25 オリュンポスの秘密(1)
黒が、神気を引き取ってくれて、体の自由は、すぐ取り戻せた。それはいいのだが、目の前のロイヤルスイートルームは、凄まじい惨状だった。
「・・・・・・」
分厚い扉は吹き飛び、壁には大穴が空き、絨毯はびしょ濡れ、備品の電化製品は全部故障。これって、多分いや間違いなく、黒とダーキニーがやらかしたんだ。誰が弁償するんだよ〜
ヘラは支配人を呼びつけ、先ほどの暴風雨で窓が割れてこうなったと言った。(ちなみに、窓を割ったのはアテナです。拳で一発、辻褄合わせのためにやっちゃいました)
それから、とんでもない桁の小切手に自分の署名をして、これでできるだけ早く修繕してほしい、私は、この部屋がとても気に入っていますからと鷹揚に話した。支配人は、内心はどうか知らないが、一応納得して、修理の手配をするため、部屋を出ていった。
うわっ、ヘラは大金持ちなんだっ!支配人が出ていくと、ヘラは私の方を見て、にっこり笑った。
「私の夫は、アンドレニコポスグループの総帥、ゼウス・アンドレニコポスなのよ」
もちろん知っている。文字通り世界一の大富豪だ。アンドレニコポスに睨まれたら、世界中どんな荷物も運べないといわれる伝説の海運王だ。それに、最近は、ネット通販の分野で大成功を収めている。チャックも大富豪だったし、やはり今の世の中、神の王道は、大富豪を目指すのか?えっ、おまえはどうなんだって・・・私は、ちょっと無理そうだから、清貧の道を行きます。(泣)
「顯、これすごく美味しいよ。食べないの?」
被害のなかった別の部屋へ移り、ルームサービスの食事で、ダーキニーの機嫌はすっかり直った。横で、律子さんと黒も美味しそうに食べている。けれど私は、まだ神気に酔った状態で、食欲がなかった。
「ワカ、まだ具合が悪いのですか」
「大丈夫、もう少ししたら、治るよ。でも、今は何も食べたくない」
ヘラは、私を気の毒そうに見ながら、
「あとでお土産に詰め合わせを持ってきてもらいましょう」と、言ってくれた。
「はい、ありがとうございます」
ところが、アテナは、
「はんっ、神気で酔っ払うなんて、どれだけ軟弱なんだ」
と、またしても、むかつく事を言い出した。でも、頭が痛くて、言い返す気にもならない。黒が暴発しそうなので、腕を軽く叩いて宥めた。ヘラも、アテナをじろっと睨んだ。
「アテナ、失礼なことを言うのはやめなさい」
「ふんっ」
アテナは私のことを軽蔑しきっていて、それを隠そうともしない。だが、ヘラの方は、
「ご自身の神気を吸収できないなんて、一体どういう事ですか」と、尋ねてきた。
この質問には、あまり答えたくないなと思っているのに、横から黒が、
「ワカは、神体を無くしてしまわれたのだ」と、言ってしまった。
(もうっ、それを言ったら、話がややこしいから、言うなって、もう手遅れか。やれやれ・・・)
アテナが目を見開いた。
「嘘っ、神体なしで、どうして生きていられるのよ」
(地上神の君には、信じられないだろうけれど、私は一応上位神だからね。神体なくっても、何とかやってきたんだよ。フンッ)




