第三十話『合唱軍』
オレを中心に回る炎の円環が、ガイアの肉体を捉えて引き摺り回す。
悲鳴をあげながら燃え上がるガイアから焦げた肉の匂いがする。
「エイドス!! 頼む!!」
身体中に包帯をまいた青年が、同じく顔を包帯でぐるぐる巻きにされた男に向かって叫ぶ。
顔包帯は叫びを受けて、目周りの包帯を緩めた。
瞬間。魔術は霧散し、ガイアの身体が円環から解放される。
そうか・・・・アイツが・・・!!
やっと見つけた魔術をキャンセルさせるスキルの保持者。
姿が見えない間は脅威だが、ここまで近いとこっちのもんだ。
『身体強化』
どうやら奴のスキルが作用されるのは体外だけ、体内に魔力を循環させて身体を強化するのを止める事は出来ないようだ。
顔包帯との間合いを詰める。
腕を掴んで思いっきり地面に叩きつける。
馬乗りになって、顔面に拳を一発、二発とめり込ませる。
剣を失くしたのがイタイ。
「離しなさーい!!」
もう一人の包帯に飛び蹴りされた。
しかしとてつもなく響かない蹴りだ。足を掴んでぶん投げてやった。
それにしてもなんだ今の黒髪の男・・・なんと言うか・・・気味が悪い。
まるで人間でないような・・・まず上級魔術を放った魔術師に間髪入れずに飛び蹴りできる度胸が凄い。
「死ぬガロ!!」
背後に立つ少女がオレに向けて炎をぶっ放す。
熱いのは嫌なので避けるが、まさか仲間もろともとは・・・
そう思っているとメガネの男が火の中へその身を投じる。
命からがら顔包帯を火の中から助け出した。
「何をやってるんです?? エイドスだけは死なすなと言ったでしょう!!」
メガネの怒号に少女はしゅんとする。
なんだろう・・・こいつら思ったより弱いな・・・・そして緊張感が欠如している。
こいつらがホンレスを壊滅させた奴だとは到底思えなかった。
所詮は数と作戦でしか有利を取れない弱小か・・・・
魔術は・・・戻ったな。
さっさと終わらせるか。
『水よ それは万物の源 造形の泉 流動する魂の器 豊潤なる流水よ 巡り 囲み 纏わせ 守れ 水纏』
大量の水が身体の周り、そして周囲に顕現する。
オレに炎を放った少女は押し流されるも、突如身体が発光しドラゴンの姿へと変貌した。
どうやらリンネと同じような人化できる竜だったらしい。
これで前代未聞が2体目だ。
「全員かかれぇー!! でも一人も欠けないでくださいね!!」
メガネの指示にそれぞれが魔術、剣で応戦する。
飛びかかってきた竜を水で造形した手で掴む。
水のシールドで身を守りながら、ガイア、メガネ、黒髪を水の槍で貫く。
魔術キャンセルの奴がいつの間にか消えていたが、どうやらスキルを使えないほど昏倒しているようだ。ヨルダの姿も見えない。
「おいおいおい・・・『水纏』ってこんな滅茶苦茶な技だったけ?」
「いいえ。上級魔術と言っても防御寄りの魔術だったはず・・・あんな攻撃性は無いはずなんですけどね・・・」
メガネと黒髪がぼやく。
概ねメガネの見解は間違っていない。
『水纏』
大量の水を顕現した後、それら全てに満遍なく高密度の魔力を流して扱う魔術。
本来の使い方としては魔術の鎧を纏わせるか、超質量の水をぶつけるのが基本だ。
しかし水魔術だけに洗練すれば、自由度は跳ね上がる。
魔力の流し方次第で水は形を変え、速度を変え、まるで手足を扱うような微細な動きを可能にする。
顕現させられる水の量と技量したいでは、全ての水魔術を再現できる上級魔術だ。
本当は色んな搦め手用の魔術だが、今回はこうだな・・・・
水の腕を伸ばし目に入る全ての敵を掴んで、近くに寄せる。
『水纏』を解除して、オレはありったけの魔力を手元に集めた。
食らってみろ、オレの最高火力・・・・・




