19 虚空蔵へショートカットだ(2)
ダーキニーが小包を開けると、また宝相華唐草文の螺鈿化粧箱が現れた。
(顯くん宛となっているのに、どうして、きみがいそいそと開封してしまう?まあ、別に構わないが・・・)
ダーキニーが上蓋を開けると
「やった、桃花粋だよ。すぐ飲んだ方がいいわよ、あれっ、薬瓶また入ってる。手紙もついているわ」
と、私が手を伸ばすより早く、ダーキニーが薬瓶を取り出した。
ダーキニーから、封筒を受け取り、私は中身を取り出した。
『ワカミアヤ(顯くん)へ、
聴天由命丸、凡人に副作用ありのご報告ありがとうございます。これは、凡人向けに改良した丸薬です。効能はまったく同じです。味は、凡人でも耐えられるよう、マイルドに改良しました。一度お試しください。また、効能等報告お待ちしてます。 薬師如来』
私は、瓶の中の丸薬をしげしげと見つめた。前のものより色は薄くなり、光沢のある桜色だった。ダーキニーは、手紙を覗き込み、
「へえ、凡人用だって、ねえ、ねえ、せっかく送ってきてくれたんだから、呑んでみようよ。効き目は一緒だって書いてあるし、さっき、内傷負ったのが治るわよ」
ダーキニーは、無邪気に目をキラキラさせて、勧めてくれた。しかし、私は、
(呑みたくない、呑んだら、また、何か起こるに決まっている)と、思った。しかし、周りの圧がもの凄い。観音菩薩も律子さんも、呑みなさいと圧力をかけてきた。
拒絶しても、押さえつけてでも口へ押し込まれるだろう・・・たぶん。
私は、瓶を開け、丸薬を一錠取り出し、呑み込んだ。味は、少し苦いだけだった。が、内臓が一瞬焼けたと思った。
「顯、大丈夫っ?」
私は無言でこくこくと頷いた。ここで気絶するわけにはいかない。膝枕は衆人環視の下でするものじゃない。
激痛の原因は、脅威的な治癒速度だ。巻き戻しのように治っていく過程で、もう一度傷を負ったときと同じ痛みを感じる。それが、一瞬で起こったから・・・
私は両手で目を覆ったまま、激痛が引くまでひたすら耐えた。人間の脳は、実際の痛みが一瞬生じただけでも、波紋のようにそれを引きずるのだ。ただひたすら、耐えるしかない。しかし、この丸薬、正真正銘の凡人に服用させるのは、危険かもしれない。やはり、名前の通りの危ない薬だ。(普通に暮らしていたら、内傷なんて負いません)
痛みが治まると、私は姿勢をただし、観音菩薩へ
「虚空蔵へ行って、何をご覧になったのですか?」と尋ねた。
「私ね、あなたの正体がどうしても知りたくなって、調べにいっていたの。ほら、西方浄土に行ったと話したでしょう。本当は虚空蔵界へ行くのが目的で、その後西方浄土の阿弥陀如来からお呼び出しがあったのよ」




