103号室の住人。4
魔術で使う黒キノコを1ヶ月も掛けて、部屋に洞窟を魔術で繋げて育てていたラピさん。
その努力、とても素晴らしいと思うけれど、方向性が若干違うような‥。
とはいえ、ようやく私は三人目の住人に出会う事ができた。
黒キノコはこれ以上失う訳にはいかない!と、ラピさん自ら魔術で作った箱に厳重に仕舞われた。これなら出ていかないと豪語していたが大丈夫だろうか‥。ナキルさん曰く「酒さえ飲んでいなければ大丈夫だ」と言ってたけど、さっきの日本酒はノーカンでいいのかな。
とにもかくにも、迷惑料がわりに黒キノコをゲットしたので、何故か我が家で飲み会が開かれる事になった。‥今度、お皿を多めに買っておこうかなと思いつつ、私は急いで家の中を綺麗にしてお皿やお箸を用意すると、呼び鈴が鳴った。は、早くないかい?
ドアを開けると、ラフな格好に着替えたナキルさんが立っていた。
今日はグレーのシャツに細身の黒いパンツ姿で、幾分魔王様の雰囲気が引っ込んだ代わりに格好いいが増している。
「ラピはすぐ飲み出すから、早めに来たんだが大丈夫だったか?」
「大丈夫です。配慮、助かります!」
さっきのように腰に抱きつかれたら、どうすればいいか迷っちゃうし。
ナキルさんに早速家に上がって貰ったその時、ジジ‥と音が鳴ったかと思うと、パツンと電気が消えた。
「え?!」
そうして、ゆらりと暗い玄関に白い影が見えて‥、
「わぁあああ!!!」
叫んだ拍子にナキルさんの腕に飛びつくと、ナキルさんがその白い影をまじまじと見て、キッチンの小窓に目を向けた。
「な、ナキルさん?」
私の腕を優しくポンポンと叩くと、そのまま一緒にキッチンの小窓まで歩くと、朝拾った光る石を取って手に握ると、何かを呟いた。その途端、パッと電気が点いた。
「え、今のは‥」
「これはラピの結界石だな。大方失敗したか、酔っ払って作っておいたのを放っておいたんだろ」
「じゃあ、もしかして夕方のも‥」
「恐らくそうだろうな。全くあいつはろくな事をしないな」
お化けじゃないなら良かった!!!
ホッと息を吐いて、上を向いた途端ナキルさんとぱちっと目が合って、ナキルさんの腕をがっしりと掴んでいる自分に気が付いた。
「すみません!!!洞窟の中でもご迷惑をお掛けしましたぁああ!!!」
慌てて飛び退いた私をナキルさんは可笑しそうに笑うと、とろっとした甘い瞳で私を見ると、
「ずっとくっ付いていてもいいぞ?」
「いえ!!それは無理です!!」
魔王様の提案に顔が赤くなっていく。
うううう、あれか?魅了の魔法とか使ってない?私の心臓がばくばく言ってるんだけど‥。恐ろしいわ、流石魔王様だわ。
すると、また家の呼び鈴が鳴ってドアを開けると、
大きな大皿にのったお肉と黒キノコのソテーだろうか‥。
美味しそうに湯気を立たせたそれを持っているアシェルさんと、美少年が大きな一升瓶を二本両脇に抱えて立っていた。犯罪臭がするなぁと思いつつ、家の中へ招きいれるとナキルさんがいつもの定位置に座っていた。
ラピさんは私の部屋を見回して、目を丸くする。
「タキの部屋と全然違うな!」
「‥おばあちゃん、どんな部屋だったんですか?」
「各地のお面とか鎧とか土産物を並べてたな」
「ああ〜‥」
うちへもよくわからないお土産を持って来てくれた時あったけど、あれはもしかして異世界からの物だったかもしれない‥。家にあった変な顔の人形とか。
「まぁまぁ、とりあえず飯にしようぜ!誰かさんのせいで夕飯遅くなったし!」
「‥うるさいな。はー、お酒飲もっと」
「「お前は今日は飲むな」」
ナキルさんとアシェルさんに即座に止められたラピさんは目を釣り上げ、
「僕は成年だって言ったろ!?」
「中年だ。中年」
「そうやって誤魔化そうとするな」
と、二人が即座に言ってナキルさんがお酒を取り上げ、アシェルさんがどこから取り出したのかジュースの入った瓶を取り出し、「今日はリンゴのジュースにしておけ」と並々とコップに注いで渡した。
「うう、黒キノコ‥」
「まぁまぁ、後でアシェルさんの作ってくれた赤ワインのリンゴのコンポートにアイスを添えてあげますから」
私がわかりやすく慰めると、ナキルさんが私をちらっと見て「俺もアイスがいい」と言うのでもちろんとばかりに頷いた。なにせ今回の一番の功労者ですし。
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