24 顯 女神に翻弄される(2)
私は、アテナを連れて、校内施設を案内した。彼女のすらりとした姿、輝く黄金の髪は微風に揺れ、中性的な装いも効果を挙げて、注目の的だった。何かと話しかけられ、なかなか案内が進まない。いい加減、誰かに代わってほしいのに、どうしたわけか、アテナはピッタリ張り付いて離れてくれなかった。
アテナは、顯のことをずっと観察し続けた。
(これが、本当にヘラが何千年も前から探し続けている、伝説の上位神だというの?絶対嘘だわ、信じられない。何の力もない、ただの人間じゃない。こんな頼りなさげな優柔不断男、ヘラは思い違いをしているのだわ)
アテナの顯への評価は最低だった。けれど、ヘラから言いつけられているので、顯からは決して目を離さなかった。その日は、一日中、アテナは、顯と行動を共にし、下校時に「弟を迎えに行きたいから、あなたの家へ連れていって頂戴」と切り出した。
(そう来るのか・・・)
講義もすべて終わったから、これで漸く解放されると思ったのに、それを言うのか・・・でも、さっさと連れて帰ってもらった方が、こちらもすっきりするなと思い、アテナを連れたまま構内から出てしまった。そうなんです。いつも待っている彼女の事を、完全に失念していました。
「顯、その女、誰なのよ」
天から常よりオクターブ低い声にビクッとし、私は自分の迂闊さを呪った。
「あら、可愛らしい女神さんじゃない」
アテナは余裕たっぷりで、ダーキニーを見上げた。
“ダーキニー、彼女は、ヘーパイストスのお姉さんだよ。迎えに来たから、今から家へ連れていくんだ”
「ふうん、そうなんだ」
ダーキニーは実体化し、私の左側に立った。アテナが右側にひっついていたからだ。両側から女神に挟まれるなんて最悪だ。もう、偏頭痛が起こりそうだ。ペガサスに鼻を擦り付けられるのは、大歓迎だが、女神の過剰接触は禁止にしてほしい。加えてアテナは、威圧感が強すぎる。彼女は、もっと威圧感を抑えることを学ぶべきだと思うよ。
家へ帰ると、青銀とヘーパイストスは、大部屋で仲良くゲームをしていた。まったく気楽だよな。こっちは、女神に挟まれて連行されてきたのに・・・
「顯、おかえ・・・」
青銀は、アテナを見て、言葉が出なくなった。
「姉上っ」
ヘーパイストスが、アテナへ駆け寄った。
「元気そうね。あの石はどうなったの」
大部屋へ上がりながら、アテナがヘーパイストスへ尋ねた。大部屋へ入ると、ヘーパイストスは、巾着袋から例の物体を取り出した。
アテナは目を瞠った。弟の手から、それをひったくり、目の前にかざしてしげしげと見入った。
「変成しているじゃない、これ、一体誰がやったのよ」
「昨日、天龍界から来た御老公が触ったら、こうなった」
アテナは、眉を顰めた。天龍の力がいかに強大だろうと、こんな変成は不可能だ。
アテナは、いきなり顯の腕を思い切り掴んで叫んだ。
「やっぱり、おまえがそうなのか!」
「痛い、痛い、腕が千切れる。離してくれ」




