第三十一話『守り方』
ボンヤリと視界に世界の輪郭が戻っていく。
復活の時のようだ。
今回はどこに復活するのだろうか。
おそらく全裸だから人目のつくところはやめて欲しいのだが・・・・
聴覚がハッキリしてくる。
同時にどよめきの声が耳に入って来た。
これはまさか・・・・!!
全ての五感が戻り、オレの肉体が現世へと舞い戻る。
目の前に映る光景は、それはそれは恐ろしい物だった。
大量の男共がにやけづらを浮かべ、レディー達は目を覆いながら頬を紅潮させている。
そして皆、例外なくオレの下腹部に視線を向けている。
「・・・・アン。服を着てくれ・・・」
包帯を頭に巻いているネイがオレに服を差し出す。気まずそうな顔をしているが、彼女の視線が全てを物語る。
何というか・・・最悪だ。
恥ずかしい、死にたい。でも死ねない。
ー
切り株の上に座り、恥ずかしさに打ちひしがれていた。
オレが復活したのは、ホンレスから少し北にある村。ホンレス壊滅を受けて発生した大量の難民を一時的に受け入れてくれているらしい。
襲撃から四日後、怪我人としてネイが輸送された先がここだったようだ。そしてオレもここに復活した。全裸で。
道行く人々はオレの顔を見てニヤつく。噂がもう広まっているようだ。呑気なものだ。
まぁ・・・重苦しい雰囲気よりかはマシなのかな・・・・?
そう自分を励ましていると、いつの間にか謎の男がオレの隣に立っていた。
驚くほどに影の薄い男だ。遠くからでも目立ちそうな、ひょっとこの仮面を被っているというのに。
「まあ、サイズは重要じゃないと思うぞ、俺は・・・」
ひょっとこの謎のフォローが入る。
いや、馬鹿にされされてるされてるのか?
仮面の下で男は笑いを堪えている。
よし、こいつ後でしばく!!
「いや、小さくないし。平均的、なんならご立派様だろうが!!」
「俺はナニとは言ってないぞ」
仮面の表情も相まって、本当に殴りたくなってきた。
しかしグッと堪えてやる事にした。一応はネイの命の恩人だからだ。
「・・・・ありがとな。ネイの怪我良くなってたよ」
「ああ・・・もう少したら抜糸して完全に元通りだ」
ひょっとこの声が少し浮つく。嬉しそうだ。
案外いい奴なのかもしれないな。
「お前・・・本当に医者なんだな・・・」
「逆に何だと思ってたんだよ、どっからどう見てもハンサムなお医者様だろうが」
全然そうは見えない。
喉元までこの言葉が来たが、飲み込むことにした。
というか顔見えてないし・・・・
「お前、名前は?」
「ザカリアだ」
「そうか、よろしくザカリア。オレは・・・」
「知ってる、アーノルドだろ?」
オレを遮りザカリアは言った。
「なんで知ってるんだ?」
「有名だぜ、『露出魔』アーノルド、ってな。診療所にいる兵士がお前の事を話してたぜ」
「な・・・!!」
ザカリアの情報に言葉を失う。
オレは住民を逃す時間稼ぎをして、しかも街に残って犯罪者達と戦ってたんだぞ。
復活の時に全裸になるのは仕方がないというのに。
言うなればあれは「名誉の戦死」ならぬ「名誉の全裸」だ。
ここまで理不尽な事があっていいのだろうか?
「ザカリア。その兵士どこにいる? 骨をへし折ってやる」
「医者としては止めるべきだが、楽しそうだから良いぞ・・・・あの煙突の家の横だ」
「よし、血祭りタイムだ!!」
ザカリアの指した方向へと急ぐ。
ニヤニヤしながらザカリアも後ろに着いて来てる。
しかし数歩進む度に彼の存在を見失う。本当に影が薄い男だ。




