102号室のギルドの戦士。1
ナキルさんが早めに帰ってきてくれたお陰で、アシェルさんが風邪を引いていると知って急いで部屋へ向かった。確かに、どんどんアシェルさんの部屋に近くなる度に、ジリジリと暑い。
「もうちょっと服を薄着にしておくべきだったかな‥」
汗を拭って、手で顔を仰ぐけれど隣にいるナキルさんの顔が涼しげなのは魔王様だから??
アシェルさんの家の呼び鈴を二回鳴らすけれど、返事がない。
ナキルさんが涼しい顔をして、ドアノブを回すとまたもノー旋条だった‥。簡単に開いたドアに大丈夫なのかと思っていると、中は更に暑い!まるで蒸し風呂のようだ。
靴を脱いで中に入ると、ベッドの上で今にも溶け出しそうなアシェルさんがぐったりと横たわっている。
「アシェルさん!大丈夫‥じゃないですね。えっと、まずは冷やさないと」
といっても、氷枕なんて一瞬で溶けてしまいそうだ。
そっとアシェルさんの額に触れて、熱を確認しようとしたらナキルさんが私の手を止めた。
「火傷するぞ」
「そこまで?!!」
「勇者の孫だからな‥。熱を出すとパワーを抑制できなくなる」
「ナキルさんも‥ですか?」
ナキルさんも魔王の孫だからそういうのわかるのかと思って尋ねると静かに頷き、指をぱちっと鳴らすと部屋の空気がどんどんひんやりしてくる。
「熱を抑えたから、これで外への熱は収まるだろう」
「そ、そっか。良かった‥のか?ナキルさん、ちょっと氷枕とアイスを持ってくるのでアシェルさんを見ててもらっていいですか?」
「‥ああ」
「すぐ戻ります!!」
急いで家から氷枕と食べようと取っておいたアイスと、風邪薬を持ってアシェルさんの部屋へ駆け込んだ。と、アシェルさんの目がゆっくり開いた。
「ふみ‥?」
「多分疲れも出て、熱も出ちゃったんだと思います。薬を飲む前にアイスか雑炊だけでも食べますか?」
「アイスがいい‥」
「体は起こせます?」
「‥顔だけなら」
これは大分重症だ〜〜‥。
ルベリオさんが帰ってきたら回復薬を頼まないと。
タオルを借りて、少しだけ枕を高くしてアイスを食べさせるとアシェルさんがホッとしたように息を吐いた。
「ごめん‥。帰ってきた途端にこんな迷惑をかけて」
「何言ってるんですか、助け合うのが宿り木荘でしょう。これを食べたら薬が効くかわからないけど、とりあえず風邪薬を飲みましょう」
静かに頷いたアシェルさんに、心配になってしまう。
だっていつも明るくて元気いっぱいなのに、こんなに弱ってるんだもん‥。
「ふみ、ルベリオに連絡してくる」
「え」
ナキルさんが私に声をかけてくれてハッとした。
仕事から帰ってきたナキルさんに手伝わせてしまったのに、すっかり頭から飛んでいた‥。
「すみません、ナキルさんもお仕事帰りなのに」
これでは管理人失格ではないか‥。
と、ナキルさんが面白そうに笑った。
「いや、俺が熱で倒れたらこうやって看病してもらうから構わない」
「え」
「看病してくれないのか?」
「します!!アイスとゼリーとプリンのどれがいいか考えておいて下さい」
真面目にそう話したのに、ナキルさんは小さく笑った。もしかして果物の方がいいのだろうか‥。ルベリオさんに連絡をしてくると話したナキルさんは一旦外へ出て、シンと静かになった部屋で私はアシェルさんの額から流れる汗を拭った。
ルベリオさん、早く来てくれないかな‥と思っていると、ドタドタと足音が聞こえたかと思うと、ドアをバンと勢いよくシエさんが開けた。
「シエさん!??」
「いや〜、あちこちで歌ってたんだけど、今日帰って来たんだ!アシェルが熱出したって?」
なかなか帰ってこないな〜と心配してたけど、いきなり帰って来たな?!
驚いている私の方へドカドカとやってくると、相変わらず上半身裸にギターを抱えたシエさんが、突然ジャーン!!とギターをアシェルさんの枕元でかき鳴らすので慌てて止めた。
「え、ちょ、病人の前でそんな大声で‥」
「ふみちゃん、俺の歌は人を元気にするんだぜ?」
「そ、そういえば!!え、じゃあ熱を治すことも?」
「任せておきな!」
そういうと、ギターをかき鳴らし、
「熱を出し切っちまえば、すぐ治る〜〜。とりあえず楽になる〜〜〜」
と、大変気の抜けた歌を歌い始めると、アシェルさんの顔が穏やかになり、穏やかから‥なんだかどんどん緩んでいき、
「ちょ、ちょっと待って下さい!!なんか溶けてる!!絶対これ溶けてます!!!」
慌ててシエさんのギターを止めた時には、アシェルさんが溶けたアイスのように体がスライムのようになっていて‥。私はもう悲鳴を上げるほかなかった‥。




