5 観音菩薩 拈華微笑で叱る(2)
まだまだ続く、観音菩薩の反省会。
「う、ううう、う〜」
みんな、泣いている。私も、もらい泣きしている。お家へ帰りたくて、泣いてるんでしょ?って、違います。もらい泣きです。
「そうだったのね、本当にごめんねぇぇっ」
一際大きな声で泣いているのがダーキニー。やれやれ、観音菩薩恐るべし。あらゆる生きとし生きるものを救済する、広大無辺の慈悲の心で語られた、観音菩薩による顯の身の上話は、私本人が語るより哀れさ千倍増しの破壊力があった。実際、海雲寺で、顯の今にも消滅しそうな魂魄を、私が必死で守っているところを目撃しているから、その後の展開も臨場感抜群だった。で、当事者の私さえ、思わずもらい泣きして、顯の涙を、ダーキニーがハンカチでそっと拭いてくれた。ありがとっ、ダーキニー。
「ご本人が、あまり言いふらしたくない様子でしたから、今まで、事情をお話ししませんでしたが、そういう訳なのです。ですから、奪舎などの妖術を用いたりは一切されてませんからね」
観音菩薩がピシッと釘をさした。
大地母神の律子さんは、この日の本の神仏衆生の総元締めなのだそうだ。それで、いろいろ報告を受けるうちに、この子供の中にいるのは何者なのかと気になったそうだ。そして、ダーキニーが悪知恵を巡らし、私が本気を出すよう、あんな一芝居を打ったらしい。本当に、女神は災いのもとだよ・・・・
「事情は理解できました。では、日の本では、人として暮らすという事ですね」と、律子さん。
私は無言で頷くと、律子さんは、笑顔になって
「では、顯くん、あなたが日の本で人らしく暮らしていけるよう、私たちは見守っていますからね。人生を楽しんでちょうだい」
「では、ご納得いただけたので、わたくしも海雲寺へ戻ります。坊、しっかり養生なさい。ここで食べたいものは遠慮なく頼みなさい。そもそもダーキニーがあなたに迷惑かけたのだから、贅沢させてもらいなさい」
と、心強い励ましの言葉を残し、観音菩薩は戻って行った。




