16 雨神チャックがやって来た!(2)
数十年前、騎士会に保護されたチャックは、ボロボロのヨレヨレで、今にも消滅しそうなほど弱っていた。彼の神域であった熱帯雨林は、開発が進み大規模農園へと姿を変え、彼を祀る人々もいなくなり、神威を失ってしまったのだ。そして、騎士会の者に発見され、手厚い保護を受けた。それだけなら、捨てられた子犬を拾って世話したらこんなになりました、みたいな美談にすぎないが、チャックはただの野良神様では終わらなかった。何とチャックは、コンピューター化の時代の波に乗り、技術革新を異次元のレベルにまで押し上げる革新的ソフトを、単独で開発したのだ。それは、世界中で採用され、チャックは、世界有数の大富豪となった。ただ、正体が神であることが露見してはいけないので、世界有数の富豪、チャック・ウルフは、身長百九十センチの超絶イケメン独身男子ということになっている。(本人からの強い希望があり、代役のアバターはそういう設定にしてあるが、これも無茶振りのひとつだな、とミカエルは思っている)
「えっと飛行機の便は、これで、あっと、座席はファーストクラスっと」
騎士会の出張で、座席をファーストクラスにするなんて、通常ではあり得ないが、今や、騎士会の運営資金の九割方は、チャックの稼ぎ出す金なので、チャックについては、費用に制限がなかった。もちろん付き添いのミカエルも、ちゃっかり同じクラスで予約した。
「最近、チャックはずっと闇のバラム神の行方を追っているけれど、どうしてなんだろう?」
ミカエルは、今だに、チャックがバラム神を探す理由を聞かされていない。チャックは保護された時から、他の神には無関心だった。それが、なぜだか最近急に、闇のバラム神の行方を熱心に探し始めたのだ。
騎士会は、神が、人間界のルールを破る事さえしなければ、一切不干渉、あくまで神威の衰えた神が消滅しないように最低限のお世話のみ行うというのが基本方針だ。その方針に従い、ミカエルも、チャック神とは適切な距離を置くよう気をつけているつもりだが、チャック神は時にとてつもない行動力を発揮し、引きずられてしまうのだ。ミカエルは、上司へ報告のメールを送信し、日の本へ行く準備をした。
京都 飛竜頭山
私は、今日も朝から湧水池周りの落ち葉掃除に励んでいた。竹箒で掃き集め、ひとまとめにして、少し離れた林の中の穴へ捨てにいく。これは土に返して、肥料にしてやるためだ。今年は、冬の訪れが遅く、まだ枯葉が梢に残る木が多い。あと数日は、朝の掃除が必要だろう。
「顯、パン焼けたよ」家の方から、青銀が声をかけてくれた。今日の朝食担当は、青銀だ。
「うん 今行く」
先日引っ越したばかりの新居、ダイニングテーブルに青銀と席につき、朝食をとりながら、スマホでニュースの流し読みをした。
(世界的プログラマー チャック・ウルフ お忍びで来日か? うわっ、アクション俳優みたいな男だな・・・怪しそう)
野次馬気分で一読し、左右対称すぎる顔にふと疑念を感じた。まるで合成写真みたいだなと思う。そこへ、律子さんから念話が入ってきた。
“顯くん、今日の夕方、あなたが大学から戻った頃にお客さんを連れていくから会ってあげて”
“はい、分かりました”
(はて?誰だろう。律子さんが連れてくるのなら、神かな・・・)
神絡みの事には、なるべく関わりたくないのだが、律子さんには、住処を提供してもらった恩もあるので断れない。とりあえず、会ってみることにした。
表題No.入力誤りのため、17から16へ訂正しました。




