4 大地母神、律子現る (7)
無音の閃光が亜空間全域へ拡散し、世界は真っ白になった。
「キャッ」
私は問答無用でダーキニーを引っ張り、亜空間から脱出した。
何をしたかって?亜空間ごと強制終了させたんだ。私は、自分の力であらゆるものを粒子へ返すことができる。それがたとえ、超弩級大地母神の創り出した亜空間といえども、私が光を発すれば、すべて無へと還るだけだ。
現実世界へ戻っってみると、さっきと同じ覗き込んだ姿勢のままの律子さんは茫然として「あなた、何をしたの・・・」と言った。
一方の私は、それに応えるどころじゃなかった。顯の体は、激しい痙攣発作を起こして、後ろへ倒れかけた。
「坊、どうしたんじゃっ」
爺ちゃん神様が慌てて支えてくれ、
「いやあぁあ、顯くん死なないでえぇぇぇぇ」
ダーキニーが泣き叫んだ。
(うるさいっ、そんな簡単に死なんわっ)
こうなるだろうと思っていたから、この術を使いたくなかったんだ。現実世界における私は、上古の時代、とある事情で自分の体を失った。体があれば、技の反動を吸収できたのに、六歳児の脆弱な体で反動に耐えられるわけがない。私は、目下、反動の吸収と、顯の肉体のダメージを回復させるため、その両方の作業をフル稼働中で死にそうなくらい忙しい。お願いだから、静かにしてくれ〜
幼児から子供になりかけの体の制御はものすごく難しい。何とか舌を噛まさないようにしながら、痙攣を抑えようとするがうまくいかない。反動が、体中を駆け巡っているのだ。ほら、お寺の鐘をついたら、しばらく残響があるだろう。あれと似たような状態だよ。
「どうしよう、律子さん、顯くん、痙攣してるうぅぅぅ」
「・・・・・・」
ダーキニーは涙目になって顯を見下ろし、律子さんも顯の状態を量りかねている様子だ。
(しくじったな〜、あの亜空間にいきなりダーキニーが現れた時、どうして変だと気がつかなかったんだろう。この二人、絶対ぐるだよ)
「とにかく、休ませないと、ここから移動しましょう」と、律子さんが判断した。
「それなら、青華寺がいいわ。海雲寺より近いわよ」
(ダーキニー、遠くても海雲寺へ連れて行ってくれ、おやつをたべたいよ〜)
だが、私の心の声は、二人に無視されてしまった。




