15 激不味!!聴天由命丸(1)
御老公が、顯と再会を果たした翌々日、飛竜頭山の工事現場の前に、大きな護摩壇が作られた。日没後、青華寺のご本尊降三世明王のお姿を描いた掛け軸の前で、剛照和尚が読経を始めた。
律子さんと、ダーキニー、黒龍と私は、祭壇の裏手から飛竜頭山へ登った。
「龍体となれば、ここまで一飛びなのに、ワカを歩かせて申し訳ない」
「いや、自転車で来たから近かったよ。それより興奮しすぎて、雷雨を呼ばないように気をつけてくれよ」
私は、黒がまた雷雨を呼ばないかと心配でならない。雨乞いの祈祷なら、是非呼んでほしいところだが、今夜の修法は、工事の安全祈願だ。雷雨になったら、和尚の信用に関わる。
「ふうむ、確かに、弱々しいが龍の気配がしますな」(黒=御老公)
「今にも消えちゃいそうよ」(ダーキニー)
「顯くん、やはりこれなら、昇化殲滅の方がいいのじゃないかしら、この計画は面倒すぎるわ」(向かうところ敵なしの大地母神 律子さん)
私は、身震いした。古龍の黒がいる前で、律子さんは、何という恐ろしいことを言うのだ。龍は同族意識がもの凄く強いのだ。黒を連れてきた時点で、もう、この飛竜頭山に隠れる龍を、昇化殲滅する選択肢はなくなっている。
「顯、これ、借りてきたわよ」
「ありがとう」と、私は、彼女が差し出す龍笛を受け取った。
工事現場前には、梨花の叔父や、その会社関係者がいるが、読経の音に隠れ、龍笛の音は聞こえないだろう。修法を、今晩にしてもらったのも、この龍笛を探すためだった。とある寺院の宝物庫の中に、やっと条件に叶う龍笛が見つかったのだ。これについては、降三世明王とダーキニーが、方方探し回ってくれたおかげなので、感謝しかない。
「ワカ、笛を吹かれるのか。ワカの笛が、また聞ける日が来ようとは・・・」
「こら、黒、涙厳禁だぞ」
私は、笛を吹く前に、黒へ釘を刺した。まったく、神通力使用禁止のはずなのに、神通力ダダ漏れ状態じゃないか、本当に困った奴だ。
山の頂の開けた場所に来ると、私は龍笛を吹いた。空気を含み少し掠れ気味の笛の音は、もの悲しく、最初は地を這うように低く、そして蕭々と風に乗り、天へ昇っていった。
天高く吹き荒れる風は 龍の哀哭を運び、
その心を知らぬ鳥たちは 白砂青松に飛び遊ぶ
落木は ただ無言で枯枝を揺らし
万年のうち、万里の彼方より訪うものを待てども
いまだ現れず ただ孤独を客となす
多年の辛苦 まさに今 山の精と成り果てん
龍や 龍 汝 まさに山と化すのか
我 汝を如何せん
龍笛を吹きながら、その言葉を託し、眠る龍へ伝わることを祈った。涙腺崩壊一歩手前の黒を横目に睨み、泣くなと牽制しながらだから、忙しい。
突然、飛竜頭山が鳴動した。
やった、龍が目醒めた。
No.入力誤りのため、表題を16から15へ訂正しました。




