表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
アイシュム(調停委員会)
97/239

第一話『どちらに行こうか』

 故郷を追われた人々は、追われた先で何をするのだろうか?


 悔し涙で大雨を降らせるのだろうか?


 否。正解は「皆で火を囲んで舞い踊る」である。



 キャンプファイヤーのパチッパチッと言う音につられて、ネイはオレの膝の上で静かに目を閉じた。カルドスは横で葡萄酒を嗜んでいる。

 残念というか当たり前だが、ハミルは未だベッドの上だ。ザカリア曰く、数日は予断を許さない程に全身を損傷しているらしい。


「これはこれは・・・膝枕とは羨ましいのう・・・・」


「リンネ・・・!!」


そういえば復活後にリンネにまだ会っていなかった。


 どこか上機嫌なリンネは前とは違い、人類の衣装に袖を通していた。

 全身を黒く包み、その上にまた漆黒のローブを羽織っている。

 そしてその紫色の長髪の上に独特なセンスの帽子を被っている。鍔が広く、ピンクのリボンが特徴的な、黒いとんがり帽子。 


 大魔女と呼ばれていた頃の彼女を連想させるような格好だった。


「お主にはこの姿の方が馴染み深いと思ってな、アーノルド」


「ああ、可愛いよ」


 オレの感想に、リンネは呆れた様な顔を向けてくる。

 

 褒めない方が良かったのか?


「なんじゃそれだけか? もっとロマンチックな言葉は出ないのか?」


「う・・・そんな事言わないでくれよ」


「ほら! もっと文学的にじゃ!!」


「アメみたいな事言うなぁ・・・」


 オレの困り顔にリンネは楽しそうにしている。

 こういうやりとりをしていると昔を思い出す。


「ハァ〜もう良いわ。そんな口下手だと女を口説き落とせんぞ」


「でもお前オレに惚れてんじゃん、しかも・・・」


 このままじゃいけないと思い反論する。

 しかしリンネの伏目がちな涙目に、オレは黙る事を余儀なくされた。


「アーノルド・・・お主は乙女の弱みにつけ込むような男だったかの・・・?」


 やり取りを一部始終見ていたのか、カルドスの視線が刺さる。

 オレに「最低だな」と言わんばかりの表情だ。


 こうなってしまっては、悪いのはオレだ。


「わかったよ・・・悪かったよ。ごめんよ、リンネ」


 何に対して謝っているかも分からないが、とりあえず頭を下げておこう。


 謝罪を聞き入れたリンネはすぐにケロッとし、オレの膝をネイから掻っ攫った。

 

 こりゃまた一本取られたな・・・


 天を仰ぐオレにカルドスは葡萄酒を分けてくれた。同情の眼差しだ。


「しかしあれが嘘泣きって気づかないものかね?」


 呆れたようにカルドスが言い放つ。

 手玉に取られたオレを嘲笑しているのだろうか。


「分からないだろ、普通」


「いや・・・呼吸のリズム、涙の量、喋り方にも変化なかったし、大体はわかるだろ?」


「カルドス・・・お前・・・・」


 『かなり気持ち悪い』

 そんな言葉を成人したての若者に投げるなんて悍ましい事は、オレには出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ