24 顯 女神に翻弄される(3)
アテナの握力は凄まじい。大袈裟でなく、本当に腕が千切れると思った。
「顯に何するのよっ」
ダーキニーが眦を吊り上げ、アテナへ襲いかかったが、彼女のひと払いで吹き飛んだ。
「ダーキニーやめろ、それにアテナ、人間の体は弱いんだから、力を加減してくれ」
アテナは、はっと気がつき、力を緩めた。握られたところは、青黒い手形となっていた。何と言う恐ろしい女神だ。凶暴すぎるぞ。
「顯、内出血してるよ」
青銀が、おろおろと覗き込んだ。私は、冷蔵庫から氷を出して、腕を冷やした。
アテナは苛立った様子で、
「無能なふりをして、私を騙そうとしたな」と、難癖をつけてきた。
まったく、辛抱のない女だな。こっちにだって都合があるんだよ。
「私の顯に怪我させたわね、もう許さない」
また、喧嘩になりそうだ。私は、思い切り息を吸い込み、
「いい加減にしろっ、この家を潰す気か、住む所が無くなるだろうっ」と大喝した。
この女神を、力づくで抑えようと思えばできるけれど、多分、抵抗して大暴れするから、家が吹き飛ぶだろう。そんな事になったら、こちらが困る。今は、何とか弟ともどもお引き取り願いたい。
「ヘーパイストスを連れて、さっさと帰ってくれ」
私は、ぶっきら棒に言った。もう、愛想とか体裁とか、どうでもいい。腕もジンジン痛むから、早く帰ってくれ。
しかし、アテナは、常世石を持ち上げ、
「これは、どうやったのよ。あなたがやったんでしょ?」と、質問する。
「知らない」
私は肩をすくめて答えた。おまえなんかに、教える義理はないね。
アテナの目が、物騒にギラッと光った。
「私に、協力しない気なのか」
「弟に会いたいって言うから、ちゃんと案内してきたじゃないか。それなのに、どうして、頭から湯気を立てて怒るんだよ。ちょっとその態度は酷すぎると、自分で思わないのか?」
私もついきつい口調で言い返した。あれ?どうして、この女神と喋ると、むかっ腹が立つんだろう。いつもより、何か、冷静でなくなるんだよなあ・・・
「姉上、落ち着いてください」
見かけは強面の弟の方が、よほど常識を弁えているよ。
「・・・・すまなかった」
アテナは、ありありと不服げな様子で謝った。
「とにかく、今日は、もうヘーパイストスを連れて帰ってくれ」
そこへ、お客が来たらお茶を出すものだと思い込んでいる青銀が、お茶を持ってきた。青銀、客を見て、お茶を淹れろ。さっさと帰ってもらいたいんだから、箒を逆さに立てておけばいいんだよ。




