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異世界の住人しかいないアパートの管理人をしています。  作者: 月嶋のん


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101号室の魔王様。


ずっと働いていて休んだところを見たことがないという話を聞いて、半ば無理矢理休日を取らせてしまったが、聞けば20歳で王位継承してから、6年間1日も休んだ事がないと聞いて倒れそうになった。



そりゃ急に休んだら罪悪感を感じるね。

でも休まないとダメだから!!



そんな訳で一緒に昼間からアイスを食べたいという魔王なのに細やか過ぎるその願いを叶えるべく、色々な味を楽しめるアイス屋さんへ連れていった。


ダブルのアイスを頼んで、陽気もいいので一緒に公園でアイスを食べたけれど、そよ風に揺れる前髪から見える金の瞳が穏やかで、それを見られて嬉しかった。



「美味しいですか?」

「美味しい‥。また食べたい」

「また一緒に食べましょうよ。季節によって味が変わるんですよ」

「そうなのか?」

「‥ナキルさん、街へあまり行かないってアシェルさんが言ってましたけど、いつもどこまで買い物に?」



私が尋ねると、ナキルさんは少し考えて、「コンビニ?」とポツリと呟いた。

コンビニってアパートから徒歩2分ですね。全然出かけてないですね。


「ナキルさん、全然出かけてないじゃないですか」

「‥タキに誘われてはいたが、仕事が忙しくて」

「仕事って何をしてるんですか?」


個人的に魔王様って椅子に座って踏ん反り返っているイメージしかないんだけど‥。


「土地の浄化や、公共の建物に掛かる費用の予算案を立てたり、魔族同士の諍いもあるからそれの仲介や折衷案、他国とのやり取りもある」


「滅茶苦茶忙しい‥」

「大分、各部署に振り分けたがまだまだだな‥」


そりゃ忙しいはずだよ‥、フル稼働じゃないか。

確かにそれでは人に甘えたくもなるな。



「お昼は一緒にお好み焼きでも食べましょうか」

「お好み焼き?」

「皆が遊びに来た時にあったら楽しいかなぁって思って、ホットプレートを買っちゃったんですよ。それがあればアイス屋さんの横にあったクレープとかパンケーキもできるし、向かいのお店にあった餃子を沢山焼けるんです」



私の言葉にナキルさんの目がキラキラ光って、「すごいな‥」としみじみと呟く姿が、成人男性なのに幼い子のような反応で、あまりの可愛さに胸がきゅうっと痛くなる。うう、魔王様なのに可愛い。できれば朝みたいに、私の耳元で甘く囁くナキルさんでなく、こっちがいい。あっちのナキルさんは心臓に負担が大き過ぎる。


食べ終わったアイスのカップを一緒にゴミ箱に片付けて、



「じゃあナキルさんは、今日はこれからスーパーに行きましょう。あれですよね冷蔵庫には何もないってパターンでしょ?」

「冷蔵庫ならないが」

「ない!???」



衝撃の発言に目を丸くして、ナキルさんを見上げた。

じゃあ何を一体食べてたの?魔王様って食べるんだって皆言ってたけど、やっぱり本来は食べない生き物だったの?口をあんぐり開けると、ちょっと恥ずかしそうに「‥コンビニで買ったパンはあるぞ」と言うけれど、問題はそこじゃない。



「冷蔵庫から買うべき?いや、その前に三食食べる習慣をつけるべき?」



真剣な瞳でそう言うと、ナキルさんはまたも目を輝かせた。


「‥ふみは一緒にご飯を食べるのが好きなのか?」

「うーん、好きは好きですけど。その前に冷蔵庫がない人にちゃんと食べさせたいという?あ、でも嫌だったら‥」

「嫌じゃない。嬉しい」


ちょっと食い気味にナキルさんは話すと、少し口ごもりながら、



「‥俺と食べるのを、大概のやつは怖がる」



ポツリと寂しそうに呟いた。


怖がる?

ナキルさんを?魔王、だから‥?

不意に一人でご飯をもそもそ食べるナキルさんを想像したら、鼻の奥がツンとした。



「私はちっとも怖くないから、時間が合う時は一緒に食べましょ」

「‥いいのか?」

「毎日は無理ですけどね。でも冷蔵庫は買う方向で!」

「‥善処する」



早急に対策をして。

冷蔵庫は本当に必需品だと思うんだけど、よく生きてたな‥。そりゃおばあちゃんがおかずを持って突撃するはずだ。


そうしてお昼はお好み焼き、夕方はホットプレートを使ってチーズフォンデュをして一緒に食べていたら、当然のようにラピさんが酒瓶を持って突撃し、アシェルさんがホットプレートを見て「俺も欲しい!」と言いつつ謎の肉を焼き、ルベリオさんとキーランさんが匂いに釣られて顔を出し、シエさんが歌いながら現れたので、結局最後は皆で夕食会になってしまった。


でも、誰も食べたがらないと零したナキルさんが、ちょっと嬉しそうだったから、まぁいいかな?



ただ一方の魔王城。

突然のお休み宣言に城に激震が走ったそうだ。

翌日出勤したナキルさん、回復薬の入った瓶に、お見舞いの花束、名産品などをこれでもかと渡されたらしい。


黒い小鳥が夕方、私の所へ急いで手紙を届け、



『ドアを開けてくれ』



と書いてあるから、すわ何かあったのかと思ったけれど‥。

腕いっぱいに贈り物を抱えたナキルさんは、定期的な休みは周囲の人の心の安寧の為にも必要なものだとしみじみと実感したようだ。




休みは大事です。

本当に大事。

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