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アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
デパトス編
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第二十四話『僕がラスボスです』(2)

 リンネにとって、シーベルトの話は聞くに値しなかった。


「入らんと言っておろう。そもそも何で世界平和のために魔物大侵攻(スタンピード)を起こす必要がある」


「え〜入ってくれないんですか!? リンネさんのケチ!いけず!!」


 シーベルトは頬を膨らませる。


 相変わらず呑気というか、のんびりしているというか・・・彼に欠如しているのは緊張感だと言うことにリンネは気づいた。


 その時。突如としてリンネはアーノルドに呼ばれている気がした。


 すぐに向かおうと竜に戻ろうと思うも、シーベルトが慌ててリンネを止める。


「ちょっと、ちょっと待って! もう組織に入らなくて良いから、せめて僕達の計画の邪魔だけしないでもらって良いですか!?」


 この期に及んで嘆願されるとは、思ってもいなかった。

 しかしこの異様な雰囲気の男を野放しにしておくのも、リンネにとっては気がかりだった。


 殺してしまおう。


 そう思ったリンネの行動は早かった。


大円火(エンドサークル)


 リンネの周りを5本の炎の輪が目まぐるしく回る。輪はそれぞれ無数の火の玉から構成されて、不規則に拡大縮小を繰り返して回る。


 火系統上級魔術『大円火エンドサークル


 リンネが約1000年前に発明した史上初めての上級魔術。

 魔術が発展した現代においても、最も恐ろしい魔術と言われる火系統の大規模殲滅魔術である。


 シーベルトの脇腹に炎の輪が触れる。

 輪を構成する炎の球は高熱だが、肉をそのまま抉りとったりはしない。

 逆に高音で溶けた皮膚が炎の球に張り付き、触れてしまった物質は炙られながら輪の回転に沿って回され続ける。


 皮膚がただれて千切れるその時まで、地面に叩きつけられ、周りの物体に叩きつけられ、時には仲間を巻き込みながら焼かれ回り続ける。


 シーベルトの脇腹の肉が遠心力によって千切れるその瞬間まで、身体を引き摺り回された。


 半身を焼かれながら地面に放り投げられたシーベルトは動かない。四肢はひしゃげ、頭から血と少しばか りの脳みそを漏らしている。腹からも大量に出血している。


 死んだか・・・? いや・・・


 リンネはシーベルトのか細い息を確認する。


大円火エンドサークル』は強力ではあるが殺すための魔術ではない。それを踏まえてもこのシーベルトという男はしぶとかった。


 リンネはシーベルトの頭をすりつぶす。


 すりつぶしたはずだった。


 アーノルドの所に向かおうとしたその時、背後にまたあの異様な気配を感じ取る。


「嘘じゃろ・・・」


 シーベルトは「イテテ」と頭をかきながら、何事も無かったかのように立ち上がる。


「も〜う 酷いじゃないですか! いきなり殺すなんて!!」


「何で生きておる・・・? スキルか?」


「その話はまたおいおい。とりあえず行かないで欲しいんですけど・・・」


「答えろ!!」


 リンネの叫びにシーベルトは眉間に皺を寄せる。

 初めてシーベルトが負の表情を見せた。


「だからそんなに急かさないで下さいよ・・・もっとノンビリ生きましょ。ノンビーリ・・・ね!」


 シーベルトはそのまま文句を続ける。


「はぁ・・・だから嫌だったんですよ・・・本当はね、僕ラスボスなんですよ。組織のボス、トップ、わかります? 本当はこんな序盤に出てくるような奴じゃないんですよ」


「・・・・・」


「ホンレス陥落だって僕なしでやるつもりだったのに、貴方とアーノルドっていう不穏因子(イレギュラー)が出てくるから・・・この責任どうやってとるんですか?」


「・・・それは悪かったの。でもワシはもう行かないといけないのじゃ、アーノルドが呼んでおる」


「行かせませんよ。ここでのんびりしていて下さい。僕達が世界を平らにするその時まで・・・」


 シーベルトの言葉を無視してリンネは竜の姿へと変貌する。

 しかし飛び立てない。


 2匹のドラゴンがリンネの行く手を阻む。


『どけ!食い殺すぞ!!』


『すいませんが・・・シーベルトさんの頼みなので・・・』


 青いドラゴンが答える。知性がある・・・竜だ。


「悪いね2人とも・・・あれ2匹ともって言った方が良いかな?」


「それでいつまでコイツを止めとけば良いんだ?」


緑色の竜がシーベルトと会話をする。竜の姿のままで、だ。


「う〜ん とりあえず出来る限りで頼むよ」


「あなたも人使いが荒い・・・いや竜使いですね・・・」


 青い竜の軽口にシーベルトは笑う。


 森の奥から赤色の竜が突如として現れ、シーベルトを咥えて飛び去った。


「それではリンネさ〜ん。 また会いましょうね〜」


 そう叫ぶシーベルトを咥える赤竜は、地平線だけが続く空間の中に消えていった。


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