22 雷ちゃんと謎の異国神(4)
律子さんに言いつけられて、青銀が熊親父を、じゃなかった、刀の大先生を迎えに行っている間に、私は買い出しに行った。酒盛りにならないことを祈るより、備えあれば憂いなしだから、律子さんからお金を出してもらって、買い出ししておくことにした。ところが、帰り道でダーキニーに出会した。
「顯、みつけたっ。ちょっと痩せたんじゃないの、ちゃんと食べてる?」
空中から声が聞こえたなと思うと、舞い降りてきてたちまち実体化した。相変わらず露出過多だが、今日は珍しく白いダウンジャケットを羽織っていた。
「・・・ダウンジャケット、どうしたの?」
「へへっ、冬は寒いんだから、暖かい上着くらい着ろよって、この間、顯が言ってたじゃない。だから、これ和尚に買ってもらったの」
「ふうぅん、よく似合ってるよ」
ダーキニーは、弾けるような笑顔になった。(褒めておいたら、露出過多が少しはおさまるだろうと期待したい)
「買い物?ずいぶん多いし、誰が、こんなにお酒飲むのよ」
「もうすぐ、刀の大先生が来るんだよ」
「えっ、あの熊親父」
熊親父の名付け親は、ダーキニーだ。
「外国から、大先生を訪ねて、神が来てるんだ。そうだ、ペガサスも来てるよ。見に来るかい?」
「えっ、ペガサス、見たいっ、見たいっ、一緒に行くわ。それ、一個持ってあげる」
しばらく歩いて、ダーキニーがまた話しかけて来た。
「滝行、もう終わったの?」
「うん、一昨日、やっと終わったよ」
「大変だったね。でも、すっかり身綺麗になって、ピカピカだわ」
「それは、どうも」(そりゃ、あれだけ滝の下で濯いだら、どんな汚れもピカピカだよ)
「それに、顯の神気なんか前と変わったね」
「えっ」神気が漏れているのかと、ギクッとした。
ダーキニーは私の表情を見て、いたずらな目つきで言った。
「他の神には分からないと思うよ。でも、私たち、とってもふかーい仲だから、ほら、小指の先がちょっと触れても、神気の具合が分かるのよ」
「・・・・・!!!!」
私は口をぱくぱくさせた。
(誰と誰が、ふかーい仲なんだ?私たち、いたって清い関係じゃないか。それは・・・まあ、ちょっとくらい膝枕とか、他も色々あるけれど、ふかーい仲になんか、絶対に、まだなってないぞっ)
「キャハッ、また赤くなっちゃって可愛いっ」
私は、もう無言のまま、山道を登った。
私がダーキニーを連れて帰ってくるのと、ほぼ同時で、大先生を乗せて青銀が帰って来た。
私に気がついた大先生は、右手を挙げて声をかけてきた。
「おうっ、坊主、元気にしておったか。相変わらず、ダーキニーとくっついて、仲が良いのう。だが、それでは、人の女子が寄り付かんぞ。ちっとは甲斐性出して、彼女をつくったらどうだ?」
ああ、この大先生ときたら、空気も読まずに恐ろしい女神を刺激するようなことばかりを言う。
「ふんっ、何言ってるのよ、熊親父、顯くんの幸せは、私が守ってるんだからね」
「ふふっ、そうか、そりゃ悪かったな。まあ、仲良くやんなさい」
私は、何も言わずただ黙って笑っていた。




