東だ!!まちがいね~!!俺、準備してくる」
「おぅ、イケイケ!!w」
「オン爺、聞こえたか?」
「ぼんさんか~?俺は聞こえなかったけどロジオが聞いたって言うからな」
「どっちだって?」
「東っつってたの」
「じゃあ、西だな!!ん?客人かい?」
「えっと、そうです」
「いい日に来たなぁ~今日は山鯨鍋だw」
「前から聞こうと思ってたけどの、坊さんが肉食っていいのか?」
「うちは、魚は食っていいことになってる」
「ここらは海がないから、イワナぐらいしか食う魚はないだろのゥ・・・カッパか?」
私は、ぼんさんが河童のカッコをしてる姿をなぜか想像して笑ってしまった
「でも、そのライフル?お坊さんが持ってていいんですか?」
「あぁ~、これ? これね・・・・ これはぁ~ 趣味だ!!」と西に向かって行った
それを見送ってる私をよそに
オン爺が、どこから現れたのか腰蓑を付けた別のおじいいさんと話を始めていた
「山爺、サンジの奴が怪我したみたいだから山鯨追うのかわってやってくれんかの」
「ん。どっちだ?」
「ロジオが聞いたっつーのは、東らしいがのぅ」
「まぁええ探してみるよ」見た目の年とは違って軽快にそれもものすごい早い動きに見ている私は驚いた
が、山に向かったのだろう東の方から入っていった・・・
しばらくして、地鳴りが聞こえ
東で、ロジオさん。西で、ぼんさんさん。
ロジオさんの「来るぞ~こっちだ~」
シーン
「あれ?」
反対側の森が割れてでっかい生き物が飛び出してきた!!
「ほら見ろ!!!反対じゃないか!!!」ぼんさんさんの声
立て続けの銃声!!銃声と森から飛び出した獣を避けるような位置で、山爺さんがピースしていた
「でっかいなぁ~、スラッグ弾14発でやっとか」とぼんさん
「だなぁ~16発ほど外してたけど、あれってそんなに当たらんのかのぅ?」と山爺
苦い顔をしてる、ぼんさんさん
さらに苦い顔をしてるロジオさん
「客人!ちょっと手伝ってもらえるかい?」と行って鉈を渡される私
「?」
「山鯨がでかすぎて動かせないからここでさばくってことさ」
いろいろあったが、夜の宴は楽しく美味しかった