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第7話 俺の知らない顔

――土曜日、昼。


りりあからのLINE。


『ねぇ〜〜〜、次いつ遊ぶ〜〜〜〜?』


『明日、買い物付き合ってくれ』


『え〜〜〜っ、なに買うのぉ〜〜〜?』


『服』


『え、女装用ぉ〜〜〜〜!?』


『それ以外に何があるんだよ』


そんな軽いやりとりの末、

ふたりは都内のショッピングモールにやってきた。


「うわ〜〜〜〜〜〜でっか〜〜〜〜い〜〜〜〜!!」


ツインテールを揺らしながら、りりあがぐるぐる見渡す。


「でかすぎて迷うわ……」


「まぁ、あたしについてきてよぉ〜〜〜〜」


ゴテゴテピンクの地雷系ファッションで

人混みをぬうように歩くりりあのあとを、

ゆうなは肩の力を抜いてついていく。


何軒かの服屋を巡り、

ふたりで試着を交代で見せ合う。


「どぉ〜〜〜〜?これぇ〜〜〜」


りりあがカーテンをシャッと開けて出てくる。


白のフリルワンピ、ウエストリボン付き。


ゆうなは、

(うわ、なんか……やべぇな)と口に出しかけて飲み込んだ。


「……いいんじゃね?」


「え〜〜〜〜!?微妙ってことぉ〜〜〜〜??」


「いや、……似合ってる。うん。」


ちょっとだけ、目をそらした。


(なんなんだよ、あの無邪気な顔)


昼食はフードコート。


ふたりでタピオカを片手に歩いていたそのとき──


「──……っ!」


りりあが、ぴたりと足を止めた。


「どした?」


次の瞬間。


「こっち!」


ぐいっ──


手を引かれた。


突然の強さに、思わず身体が引き寄せられる。


そのまま角を曲がり、少し死角になる通路へ。


「お、おい! なんだよ──」


「……大学の、同級生……いた……」


りりあの声は、普段のふにゃふにゃとはまるで違った。


低くて、小さくて、でも真剣だった。


目も、笑ってない。


一瞬だけ、

“りりあ”じゃなくて、“誰か別の顔”がそこにいた。


ゆうなは、何も言えなかった。


──ほんの一瞬だった。


「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜、やっっば〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

「まじあっぶなかったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


ふにゃっと崩れたテンションが、

ふわふわと戻ってくる。


ツインテールを揺らしながら、りりあが笑う。


「ばれたら終わってたわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


「……そっか」


ゆうなは、まだ鼓動がうるさい胸を抱えたまま、

曖昧に笑った。


(なんだよ、今の……)


(こいつの“中身”、初めてちょっと見えた気がする)


(なんで、それだけでこんな……)


夕方。


ベンチに並んで座って、タピオカを飲みながら他愛ない話。


でも、ふとした瞬間に、沈黙が流れた。


目が合う。


言いかけて、やめる。


何かを壊したくなくて、

ふたりとも、口を閉じる。


──まだ、“友達”。


でも、“それ以上”の何かが、もうそこにあった。


帰り道。


改札前で、りりあが手を振る。


「じゃあねぇ〜〜〜〜〜〜〜」


「おう」


ゆうなは改札を通って、

ふと、振り返った。


りりあが、まだこっちを見ていた。


目が合って、もう一度だけ、手を振る。


りりあも、にこっと笑って手を振り返した。


胸の奥が、また、騒ぎ出した。

 

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