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103号室の住人。3


洞窟の中で黒キノコを育てていたというラピ君‥さん?

しかしその成長の為に使っていた光コケモモというものが、赤い竜‥サラマンダーの好物だったらしい。


大きな体が岩壁を突き破り、坂の下で蠢く黒キノコを見て「グルゥア!!」と鳴くと黄色の目が輝いた。ナキルさんがそれを見て、



「サラマンダーは黒キノコも好物だ」

「だめぇえええ!!!僕の素材!!!」



ピョンと坂の下へ降りると、どこから取り出したのか大きな白い袋に黒キノコをどんどん放り込んでいくラピさん。それを見たサラマンダーが「グァ!!」と威嚇しながら、大きな口を開いて負けじと黒キノコを飲み込んでいく。


「ど、どうしたらいいんでしょう‥」

「放っておいてもいいんだが‥」

「ラピさん、食べられちゃいません?!」


焦る私にアシェルさんが「サラマンダーの方が腹を下しそうだなぁ〜」と呑気に笑っている‥。



和やかなのか緊迫した空気なのかわからない中、ラピさんとサラマンダーから逃げようと黒キノコが光る池にぼちゃんと落ちた。その途端、黒キノコがまるで水を吸って大きく膨らむかのようにグングンと巨大化していって、皆で目を丸くした。



「キノコが大きく?!」

「え、なんで?こんな魔術かけた覚えは‥いや、あの時か?」



ラピさんが黒キノコを袋に突っ込みつつ呟くと、ナキルさんとアシェルさんが顔を見合わせ、


「すぐここを出て封印するぞ」

「それが一番だな」


二人の言葉にラピさんが驚愕の顔で見上げた。


「なんで?!!やっといい場所を見つけて、ここまで大きく育てられたのに!!」

「‥すみませんが、ご町内に魔物が迷い込むと近隣に迷惑が掛かるので‥」

「黒キノコあげるから!!」

「ダメです」


ラピさんは「最高級品の出来栄えなのに!!!」と叫ぶけど、またあのウゴウゴと動く黒キノコを掴むのは遠慮したいし、サラマンダーが出てきた日には私は逃げの一手しかない。


アシェルさんは「決まりだな!」というと、坂の下へ軽やかにジャンプして降りると黒キノコをこれでもかと袋に詰めたラピさんを担いだ。



「よーし戻るぞ」

「やめろ!離せ!このトラブルメーカー!!!」

「え〜、俺最近は何も起こしてないぞ?」



若干記憶の改ざんをされているような気もしたけれど、今は目の前では黒キノコ対サラマンダーという昔懐かしい怪獣映画みたいな絵面になっていてそれどころではない。


「ふみ戻るぞ」

「は、はい」


走って戻ろうと足を出口へ向けた途端、ヒョイッとナキルさんに抱きかかえられた。


「え?」


驚いて私を軽々と横抱きしたなキルさんを見つめると、面白そうに笑った。



「ちゃんと掴まってないと落ちるぞ」

「え」



そう言ったナキルさんが少しだけ腰を落とした瞬間、グンとジェットコースターに乗った時のような浮遊感とスピードに目を見開く。


ナキルさんと私は宙を浮いたかと思うと、上にある近くの岩を蹴り、上へ上へと、ポンポンとリズムを刻むように地面を蹴ってあっという間に出口に辿り着いてしまった‥。す、すごい‥、流石魔王様。それと同時にアシェルさんとラピさんも出口に飛んできた。


皆で洞窟を出ると、ナキルさんが私を下ろし、すっと息を吸って、手を洞窟に向けたかと思うと空中に白い時計のような文字が浮かび上がった。



『閉じよ』



ナキルさんがそういうと、白い時計のような文字がクルクルと動き、パチンと音がして一瞬で洞窟が消え、ラピさんの叫び声と共にただの部屋に戻った。



戻ったけれど、本が沢山並んでいる部屋の床には日本酒、ワイン、ビール、ウイスキーと酒瓶と空き缶がゴロゴロと落ちていて‥、私は目を見開いた。


「な、なにこれ‥」


アシェルさんがラピさんを下ろして、ジロッと睨む。


「ラピ!また酒瓶溜めてこんで‥!タキにもちゃんと片付けろって言われてただろ」

「うるさい!!!嗚呼〜〜〜〜僕のキノコ!!!!これだけしか採れなかった‥。1ヶ月も掛けたのに‥」


美少年がウゴウゴと蠢く黒キノコ達が入った白い大きな袋を見てさめざめと泣いていて、ちょっとシュールだ。アシェルさんが呆れたようにラピさんを見て、「それだけあれば十分だろ」と言うと、ラピさんがおもむろに床に置いてあった日本酒の瓶の蓋を開けると、勢いよく飲んだ。


「わわ、ダメですよ!!」


慌てて酒瓶を取り上げると、ラピさんが私の腰にギュッと抱きついた。



「うるさい!これでも成年だ!!それ返せよ!!」



そうだった成年だった‥。

でもビジュアル的には完全にアウトなんだけど、返すべきかと迷っていると、カツカツとナキルさんが私とラピさんの方へやってきたかと思うと、ベリッとラピさんを引き剥がし、白い袋から黒キノコを二本取り出すとアシェルさんに投げた。



「迷惑料として貰う。つまみを頼む」

「わかった!!ふみの家集合な!」



ラピさんが「僕も食べる!」と叫ぶと、アシェルさんが「もう一本追加な」と即座に袋から取った。あの構いませんけど、皆さん明日も仕事じゃないの?




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