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異世界の住人しかいないアパートの管理人をしています。  作者: 月嶋のん


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203号室の住人。


王子の誕生日は無事に終わったそうで、ルベリオさんも少し肩の荷が下りたと話していた。



「キーランさんとラピさんが、王家に労働時間のデータを持って、しっかりと法律で労働基準法を制定した方がいいと進言してくれて‥、お陰で少しずつですが休みが取れそうです」



と、笑顔で話してくれたけど、昨日二人が家の前のベンチで、


「やっぱり仕事ばっかやってられないよね〜。素材づくりも忙しいし」

「わかります。僕もゲームで忙しいので労働時間は少なめがベストです」


と、話していたんだけど‥あの二人の会話はルベリオさんには黙っておこう。管理人として守秘義務も必要なはず。



ルベリオさんが心配していた騎士と魔術師の映像も王子にはとても良い刺激になったらしい。キーランさんが音楽にも力を入れたらしく迫力が増したと教えてくれた。


「ただ、今度は音楽家もいいなぁと言い出して‥」


と、ちょっと頭を悩ませていた。

まぁなんでも興味を持って取り組ませるのは育児に必要って、ニュースで言ってたし‥。いいのかもしれないよ?



とにもかくにも、朝の出勤前にこんな風に立ち話ができるほど時間に余裕が出来てなによりだ。皆を見送ってから、箒で黒いドア前の周りを綺麗に掃いたら掃除道具を片付ける。


と、ベンチの上に黒い小鳥がチョンと座っていた。


「あ、ナキルさんにお手紙?」


黒い小鳥は「チュン!」と返事のように鳴いた。

魔王様の為にお仕事して偉いねぇ。ちょっとだけ指先で頭を撫でてから部屋から一筆箋を持ってきて、ベンチに座って手紙になんと書くかちょっと迷う。



ナキルさんは休みを取って一緒に遊ぶか、休むか‥どちらかをしたいらしいけれど、やはり忙しいらしい。



確かに魔王様といえば代わりのいない存在だもんね。それでも私の世界では社長だってちゃんと休んでいるんだから、是非とも休みを獲得して欲しい。休日はどんな人にとっても大事な権利だ。


ふと先日分けっこできるアイスを買ってきたのを思い出した。



「えーと、帰ってきたら一緒にアイスを食べましょう。で、いいかな?」



魔族のトップオブトップ。

王様のような存在に今更だけどこんな手紙を送っていいのだろうかと思ったけれど、すでに出会った初日に天ぷら蕎麦を届けさせた不敬の極みをしているので今更だろう。それに手紙を嬉しいって言ってくれたし。そう思い直して、小さく手紙を折り畳み、今か今かと小さく体を揺らしている黒い小鳥にそっと渡す。


小さなくちばしでパクッと咥えて早速空へ飛んでいった小鳥ちゃん‥。


「もうちょっと撫でたかった‥」


ちょっとつれない所も可愛いけど。

ベンチから立ち上がって、草花の植えてあるコーナーの草むしりでもしようかなと思っていると、すぐに黒い小鳥が戻ってきた。



「あれ?!どうしたの?」



手を差し出すと私の手の上に乗って、私が書いた手紙をそっと置くと心なしかムスッとした顔をしている。え、そんな顔もするの?可愛いな!!


しかし小鳥にとっては大変由々しき事態らしい。

まるで「ちょっと待っていろ」とばかりに、キリッとした瞳で私を見てからまたどこかへ飛んでいってしまった‥。



「‥何かあったのかな?」



これはナキルさんに相談した方がいいな。

なにせ手紙を面と向かって嬉しかったって話してたし‥。ポケットに手紙を仕舞って、夕方話をしようと思っていると、



ギュアーーーーーーン!!!!!



突然アパート中にギターか何かをかき鳴らす音が聞こえて、目を丸くした。


え?

どこから音が?

っていうか、ご近所迷惑になるんだけど、まさかうちからじゃない‥よね?


そう思った瞬間、黒いドアが勢いよく開き、



上半身裸で顔と背中、胸からへそ下までガッツリとタトゥーがあり、耳から上の金髪を逆立て、気持ち良さそうにギターをかき鳴らす若い男性が出てきて‥、あまりの衝撃に呆然と立ち尽くした。



まさかの騒音の原因がうちだった‥。



気持ちよさそうにギターの演奏を終えたお兄さんは、ちょっと吊り上がった目で私を見てニコッと笑った。



「よ!!演奏どうだった?」

「え、あ、あの‥」



その前に貴方はどなたでしょう?

そう聞こうとした途端、私の目の前が真っ黒になって、目をぱちくりした。



「‥‥近所迷惑だ」



低い、圧のある声に真っ黒いそれがナキルさんの背中で、しかも大きな手でお兄さんの顔面をアイアンクローしているのに気が付いて、私は慌てて止めた。


「お、落ち着いてナキルさん!というか、この人‥」

「‥ここの住人だ」

「え?」


パッとナキルさんが手を離すと、つり目のお兄さんはニコッと笑って、



「どーも!シエ・ドリファンでーす!!」



そう言ってまたギターをジャーンと鳴らすと、黒い小鳥がシエさんの頭をくちばしで突いた。あ、ナキルさんの所へ行ってたのね‥。




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