表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

世界

黒、と聞いたら何を連想するだろう?

暗闇?暗黒?絶望?それとも、死?


黒はそうやっていつの間にか暗く悲しいイメージがつけられてきた。それはきっと俺の生まれる前から、ずっと。


結論から言わせてもらえば、俺は黒は嫌いではない。黒は何にも染まらない。自分を保つことができる。何にも囚われず、屈せず、染まらず。勿論、周りの連中はレッドやらイエローやらグリーンやらブルーやら、そんな色が好きなようだった。

でも、それは染まるだろ。他の何かと混じってしまえば、違うものに。

俺はそういうのがなんだか軽薄で浅はかで、馬鹿馬鹿しいと思われるだろうが、そんな色が好きな奴らをどこか見下して軽蔑していた。

そんなくだらない持論は子供ガキのころから変わらないのだから、この先もずっと、俺が死ぬまでおうなんだろうと思っている。






今日も1日が終わる。夕日は沈み、辺りが暗闇に_つまり黒に染まっていく。

その様子を見ながら、漆黒の車を車通りの少ない道に止めると、窓を少し開けて煙草を吹かした。


「ニコチンが、足りない」


口に出したところで、それに反応してくれる人間はここにはいない。

しばらく煙草を吸っていると、控えめに携帯が鳴り出した。


『もしもし?生きてるか、ハル』


「久しぶりだっていうのに、その質問はどうかと思うぜ」


かかってきたのは、俺のよく知る幼少時代からの顔見知りだった。腐れ縁というかなんとかで、大人になった俺たちは今でも交流がある。


いや、交流とは、仕事仲間だということなのだが。


しかしお互いやっていることは全く違うため、毎日顔を合わせて話したり一緒に仕事をすることは無い。だから、最近では会うどころか、連絡をとりあうことも無かった。


『お前が不快に思ったのだとしたら、謝るよ。悪かった。…最近じゃあ周りの奴等が結構惨いことになってるから、もしかしたらお前も』


「そんなくだらねえ話なら、切るぞ」


『……電話では話せないことなんだよ。今日、10時、いつものバーで待ってる。』


いきなり呼び出すなんて、何考えてんだと言ってやろうと口を開いたが、すぐにプツと電話は切れた。言いたいことだけ言いやがって。まあ、そっち方が手っ取り早くて良いが。



それに、だいたい用件は分かっている。あいつが忙しい時間割いて呼び出すっていうことはな。







後部座席から真っ黒なキャリーを掴んで、助手席に持ってくる。おもむろにスーツの内ポケットに手を突っ込み、ひやりとした硬いものの出す。それは鍵だ。銀色に鋭く光る鍵。そして黒いキャリーを開ける鍵。


鍵穴に差し込み、ゆっくりと回す。ロックが解かれる音が聞こえると、鍵を抜き取りキャリーを開く。



「また、よろしく頼むぜ」


6発詰まった黒く光るそれを胸ポケットにしまうと、俺は車を発進させた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ