第一話『どちらに行こうか』
故郷を追われた人々は、追われた先で何をするのだろうか?
悔し涙で大雨を降らせるのだろうか?
否。正解は「皆で火を囲んで舞い踊る」である。
キャンプファイヤーのパチッパチッと言う音につられて、ネイはオレの膝の上で静かに目を閉じた。カルドスは横で葡萄酒を嗜んでいる。
残念というか当たり前だが、ハミルは未だベッドの上だ。ザカリア曰く、数日は予断を許さない程に全身を損傷しているらしい。
「これはこれは・・・膝枕とは羨ましいのう・・・・」
「リンネ・・・!!」
そういえば復活後にリンネにまだ会っていなかった。
どこか上機嫌なリンネは前とは違い、人類の衣装に袖を通していた。
全身を黒く包み、その上にまた漆黒のローブを羽織っている。
そしてその紫色の長髪の上に独特なセンスの帽子を被っている。鍔が広く、ピンクのリボンが特徴的な、黒いとんがり帽子。
大魔女と呼ばれていた頃の彼女を連想させるような格好だった。
「お主にはこの姿の方が馴染み深いと思ってな、アーノルド」
「ああ、可愛いよ」
オレの感想に、リンネは呆れた様な顔を向けてくる。
褒めない方が良かったのか?
「なんじゃそれだけか? もっとロマンチックな言葉は出ないのか?」
「う・・・そんな事言わないでくれよ」
「ほら! もっと文学的にじゃ!!」
「アメみたいな事言うなぁ・・・」
オレの困り顔にリンネは楽しそうにしている。
こういうやりとりをしていると昔を思い出す。
「ハァ〜もう良いわ。そんな口下手だと女を口説き落とせんぞ」
「でもお前オレに惚れてんじゃん、しかも・・・」
このままじゃいけないと思い反論する。
しかしリンネの伏目がちな涙目に、オレは黙る事を余儀なくされた。
「アーノルド・・・お主は乙女の弱みにつけ込むような男だったかの・・・?」
やり取りを一部始終見ていたのか、カルドスの視線が刺さる。
オレに「最低だな」と言わんばかりの表情だ。
こうなってしまっては、悪いのはオレだ。
「わかったよ・・・悪かったよ。ごめんよ、リンネ」
何に対して謝っているかも分からないが、とりあえず頭を下げておこう。
謝罪を聞き入れたリンネはすぐにケロッとし、オレの膝をネイから掻っ攫った。
こりゃまた一本取られたな・・・
天を仰ぐオレにカルドスは葡萄酒を分けてくれた。同情の眼差しだ。
「しかしあれが嘘泣きって気づかないものかね?」
呆れたようにカルドスが言い放つ。
手玉に取られたオレを嘲笑しているのだろうか。
「分からないだろ、普通」
「いや・・・呼吸のリズム、涙の量、喋り方にも変化なかったし、大体はわかるだろ?」
「カルドス・・・お前・・・・」
『かなり気持ち悪い』
そんな言葉を成人したての若者に投げるなんて悍ましい事は、オレには出来なかった。




