4 大地母神、律子現る (3)
「「「「「顯くん、可愛いっ!!」」」」」
今、巨人族、否、女子高生に取り囲まれている。堂明寺伯父さんの長女、絵美さんとその友達四人だ。みんな顯より背が高く、小さな顯を取り囲んで覗き込んできた。私にしたら、巨人を見上げる小人の気分だった。
「フワアッ、頬っぺが、ふくふくよっ!」
次から次へと、女子高生の手が伸びてきて、顯の頬をムニッと触っていく。こんな若い女の子たちから、お触りされ放題の状態なんて・・・・
(大丈夫、大丈夫、気をしっかりもて、おまえはダーキニーのポヨポヨ胸攻撃で慣れているんだ。これしきの攻撃くらい、心頭滅却すれば火もまた涼し、般若波羅蜜多波羅・・・)
顯の体は幼いけれど、中身の私は一人前の神なのだ。彼女らとの触れ合いは、ただ心を無にして耐えるしかない。
今年の冬、絵美は大学受験を控えていた。お寺生活が嫌いな絵美は、わざわざ学生寮のある中学から大学まで一貫教育の学校へ高校受験で入学した。そのまま系列の女子大学へ進学できるのに、大学は男女共学へ行きたいと、わざわざ受験するそうだ。そして今日は、合格祈願のためにお参りに行きたいといって、友達四人と外出中で、顯くんも今年は小学校入学だから、一緒に行こうと連れ出されてしまった。小学校は義務教育だし、私は近所の公立小学校へ行くから、受験は関係ないのだが・・・
心の中はともかく、子供番組での学習効果を遺憾なく発揮し、まつ毛の長いつぶらな眸をキラキラさせて、エヘッとちょっとはにかんで笑ってみせる。
「キャーッ、もうっ、この子どうしてこんなに可愛いのかしらっ」
絵美は、悶絶しそうな友達へドヤ顔をしてみせた。可愛い弟分である顯を見せびらかしたくて堪らなかったのだ。皆の反応をみて大満足の様子だ。
(ふーん、この年頃の女の子には、これが通用するんだ)
幼稚園さくら組のクラスメート、りかちゃんからは、そのニッコリ顔はあざとい、小学生になったらその路線は変更すべきだと、ダメ出しをもらっている。
(一体、顯って、彼女らには、どんな風に見えているのだろう。もう少し硬派へ方向転換したほうがいいもかなあ・・・)
小学生になったら、同年代の男の子からサンプルを集めようと、私は思った。
「絵美お姉ちゃん、どこへお参りに行くの?」
無邪気な顔で絵美を見上げ、尋ねた。他の神の縄張りへ侵入するのだから、事前の情報収集は大切だ。
「菅公さんの神社よ。学問の神様、菅公さまよ」
「そうそう、北野さんよ」
(カンコウ?キタノサン?)
この時は知らなかったが、一千年余り前、政治闘争に負けて非業の死を遂げた左大臣が、死後祀られて神となったそうだ。
ところで、神の世界には、上位神とその他諸々の神々の区別がある。上位神は、すでに神としてこの下界へ来た存在、その多諸々の神々とは、この下界で、時間をかけて神になった存在だ。人がその死後に祀られて神となるのは、だからあり得ないことではない。私はどっちかだって?上位神だよ、自慢じゃないが、ものすごく長い間、この下界にいるんだよ。




