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探偵アケチの黙視録  作者: 弐乃
微笑む死体の作り方
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ドクター・プレシャスの治療

 写真に写った女性。志保里はその女性に気になる点を発見していました。女性の表情にある種の人間特有の雰囲気を感じ取っていたのです。

 志保里の職業柄、よく見かける種類の人間。パートナーである壱心とも共通する表情。そうです。志保里はその女性がマゾヒスト特有の雰囲気を醸しているのを見逃さなかったのです。

 その女性、丸亀洋子は亡くなった老人の屋敷にそのまま住み続けています。遺品の整理に時間がかかっているようです。

 志保里は壱心の手下やコネを使って、屋敷と女性を調べさせました。骨董業者に古本業者、不動産鑑定士に電気工事技師。あらゆる業者に情報を調べさせ、手下を変装させて邸内に出入りさせたりもしました。

 結果は驚くべきと言うか、志保里と壱心にとって喜ばしいものでした。邸内の書棚にはSM関連の書籍や雑誌が多数あり、絵画や骨董品の趣味もザディズムを感じさせるものが多数ありました。

 盗聴、盗撮の結果、洋子は邸内でSM関連の画像を楽しんでおり、またその体にはまだ治りきらない鞭の跡、火傷の跡が残っていたのです。

 志保里と壱心はこの調査結果に顔を見合わせて残酷な笑みを浮かべました。そうです。志保里の勘は当たっていたのです。洋子はマゾヒストなのです。

 邸内に残された老人の遺品からして、恐らく老人がサディストであったことは疑いの余地はありません。そして洋子はマゾヒスト。二人は病人と介護者という関係を超えた、深くて暗い絆で結ばれた同志であったに違いありません。でなければ十億を超えると思われる遺産を簡単に与えるものではありません。

 壱心と志保里は、老人と洋子の関係に不思議な親近感を抱かずにいられませんでした。同時に自分たちのように不思議で奇妙な絆で結ばれたカップルが世間にはいるものだと、この偶然の一致に驚かざるを得ませんでした。

 ともかく、自分たちと洋子に思わぬ共通項が見つかったのです。上手くいくと十億のうちいくらかでも掠め取れるやもしれません。

 壱心と志保里は一計を案じました。ヤクザもSMクラブの女王も、一見特殊で限られた世界のようですが、意外にもそのネットワークは広く、二人は世間的にVIPと呼ばれる人たちにも顔が利くのでした。特に志保里はその抜群の女王力、相手の心を踏みにじり、傷口に塩をすり込む心理虐待の天才でした。彼女の責めを求めて大金をはたく有名人や富裕層の人間が大勢いるのです。

 二人は洋子がメンタルクリニックに通っていることを突き止めると、まず志保里が医師の顧客に極上のサービスを施し、洋子の診断記録を手に入れさせました。

 そして言葉巧みに洋子のかかりつけのクリニックに女医を装って潜り込むと(もちろん医師の顧客に無理やり協力させて)、彼女をサディストクイーンとして診察したのです。

 診断はグルーブ療法の形で行われました。他の患者と一緒に医師の診察や治療を受けるのです。他の患者というのはもちろん嘘で志保里の顧客たちです。その中には壱心も入っています。

 洋子は突然知らない医師からグルーブ療法の誘いを受けかなり戸惑った様子でしたが、かかりつけ医の強い勧めもあり気乗りしない部分もありながら参加したのでした。

 さぁ、グループ療法が始まります。車座に椅子を並べて座る患者たち五人。その前に立つのはミニの白衣に紅いハイヒール姿の志保里です。

「皆さん、ようこそ。私はドクター・プレシャス。今夜はリラックスして過ごしてちょうだい」

 志保里は派手なペイズリー柄のストッキングを見せつけるようにポーズを決めます。患者たち(その実は志保の方の忠実な下僕、いえ、奴隷たちなのです)が心のこもった拍手を送ります。

 洋子といえば何か妙な違和感を感じながらも、志保里の放つ妖しい磁力に絡め取られ、その場を動けずにいるのでした。

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