第二十三話『魔物大侵攻』(3)
アースドラゴンのブレスを浴びながら、辛うじて傍にあった死体で身を隠す。
危ねー!! 気づくのが遅かったら身体が消し飛んでいた。
ブレスが直撃しても生きているオレを見て、ドラゴンは首をかしげる。
続け様に第二、第三のブレスと爪の攻撃が振り下ろされる。
今のオレは魔術が使えない。
おそらく敵のスキルによって魔力を霧散させられている。
故に魔力を体の周りに固めて創るシールドも解かれてしまった。
今のオレは完全に生身の状態だ。
それでは何故ブレスを受けても消し飛ばないのか・・・それはスキルのもう一つの副次効果によるものだ。
魔力のシールドは体外の魔力の存在を固定することによって作られているが、今のオレは体内の細胞一つ一つの存在を固定している。
オレはこれを体内シールドと呼んでいる。
オレの絶対防御は魔力シールドと体内シールドの二つによって構成される。
しかしそれぞれに大きな欠点がある。
魔力シールドは時間制限と冷却時間がある。そして魔力を固定するといっても、他人の魔力を当て続けられると削られてしまう。
体内シールドには時間制限こそないが、使用中は常に意識しないといけない。例えるならば、常に尻の穴に力を入れて戦う感覚に近い。
そしてこの体内シールド。傷はつかないが感覚はある。故に攻撃を受けるとはちゃめちゃに痛いのだ。
長ったらしい説明もほどほどに、オレは落ちている剣を拾い上げドラゴンに特攻する。
魔術が使えないのならばこれしか方法がない。不死身特有の根性勝負だ。
ドラゴンの口内に身体をねじ込み、剣で滅多刺しにする。
負けじと抵抗するドラゴンもオレの身体に目一杯の力で牙を食い込ませる。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
叫びながら刺して刺して刺し続ける。
するとドラゴンが喉奥で奇妙な音を鳴らし始める。
咆哮でもなく、唸り声でもない。
どこか規則的なドラゴンの音は、歌のようにも聞こえた。
瞬間。大気中の魔素が一点に集まる感覚がする。
同時に魔術が使えるようになっていることに気づく。
ドラゴンの口内でデカいのをぶちかまそうとしたその時、気づくとオレの身体は遥か上空に吹っ飛んでいた。
へ・・・・???
空気を切り裂きながら空中を落下していく。上空から見たホンレスの街並みから改めて文明の進化を感じた。
少し下で竜騎士とドラゴン達がやり合っている。
ドラゴンの口元に魔術陣が浮かび上がり、大量の炎の矢が竜騎士を追っていく。
竜騎士は避けるので精一杯だ。
まさかこのドラゴン達・・・知性があって魔術が使える竜なのか?
もしかしてオレを上空まで打ち上げたのも、アースドラゴンの風魔術か?
もし仮にこのドラゴン全体が竜だとしたら、危険度が跳ね上がるぞ。
オレの考えを裏付けるように竜達は魔術を街に向かって放ち始める。
壁上にいた砲撃体が一瞬にして壊滅させられる。
やばい・・・早くハミルに伝えないと・・・というかオレどこに向かって落ちてるんだ?
石畳に頭から突き刺さる。
クラクラしながら立ち上がると目の前に混沌とした光景が広がっていた。
街の外で魔物達が暴れ回っているのを知ってか知らずか、人々は壁内で争い、街に火をつけて回っている。
もうオレの頭で理解できる限界を超えていた。
魔物は喋るし、魔術も銃も使うし。
魔術を扱える竜が群れて攻撃してくるし。
ハミルはどこかに行ったし。
ガイアとホーネットは意味深な発言をしてオレを封印しようとしてきたし。
挙げ句の果てには街の住人は街に火を付けて回ってるし。
無理だな・・・・この状態のホンレスを救うのは神でも出来ないだろう。勇者ならもしかするかもしれないが・・・・
逃げよう。
そう思った。
こんな所で道草を食ってる場合じゃないのだ。
でも・・・ネイはどうしよう? まだ旅についてくるかの返事をもらってないしな・・・
『赤い糸』のみんなも気になる。せめて彼女らの無事くらいは確認したい。
とりあえず軍基地に向かおう。ネイも目を覚ましているかもしれない。
ただどうやって街から逃げようか・・・飛行魔術はまだ習得出来てないんだよな・・・
悩んでいると、頭の片隅に旧友の顔が浮かぶ。
今世では竜になれるリンネ様がいるじゃないか!!
こんな状況に呼び出すのは悪いが、いつでも頼れと言われている。
「リンネさーん!! 助けてくださーい!!」
しかし誰も来ない。
オレの叫び声は雲一つない空に反射するだけだった。
反射した声は呼んでいない竜達の魔術を誘発する。
あれ・・・おかしいな・・・あいつならオレが叫ぶだけでいつでも飛んでくるはずなのに・・・・




