第2話 へぇ〜。気が合うじゃん
――日曜の夜、ベッドの上。
画面の明かりだけが、ゆうなの顔を照らしていた。
通知が1件。
送り主は、「りりあ」。
『この前のプリクラ、加工したやつ送るねぇ〜!かわいくできたっ』
画像が添付されている。
盛れたフィルター、でか目、肌つやつや。
見事なまでに“女の子”だった。
「……詐欺レベルだな、これ」
思わず笑ってしまう。
そもそも中身ふたりとも男だし、というツッコミはもう飽きた。
返信を打つ。
『盛れすぎて笑った。誰?』
すぐに返事が来る。
『うるさぁ〜いっ でもかわいくない?』
『まぁ……かわいい』
素直な感想だった。
そして、ふと指が止まる。
(……また、遊んでもいいかもな)
『ヒマな日ある?また遊ばね?』
『え〜ほんとぉ〜?どうしよっかなぁ……』
1分後。
『……でも、あたしもまた遊びたいかもぉ』
『んじゃ、次どこ行く?』
『原宿とかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
「地雷すぎだろ……」
天井を見上げながら、はるかは小さく笑った。
──次の日曜日。原宿。
駅前、待ち合わせの場所に立っていたのは、
ピンク系で全身コーデしたりりあだった。
ツインテールは前より盛れていて、
ブラウスはフリル多め、スカートはヒラヒラ、靴は厚底。
どう見ても“完成された地雷”。
「はろぉ〜〜!待ったぁ〜?」
「うん、5分」
「え〜うそぉ〜っ あたし、めっちゃ急いできたのにぃ〜」
「それ言いたいだけだろ」
「えへへ〜〜〜〜」
ノリが軽い。今日も絶好調だ。
竹下通りをふたりで歩く。
周りからは普通に“女の子ふたり”に見られていた。
すれ違う女子高生たちが、ちらりとこちらを見て、ひそひそと話す。
「ねぇ、あの二人、可愛くない?」
「うん、めっちゃオシャレ〜!」
「どこのブランドかなぁ?」
はるかはその声を聞き、思わず苦笑い。
(……中身、男なんだけどな)
でも、そんなことはどうでもよかった。
りりあが駆け寄ったのは、
ハートのロゴが入ったピンクのキャミソール。
「お前、もう持ってなかった?似たやつ」
「こっちはリボンが左についてるのぉっ、さっきのは右っっ!」
「知らんがな……」
服屋、アクセ屋、雑貨屋……
どこでもテンション上がってぴょんぴょん跳ねるりりあを、
はるかは後ろからのんびり見ていた。
「そっちもなんか買わないのぉ〜?」
「俺、そもそも女装メインじゃねぇし……」
「え〜じゃあ見るだけぇ〜?」
「付き合ってやってんだろ」
「ふふ〜ん、やさしぃ〜〜〜〜」
満面の笑みで手を振られた。
(こいつ……マジで地雷だけど、ノリは合うんだよな……)
ちょっとだけ、口元がゆるんだ。
ショッピングをひと通り楽しんで、
ふたりは裏通りのカフェに入った。
「タピオカまだあるかなぁ〜〜〜〜〜〜」
「お前、もう流行終わったとか言ってなかった?」
「関係ないよぉ〜〜〜〜飲みたいのぉ〜〜〜」
「はいはい」
レジに並ぶふたり。
完全に女の子同士にしか見えなかった。
でも──
ただの友達。
名前も偽名。
性別も、素性も、何も知らない。
知ってるのは、
「見た目がめっちゃタイプ」ってことと、
「ノリが合う」ってことだけ。
──それで、十分だった。




