102号室の住人。1
光の成分でできてます!ってくらい明るい笑顔のアシェルさん。
ようやく会えた二人目の住人さんも優しい感じで良かった‥と、ほっとしているとアシェルさんは「買った物を置いたら、袋を届けるから!」と言って102号室のプレートが貼られている部屋へ入って行った。
ナキルさんのお隣さんだったのか〜。
なにはともあれナキルさんのお陰で、ようやく二人目の住人さんに会えた。帰って来たらお礼を言おうと心に決めて、私も買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞ってから、買い物袋を畳んでいると家の呼び鈴が鳴った。
アシェルさん、早いな〜と思いつつドアを開けると、ニッコニコのアシェルさんが私が貸した買い物袋をちょっと掲げた。
「袋ありがとうな。そん中に俺が作ったおかずが入ってる。管理人さんにお裾分けだ!」
「いいんですか?ありがとうございます!」
キラキラな笑顔のアシェルさんからお裾分けを頂いて、ようやく出会えた住人さんと早速交流ができた喜びを噛み締めていると、
「これがケルガガの肉で、こっちはゲラン、こっちがサラマンダーで」
「‥んん???」
「どれもすごく美味しいぞ!!」
「あ、ありがとうございます」
異世界のお肉を食べてもお腹を壊すことはないか、おばあちゃんに聞けたら良かった‥。とりあえずナキルさんに会えたお礼をする時に聞いてみよう。よくわからない事についてはちゃんと確認をするのは仕事の鉄則だ。
「あ、そうだ。もしかしたら明日の朝、肉がこっちに届くかもしれないんだ。俺が受け取る予定なんだけど、もし早めに来たら受け取っておいて貰えるか?」
「は、はい!!」
管理人さんらしいお仕事の依頼に、私の背がピッと伸びる。
もちろん掃除や宅配の荷物の片付けなんかはしてたけど、基本のんびりした生活だったのでちょっと嬉しい。ニコニコ笑って「頼むな〜!」と戻っていったアシェルさん。
よし!!
明日はもう少し早めに起きて準備しておくぞ!!
張り切る私はパワーを持て余し、お肉を貰ったにも関わらず色々作り過ぎてしまった。だからなんで私はこうやらかしてしまうのだろう‥。
仕方ないと思いつつ、夕方庭の草花の水やりを終えてから部屋へ戻ろうとすると、丁度ナキルさんが帰ってきた。
「ナキルさん、お帰りなさい!」
「‥ただいま。その様子だと会えたようだな」
「はい!アシェルさんに会えました。まさにスーパーの帰りだったんです」
「それは良かったな」
「えーと、それでお肉を色々頂いた上におかずを私が作り過ぎて‥、夕飯を良かったらうちで食べませんか?」
どうかなぁと思いつつも提案すると、ナキルさんはちょっと目を丸くしてから、
「いいのか?」
と、遠慮がちに聞いてくれた。
「遊びに来ていいかって言ってたじゃないですか。あとアシェルさんから頂いたお肉の正体をちょっと知りたいというのもありますけど‥」
ちょっと最後はゴニョゴニョと小声になってしまう。
図々しいとは思ってるけど、お腹を壊したくないし‥。ナキルさんは、そんな私を見て小さく笑うと「着替えたらお邪魔してもいいか?」と提案してくれたので、ブンブンと頭を縦に振った。
ナキルさんが部屋に戻っていって、私もすぐに家に戻ってお肉や煮物を温め直す。
そういえば、この間はナキルさんに問答無用で天ぷら蕎麦をおばあちゃんが届けろ!って送り付けたけど、普段なにを食べているんだろう。魔王だし、ワイン?なんか大きなお肉?‥ダメだ、なんだか全然思い浮かばない。
ローテーブルにお皿とお箸、アシェルさんから貰ったお肉や煮物を置いたところでタイミング良く家の呼び鈴が鳴った。いいタイミングだなぁ〜と思いつつ部屋へ招き入れると、ちょっと緊張気味のナキルさんが白い紙袋を差し出した。
「‥これを」
「え?」
そっと手渡されたその中には、なにやら缶が入っている。
「俺の国のお茶だ。口に合えばいいが‥」
「ええ?!あ、ありがとうございます。かえって気を遣わせてしまってすみません」
ブラック企業で勤めて、何かしてもらうと申し訳なくなってしまう精神どうにかしたい。申し訳ない気持ちを押さえつけつつ、紙袋に入っているお茶の缶を出すと、白地に青い綺麗なアラベスクのような模様が描かれている。
「綺麗‥」
ずっと眺めていられるような綺麗な缶の蓋をちょっと開けて中を嗅ぐと、ふわりと甘くてどこか柑橘系の香りがする。
「匂いもすごく良いですね!!お茶飲むの楽しみです!!」
「それは良かった。黒キノコも隠し味で入っているらしい」
「‥黒キノコ」
キノコってあの、ダンボールから飛び出したウゴウゴ動いてたキノコ‥?
あのキノコ‥お茶に使われるのか‥。そうしてやっぱり確認って大事だなとしみじみと思った私なのであった。




