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オワリノハジマリ

「バイト」お金に飢えた学生たちの一般的な労働方法。しかし、この世には、踏み入れてはならない世界がある。


「闇バイト」一般的なバイト求人に紛れ込み、高額な報酬の対価として、犯罪行為に加担させるまたは、する行為。近年、SNSの普及により若者を中心に広がりをみせている。


一度踏み入ると、個人情報、家族、友人など当人の周囲の全てを人質にされ、二度と自力で抜け出すことができなくなってしまう。



県立東宮(とうぐう)高等学校

この学校では、学生たちの中でとある罰ゲームが流行っていた。

とある放課後の学校にて、


「なぁなぁ、今日の罰ゲームはあれにしようぜ」


「えー、やだよ。やりたくねーよ‼」


「お前がなんでも決めていいって言ったんだろ....」


「じゃ、じゃあ、なぎも誘って罰ゲームしようぜ」

「おーい、なぎも来いよー」

柳川という苗字が長いからと真ん中の二文字を抜き取った雑なあだ名で呼んできたのは、西城 光(さいじょう みつる)

「いや、別に来なくていいぞー」

続けて呼ぶのは、石釜 琉太(いしがま りゅうた)だ。

そんな言い合いをしている2人に話しかける。

「こんな時間まで何やってんだよ。お前ら」


「西城がよー」


「言い出したのはお前だろ。全部聞こえてたからな」

平然と罪を擦り付けようとしていたので、すかさずフォローした。

「ちぇっ」

琉太は不満げに舌を鳴らした。


「で、何の話だったんだ?」



「今日、体育のサッカーで俺と琉太でPKしてたんだよ。それで負けたやつが罰ゲームって」

俺の問いかけに西城が答えていると、


「ま、俺が負けたのは、別に西城が上手かったからじゃないけどな!!」

琉太が割り込んできた。


「琉太。負けたことは自慢するもんじゃないぞ」

あまりに可哀そうな自慢だったのでつい口が滑ってしまった。


「なぎ,,お前ひでぇよ..」


「いや、いつものことだろ」

見かねた西城が口を開く


「ま、置いといて。西城が勝って、決めた罰ゲームは何なんだ?」

さっきどこかで俺の風評が傷つけられていた気がしたが、そんなこと気にしていては話が進まないのでいったん無視して、気になるお題について聞いてみた。にしても、お前らひでぇよ....


「実は、やってもらいたい罰ゲームがあって」


「いやな予感しかしないんだけど」


「俺も」

西城がニヤついている。決まってこういう時はとんでもないことをしでかしてくる。

俺と琉太は肩を抱き合っていた。琉太の顔色が心配だ。


「罰ゲームは闇バイトにしようぜ」


「は?」

「は?」

二人して考え付くのは一緒のことだったみたいだ。同時に言葉が漏れ出てしまった。

琉太に関しては若干顔が青ざめていたから、より絶望感が漂っていた。

にしても、マジで何言ってんだこいつ。


「え、闇バイト知らない?」


「そこじゃねーよ!!」


「なんだ知ってるんだ。じゃあよかった。」

琉太の必死の突っ込みも意味をなさず、闇バイトという単語が理解されていて一人で安堵していた。

その表情は、琉太と反比例していた。


「何も良くねぇよ!!アウト。アウト。人生レッドカード」

気持ちはわかる。けど、日本語話せ。


「闇バイトってマジのやつ?ネタとかじゃなくて?」


「マジ、マジ、大マジ。元気ピンピンだよ!!」

興奮気味に西城が喋った。


「1回死んでみるか?」

ただ、琉太はキレていた


「なんか最近噂で高時給のバイトが流行ってるらしいんだと」

「ま、闇バイトっていっても時給が高いってだけで人殺したりとかはしないっていう噂だけど」


「で、その噂を琉太を使って検証してみたいってことか」


「何納得してんだよ...俺、やりたくねぇよ」


「罰ゲーム....」

誰かが小さくつぶやいた。


「君たちもあの罰ゲームやってるのかい?」

誰かと思えば、おなじクラスのくそ陽キャだった。確か笹島だか冴島だか何だか。

とりあえず頭もよく運動神経も良いので、そこらの陽キャに比べてよりたちが悪い。時々俺たちにつっかかってくる。オナジニンゲン。ミンナナカヨシ。


「”も”って..」

西城が聞いた。


「あぁいや、何でもないよ」

「最近、僕の周りでもよく聞くけど、君たちがやると思っていなかったからさ」

「でも、闇バイトってわりに悪いうわさは聞いてないから、君たちにもできるんじゃないかな?」


「そうなんだな。いい情報もらったわ。ありがとな」

そう明るい笑顔で話したのは、琉太だった。


「そ、そうか。じゃ、僕は帰ることにするよ。」


「おう。じゃなー」

「うす」

「うぃ」


陽キャの意外な情報で琉太の顔にはすっかり生気が戻っていた。そんな琉太は、去っていく彼の背中に仏のようなまなざしを送っていた。


嵐が去り、静かになった教室。そこで、スマホのバイブ音はよく響いていた。

メールの通知かなんかだろうか。ポケットからスマホを取り出す...

ふと、西城を見る。何やらスマホで入力しているようだ。そして、その入力には二台スマホが必要らしい。

んな、わけあるかボケ。


「おま、人ので何やってんだよ」


「あー、すぐ終わるからちょっと待てって。」


「あれ、俺のスマホは?」

琉太もようやく気が付いたらしい


ソシャゲに課金することで富の力でどんな苦行など苦すらなく乗り越えることができる。が、その富の力は一生続くわけではない。いつか終わりがくるのだ。金の力で愉悦に浸った後に見る現実。これほどまでにつらい瞬間はあるまい。


彼はスマホを返してきた。琉太と俺にそれぞれのスマホを。


「じゃ、応募しておいたから。よろしくな」


彼は言った。今までにないほどの笑顔で。

俺は現実を見失ってしまったようだ。


「これは、夢?...夢だな。うん。これは夢だ」

これは夢である。


「一緒に頑張ろうな!!なぎがいてくれるなら心強いわ」


「頑張れよ二人とも。あと、土産話もよろしく!」


どうやら、俺の周りには天然バカと悪魔しかいないみたいだ。天使さんはどこ行っちゃったんだろう。


キーンコーンカーンコーン


そこで最終下校のチャイムが鳴った。


「んじゃ、俺らもそろそろ帰るか」


「だな」


俺はここからどうやって家に帰ったかを覚えていない...


すると、いつの間にか家の近くに来てみると、1人に少女と目があった。


「げっ、また辛気臭い顔してる」


「悪かったな。こんな顔で」


「いや、今日は一層酷いよ...」


「生きてりゃ、いろいろあるんだよ」


俺より俺のこと知ってそうなこの女子は、俺の幼馴染で同じ高校の同級生 佐久良 璃菜(さくら るな)


「あ、っそ。ま、別に何があったのかは知んないけど。何とかなるんじゃない?知んないけど」


「慰めてるつもりなのか?それ」


「うっさいなぁ。心配してるだけありがたいでしょ」

「じゃ、あたし急いでるから」


「お、おぉ。じゃあな」


「うん。じゃあね」


そんな何気ない会話をした後、彼女は足早に去って行ってしまった。


「なんとかなるか。なるとかなるといいな。なってほしいな」

なんていう願望の三段活用を詠唱しながら家に帰り、自室でのんびりすることにした。


家について数時間後、夕食などを済ませあとは寝るだけだと思っていた矢先...

スマホにとある通知が届いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


初めまして。この度はご応募いただきありがとうございます。

日程と場所は別途連絡いたしますので、ご確認お願いします。


一緒に働くことができるのを楽しみにしています。

一緒に頑張っていきましょう。


現場責任者 谷川


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はそっとスマホを閉じて、ベットにダイブすることにした....


ほんとになんて日だ


そう心の中で叫んでいた気がする。

















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