13 上古の縁は何処に(4)
もの凄い仏圧にさらされながらも、先ほど虚空蔵菩薩との百面相対決でさらに強化された拈華微笑は、決して崩れなかった。
阿弥陀如来は微笑され、
「観音菩薩、あなたの修行は進んでいるようで、嬉しく思いますよ」と、褒めてくださった。
「はい、ますます精進に勤しみます」
感激の面持ちの観音菩薩へ、阿弥陀如来はコホンと一咳し、切り出した。
「ところで、顯くんとやらは、あなたが本尊の海雲寺にいるそうですね」
「はい、さようでございます」
「では、御老公が差し入れを渡すとき、あなたから伝えてほしいのです」
観音菩薩は、阿弥陀如来の次の言葉を待った。
「西方浄土の者は皆、あなたが天の御柱を数千年に渡り、支え続けてくださった御恩を決して忘れることはありません。これは本当にごく細やか感謝の気持ちです。どうぞ遠慮なく受け取ってくださいとね」
観音菩薩はそのお言葉を丸々暗記した。
しかし、まだ仏圧が弱まらない、いや、ますます強まるばかり。
「それからね、あなたに、とっても、とっても、大切な役目を担ってもらいます」と、言いながら、阿弥陀如来は何やら、小さな名刺のようなものを差し出した。
受け取りながら、それに視線を落とした観音菩薩は、またもや拈華微笑を忘れかけたが、辛うじて顔面崩壊を免れた。
「これは一体???」
そこに記されていたのは、『会員制秘密ファンクラブ ワカの会 正会員証」とあった。
呆気にとられる観音菩薩へ、阿弥陀如来は厳かに告げた。
「ワカの会へようこそ、観音菩薩。私が会長、そして薬師如来は副会長、そして釈迦如来は広報兼会計担当です」
「はあ???」
続きを釈迦如来が引き受けた。
「観音菩薩は、虚空蔵へ行き、ワカに関する記録を手にしましたね。よって、会員資格を満たしたので、本日より正会員です」
(わたくし、入るとも入らないともお返事いたしてはおりませんのに・・・)
しかし、凄まじい仏圧の前で、今さら入会しませんなんて言えるはずもない。
「ワカミアヤは長年行方不明で、私たちファンクラブの活動は、秘密裏に行われてきたのです。しかし、ワカミアヤはついにお姿を現されました。私たちは、ファンクラブとして、ワカミアヤを全面的にお支えしていかねばならないのです」
(ひえぇぇ、釈迦如来、キャラ変わってませんか?一体どうしちゃったの?三尊から、何だかもの凄く俗っぽさをまとった熱が伝わってくるのだけれど、わたくし、どうしたのいいの〜!!)
また阿弥陀如来が発言した。
「あなたは、私たちに、顯くんとやらの様子を定期的に報告するのです。よいですね。そのうち会報の原稿を作ってもらいますから。それから、好物とかあったら、優先的に知らせなさい。こちらから差し入れしますからね。くれぐれも、観音菩薩、抜け駆けはいけませんよ。あくまで、みんなのワカミアヤなのですからね」
「はい」
観音菩薩には、まったく理解できない、俗っぽい熱心さだ。けれど、三尊の命令は絶対だ。
最後に、薬師如来が言った。
「他にも秘密ファンクラブがあるらしいとの噂もあるから、顯くんの身辺に不審者がうろついていないか、よく注意しておくのですよ」
(何それっ、こんな訳の分からない集まりが他にもあるのですって、信じられないわ)
打ち合わせは終わり、観音菩薩は御老公を先導し、下界へ戻った。




