第9話 心の声を聞いた日
――日曜の夕方、落ち葉が舞う公園。
ベンチに腰掛けたゆうなの頬を、
ひやりとした秋風がなでていく。
木々の枝は少しずつ色づいていて、
公園全体が、どこか寂しげな色に染まっていた。
スマホの画面には、昨日から変わらないままのメッセージ。
『ねぇ〜〜〜〜〜、今度いつ会えるぅ〜〜〜〜?』
開いては閉じて、また開いて、
それでも返事は書けなかった。
(返せないって、どんだけ……)
けど、理由はもう、わかってた。
──あのとき見た、男と並んで歩くりりあ。
そして、
兄だと知った瞬間に、胸がスッと軽くなった自分。
(……その時点で、もう“答えは出ている”よな)
嫉妬して、ざわついて、苦しくなって。
そう感じたのは、きっと──
秋の風が枯れ葉を巻き上げる。
その音だけが、思考の隙間に入り込んでくる。
(あいつといると、なんか安心するんだよな)
笑った顔。
甘えた声。
観覧車の静けさ。
おんぶした背中のぬくもり。
ぜんぶが、心の奥に染みついている。
(……可愛いって思ってた)
(……触れたいって思ったこと、なかったか?)
何度も、
“友達だから”って言い訳してごまかしてきた。
けど、それはもう通用しない。
ポケットの中でスマホを握りながら、
ぽつりと呟いた。
「……好きだ。たぶん、じゃない。間違いなく」
木々の隙間から見える空は、もうすっかり夕焼けだった。
この気持ちに、
ずっと目を逸らしていた。
でも、もう逃げない。
次に会ったら、言おう。
秋の風の中で、
ようやくそう決めた。




