13 上古の縁は何処に(1)
その後、虚空蔵菩薩は、巣立ち寸前のアホウドリなみの食欲、もとい、知識欲でもって、観音菩薩から引き出せる限りの、顯についての情報を引き出した。そして、質問に答え続けて、へとへとになった観音菩薩へ
「ミヌメちゃん、可哀想に、一万年以上も、こんな鈍感ダメダメ神様を待ち続けて、年月をふいにしちゃったんだね」と宣うた。
「いやだ、それってちょっと顯くんが可哀想だわ、ちゃんと神上げして、助けてあげたのに」
虚空蔵菩薩は、鼻で笑った。
「フン、観音菩薩、あなたも、なーんも分かってないね。どうしてそんな長い年月、あの子が必死で待ったと思っているの?初恋だったからに決まってるでしょっ。そんな中身すかすかの報告聞いただけでも見当がつくのに、どうして当事者の彼が自覚しないのかねえ」
「えっ、でもミヌメちゃん、とっても小ちゃかったそうよ」
「そういう事鵜呑みにしちゃダメだよ。女の子の初恋に年齢なんて関係ないよ。いつまでたっても山猿みたいに落ち着きのない男の子とは違うんだからさ。きっと今でも、ワカミアヤの事、大好きに違いないよ」
「ええっ、じゃあ、これってロマンスってこと・・・?」
「私が記録するなら、間違いなく、悲しい恋の結末として記録するね」
観音菩薩は、話し込んでいたために、すっかり冷めてしまったお茶を飲みながら、
(そうなんだ・・・ロマンスだったのね・・・ああ、わたくしもまだまだ修行が足りないわ。でも、ダーキニーには、これは絶対秘密にしておかないと、あの子、物凄くやきもちを焼くに違いないわ)と、思った。
そこへ突然、念話が入った。観音菩薩にとどいた念話は、西方浄土の阿弥陀如来からの呼び出しだった。
「あら、大変、阿弥陀如来様から、ちょっと来てって伝言が飛んできたわ。今日は色々教えてくれてありがとう、虚空蔵菩薩」
「いや、こちらこそ、色々新鮮な情報を教えてもらって、楽しかったよ、また、来てね」
各々満足し合って、お別れした。
観音菩薩は、西方浄土とも呼ばれる如来界に到着した。
(フー、ここはいつ来ても静謐清浄で落ち着くわぁ)
と、虚空蔵菩薩との百面相勝負の疲れが癒やされるのを感じた。
先導する侍童によって、観音菩薩は、菩提樹の大木の下へ案内された。
そこには、またしてもお茶の用意。
(今日は、何だか、お茶づいてるわ。ええぇっ、何なのよ、この面子はっ)
そこには、阿弥陀如来、薬師如来、釈迦如来が揃っていた。皆、修行の道半ばの観音菩薩にとっては大先達であり、もう圧力が半端ではない。それに、何だか、妙な雰囲気を感じた。
(何?・・・・この浄土の空気に合わない、妙に俗な気配は一体何?)
と、心中密かに狼狽える観音菩薩へ、阿弥陀如来が声をかけた。
「遠路はるばるご苦労様、いま、もうひとり、ご招待したお客さまを待っているところなので、あなたも席につきなさい」
言われるまま、観音菩薩は大人しく太師椅子に腰掛けた。暫く畏って腰掛けていると、遥か遠い天空の彼方に黒雲が現れ、雷鳴が轟いた。
(あれって、まさか・・・・)
観音菩薩は、こめかみから冷や汗をタラッと流したいほど、焦った。




