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探偵アケチの黙視録  作者: Nino
微笑む死体の作り方
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微笑む死体の作り方6

 アケチはさりげなく郵便局員の手元をチェックする。郵便局員が押した番号は30286だ。ちなみにこのマンションの名は「ミレニアムタワー京都」アケチは思わず笑みを漏らす。「30286(みれにあむ)」の語呂合わせだろう。高級タワーマンションなのにセキュリティが甘い。郵便局員や宅配業者用のゲストコードなのだろうが、運用が甘いのはもちろん語呂合わせにもセンスがない。この分だと東西二塔共に同じコードでエントランスに入れてしまうに違いない。

 アケチはリュックから紺色のベースボールキャップを取り出して、軽く髪を手ぐしで梳かすとキャップを深く被る。操作盤の数字を押す。エントランスの自動ドアが開く。間違いなく防犯カメラで録画されているだろうが、何か事件が起きない限りは録画映像が見られることはないだろう。郵便ポストを確認するが、ほとんどのポストには入居者の名前は書かれていない。女の部屋は階数と位置からして3103号室か3104号室だろうが、どちらにも入居者の表札はない。ポストの中の郵便物を覗き見するのはさすがに早計だろう。

 アケチはそのままエントランスを出る。アケチはフミヨ宛にメールで簡単に一報を入れ、その日はタワーマンションを離れた。あくまでもこの調査はアケチの趣味の延長である。大学の授業をサボってまで続けるだけの確証も得られていない。本当に人が殺されかけているなら、本当にアケチをワクワクさせるような人間ドラマが待っていると分かれば張り込みも続けるが、今のところは少々派手な服装の女性が少々物騒なセリフを呟いたにすぎない。

 アケチは再び地下鉄に乗り込み、学生の本分たる学業に勤めんと大学に向かった。フミヨからの返信があったのは大学の正門前まで戻った時だった。

 メールは簡単なもので「この人かな?」とだけ書かれており、メールに画像ファイルが1枚添えられている。開いていると件の女が写っている。写真の中の女は先程見かけたよりもずっと派手で怖い印象を見る者に与える。写真の中の女は、髪は赤毛というより真紅というべきで、黒い胸までのドレスを着て肉付きの良い肩や腕を剥き出しにしている。

 何よりアケチの目を惹いたのはその顔だ。化粧がきついのはもちろんだが、その顔に浮かぶ笑みからは獰猛さと残酷さが滴っており、どこか獲物をいたぶる肉食獣を連想させた。

 アケチも簡単に「この人」とだけメールを返す。ちなみにフミヨとアケチはSNSやチャットアプリで仕事の会話をしないことになっている。一応警察関係者であるフミヨは一応セキュリティに気を使っており、「ほら、随分とセキュリティの甘いとこあるし、チャットアプリって」と電話かメールで連絡するようアケチに求めたのだ。

 再びフミヨからメールが届く。「時限ファイルだけど読んだら削除してね」との本文にPDFファイルが一つと画像ファイルが二つ。アケチはファイルを開いて一読する。ファイルには女性のプロフィールが書かれていた。


氏名 曽我部 志保里

年齢 三十二

性別 女性

住所 京都市**区**ミレニアムタワーEAST 3104

車 京都か**ー** 赤 ポルシェ


 次の行を見てアケチは「ん?」という顔になる。


勤務先 レザー&ラバー

源氏名 志保の方


 源氏名?志保の方?イメージクラブか何かだろうかと訝るアケチは次の情報を見て「あぁ」と得心した。


職務内容 上記クラブにてS嬢を努める。

特技 言葉責め ロープ結び


 アケチは思わず苦笑する。ロープ結びってボーイスカウトじゃあるまいし。


婚姻 未婚。内縁の夫あり。夫は蒼龍会 若頭 瀬名壱心(せないっしん)


 成程、成程。あの女はヤクザの女でSMクラブの貴婦人様らしい。外見と実態が見事に一致しているといえよう。画像ファイルは瀬名の顔写真と瀬名と志保里が並んで写ったもの。



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