15 激不味!!聴天由命丸(4)
あの後、三分くらいは耐えたけれど、気絶した。意識が途切れたので、何も覚えていない。黒が背負って、青華寺へ連れて帰ってくれた。(黒、本当にありがとう)
翌日、自転車を取りに行ったら、飛竜頭山からは、龍の気配がすっかり消え失せていた。
で、聴天由命丸だが、人の体には、深刻な副作用があることが分かった。実は、あの後一ヶ月ほど、私は味覚がなくなった。何を食べても、苦ぁい味しか感じなくなり、食欲が激落ちした。聴天由命丸恐るべし。和歌子(顯の母)と久しぶりに会って、高い料亭でフルコースご馳走になったのに、味が全然分からなかった。和歌子には、夏風邪を引いて、鼻詰まりで味がよく分からないと言って誤魔化したけれど、ご馳走が美味しくなくて、ちょっと悲しかったな。ただ、桃花粋だけは、味が分かるので、そればっかり飲んでたよ。
でも、悪いことばかりでもなかった。その年の終わり頃、マンションの内覧会があるから、一緒に行きましょうと、律子さんからお誘いがあった。
それで、久しぶりに飛竜頭山へ行ったんだ。
南側の斜面に見るからに高級そうなマンションが完成していたが、律子さんは、「こっちよ」と言って、マンションの横手から、以前にはなかった小川が流れる水路沿いに上へ登っていった。工事中に整備されたのか、山の上まで続く、石畳の道ができていて、マンション横手からの入り口は施錠されて、私有地扱いのようだった。
そして、頂上には、
「あれ、池なんかありましたっけ?」
青銀に薬を呑ませたとき、そこにはなかった湧水池があった。直径は五メートルくらいで、清水が湧き出し、それが、マンション横を流れる小川の水源だった。でも、露頭の天辺に水が湧くなんて、妙だな・・・
湧水池の水辺には、小さな祠と朱塗りの鳥居があって、その側に群青色の髪に銀色の眸の少年が立っていた。
「きみ、青銀か?」
「ワカ、この間は助けてくれてありがとう」
今日の青銀はやけに素直だ。その時、律子さんが
「顯くん、アルバイト代をずっと払ってなかったから、これでお支払いするわね」
と、指差した先に
「はあっ?何で家、家一軒!!」
池の向こうに、平屋の結構大きな家が建っていた。律子さんは、ちょっと得意げな顔で「ここは、もともと龍神を祀った禁足地だから、もう一度龍神の祠をつくり、管理人を置きなさいって、マンションの管理会社へアドバイスしてあげたのよ。そして、ここの管理人には、顯くんになってもらうから、青銀のお世話もしてあげてね。まあ、時々乗ってあげればいいわ」
青銀は、私の方へ恐る恐る近寄ってきた。
「曽お祖父ちゃんが、おまえはもっと世間の事を勉強して来いって、それで、ワカのところで勉強すればいいって、俺、一緒にいてもいいよね」
若龍から、うるうるした眸で見つめられて断れる訳がない、もう完全に落ちました。私は、ここへ引っ越して管理人になることにした。
ただ、律子さんの真の狙いは別にあった。最近、神様同士で集まる宴会場を探し、予約するのが面倒臭かったらしい。それで、平屋の中には、しっかり宴会用の大きな部屋が作ってあって、その後、ほとんど毎月理由をつけては、宴会だあ、酒盛りだあと騒いで、ここは、にぎやかな場所となった。そのお陰で、私は人間なのに、神様付き合いの方が多くなってしまった。
(まあ、中身は神だから、別にいいかな)
No.入力誤りのため、表題を16から15へ訂正しました。




