表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一万年サボろうと思っていたら、人仕事押し付けられた神様です。  作者: nanoky


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/219

9 妹島の女神(4)

 「・・・・・」

 尻餅をついたままで顔を上げた。太陽を背に、白くて綺麗な人がいた。

(神様かな?とっても白くてボウッと光ってる。目が真っ青で、海より綺麗。キラキラ光って吸い込まれそう)

 白くて綺麗な人は、微笑んで、長い腕であたしを支えてくれた。とっても背が高くて、足が長い。お父さんより、ずっとカッコいいし、ぼうっとするほどいい香りがした。背中の後ろには、蝶のように半透明の翼が何枚かあって、キラキラ輝いていた。

「ごめんよ、驚かせちゃったね。この海岸には、今時分なら誰もいないだろうと思って、騎龍を転身させないままで近づいてしまった。おや、足元がふらついているよ。大丈夫かい?」

 神様は、心配そうに私を覗き込んだ。(もっ)(たい)無いほどお美しい神様に覗き込まれて、あたしは真っ赤になった。

「ワカ、その子、たぶん俺が嫁取りするミユメの一番下の妹だと思う」

 ぼそっと声がした。

 その時、私はやっと神様の後ろにもう一人誰か立っているのに気がついた。褐色の肌に漆黒の髪、鷹のように鋭い金色の眸の若者だった。でも、私の前にいる神様の方が、ずっとずっと綺麗でカッコ良かった。神様の長い髪は(しろ)(がね)色で淡く光を帯びていて、風にそよいで、私の腕に一瞬触れた。そこからは、暖かな神気が流れ込んできた。

「きみ、名は何というの」

 神様があたしに尋ねた。

「あたしの名はミニュメです」

 あたしの名は発音が難しい。あたしは小さいので正しく発音ができなかった。ああ、また変な名前を言ってしまった。

「ミ?メ・・・?」

 神様はあたしの言った名前を繰り返し、頭を捻った。そして、手を()った。

「分かった、ミヌメだろう」

「そうです」

 あたしは、満面笑顔で頷いた。


 その夜の宴には、(わだつ)()(おう)の家老であるあたしの父とあたしの母、そして十一人の姉と先日生まれたばかりの弟、そして村人が全員参加した。海と山のご馳走を食べ、歌ったり踊ったり楽しい宴だった。父は、先日生まれたばかりの弟を、神様に見せて名前をつけてほしいと頼み込んでいた。

「いや、海神王を差し置いて、私が名付け親になるなんて、そんな厚かましいことは・・・」

 神様が笑いながら手を振って断るのへ、押しの強い父はギョロッと目を剥き、さらに頼みこんでいた。

「いやいや、海神王も、ワカミアヤに名付けていただいたと聞いたら、お喜びになるに違いありません」

「いや、まあ、まあ、その話は宴が終わってからゆっくりしよう。今日は、あなたの娘ミユメと黒い龍が主役なんだから」

 神様はにこやかにそう話すと、今日の主役二人の方へ近寄った。

「南海龍王の第三王子、それにミユメ、おめでとう。私からの祝いの品だよ」

と、神様はふたりの目の前に手の平を上に向けて差し出した。手の平の上に、金色に輝く宝珠が現れた。宝珠はキラキラと輝き、八方に広がる光線は、真昼の明るさで、松明の明かりが霞んで見えるほどだった。

 「ワカ、何ですか!これっ」

 黒い龍が立ち上がり叫んだ。

「何って、宝珠じゃないか。私からの祝いの品だ。神威を満タンに詰めておいたからね」

「キラッキラッじゃないですかっ、一体どれだけ神威を詰め込んだんですか」

 神様は、宝珠を見せたまま、にこにこ笑った。

「明るいだろう。夜明珠みたいに照明にも使えるよ」

「これ、(かむい)()げが十回はできそうなくらい神威が入ってますね。それを、照明に使えだなんて、どんだけ贅沢なんですか、ありがとうございますっ」

 黒い龍は、感激のあまり、顔を真っ赤にし、目をウルウルさせて叫んでいた。本当に仲の良さそうな主従だ。


 あたしは途中で宴をこっそり抜け出し、村の近くの滝壺まで散歩した。今日は満月で明るい夜だし、宴で(にぎ)やかだから、怖い動物は寄りつかないだろうと思った。

「せっかくワカメをつけて飾ったけど、乾いてカピカピになっちゃった。蔓草も、弱ってきて何だか貧弱になっちゃった」

 上の姉たちは、神様が来るからと大騒ぎして、今日は朝からおしゃれに余念がなかった。私はまだ小さいから、化粧なんて上手にできない。最近、お父様や、お母様は、やっと生まれた男の子に夢中で、私がいることも忘れているようだ。

 「・・・・」

 私は口を尖らし、森の外れの崖の上から、滝壺を覗き込んだ。滝から跳ね上がる水飛沫が、月明かりに反射して、星のように煌めいた。

「へえ、夜の滝って綺麗だね」

(神様?)

 私は、ぱっと振り返った。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ