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探偵アケチの黙視録  作者: 弐乃
微笑む死体の作り方
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幸福な出会い

 壱心は中学生になり、アンゲリカ先生様と会うことはなくなりました。壱心はアンゲリカ先生様に会いたくて仕方がありませんでしたが、先生はいつの間にか他校へ転校していたのです。

 壱心は虚しく飢えた中学高校時代を過ごすこととなり、彼の性格は益々粗暴になっていきます。

 しかし、壱心は他者への暴力では満たされないのです。他者から暴力を振るわれたい人間なのです。そういう心の形になってしまっているのです。もう後戻りも、心変わりも、改心も、宗旨替えもできない壱心なのでした。

 高校を中退し、チンピラの真似事などをし、やくざ者の知り合いなどもできてきた頃です。壱心はSM倶楽部に通うようになりました。

 そこはいじめることが好きな者、いじめられることが好きな者が集まる所です。互いにレザーやラバーのピチピチのコスチュームを着て、虐めたり嬲ったり、泣いたり喚いたり懇願したり、互いの欲望のままに楽しむのです。壱心はこの場所でアンゲリカ先生様と別れて以来、初めて心の充足を感じることができたのでした。

 さて、そして壱心はここで運命の相手と出会うのでした。広い肩と力強い二の腕、引き締まった腰と大きな尻。スッと伸びた背筋と優雅な四肢。身体にぴったりと沿ったレザースーツは身動きするたびにミチミチと軋み、彫刻のような美貌は冷たく壱心を見据えます。

 志保の方。それが彼女の名前でした。壱心は志保の方にアンゲリカ先生様の気高さと容赦の無い苛烈な愛を見出したのでした。

 志保の方様に尻叩き板で尻を叩かれながら、壱心は心からの随喜の涙と鼻水と汗と小便と、体の中の体液という体液をこぼしながら、アンゲリカ先生様への愛と思い出を全て告白したのです。

 二人は互いの特質を認め合い、パートナーとなることを決めました。壱心は強く気高い志保の方、曽我部志保里を必要とし、志保里は自分の苛烈な愛を受け止め賛美してくれる瀬名壱心を必要としたのです。

 二人がパートナー同士となったのはおかしなことでも、法に触れることでもありません。互いに互いを必要とし、共にいることを望んだだけ。その点普通の恋人たち、夫婦と何ら変わる所はありません。そこには打算も計算も策略もありません。互いの強い感情により、二人は結びついたのです。

 志保里と暮らすようになり、壱心は暴力団内でメキメキと頭角を現していきました。志保里は自分の店を持ち、女王としてこの世界で知らぬ者がないほどのS嬢となりました。互いの存在が好影響を与えあったのでしょう。

 そんな頃です。二人の激しいプレイの後、珍しく志保里は憂鬱な顔をしておりました。壱心は理由を尋ねました。志保里の話しはこうでした。

 自分の遠縁に大金持ちの老人がいる。どうやらその金持ちが死んだらしいのだが、老人の世話をしていた親族の女性が遺産を受け取るらしいというものでした。

 ヤクザはこういう話には敏感です。あっという間に亡くなった老人や遺産を受け取った女性のことを調べ上げました。かなり薄い縁戚とはいえ親戚は親戚。親族の端くれではあるわけです。少しでも割り込む隙があればそこに強引に体をねじ込んでいくのがヤクザというもの。

 調べた結果、老人の遺産は十億円近くになること、それを受け継いだのは老人の世話をしていたこれも遠縁の女性であることが分かりました。

 志保里はその老人にも女性にも会ったことはありません。また遺産相続の手続きは遺言に基づき弁護士も入って適正に行われ、不動産などの処理も粛々とすすられているとのこと。どうやらヤクザが割って入る隙は無さそうに思われました。

 ヤクザの情報収集能力は凄まじく、女性の勤務先や写真までありました。その写真を眺めていた志保里の手が止まりました。

 しばらく数葉の写真をためすがめす眺めていた志保里は、壱心にもう少し調べてみようと言い出したのでした。

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