第二十三話『魔物大侵攻』
昔、とある学者は言った。
魔術は祈りであると。
詠唱、魔術陣、魔力量、この3つの要素が程よく合致した時、人は奇跡を生む。
魔術とは人類の願望を物理法則に乗っ取って起こす現象だ。
またある学者が言った。
もし仮に魔術を発動させる3つの要素を扱えるのなら、人でなくとも魔術を扱えるのではないかと。
その説は立証された。
長い年月を経て人間と並ぶ知能を得たドラゴン、竜は魔術を扱うことが確認された。彼等の魔術は人類のものとは異なり、彼等独自の言語と解釈で構成される。
魔術に必要なのは高度な知能と魔力の知覚だと仮定された。奇跡を願うのにもある程度の頭脳が必要なのだ。
そして今現在、目の前でまた別の生物が魔術を扱う所を目撃した。
彼らは魔物だった。唯一違うのは彼らの振る舞いと知能だ。
人語を理解し、武器を理解し、二足歩行で歩く彼等は、人類への反抗心からか魔術を理解するまでになっていた。
さて。毛むくじゃらの格好の人語を解す彼らを、果たして魔物と呼んでも良いのだろうか?
世界への祈りと奇跡を願う術を理解した彼らを殺したオレは、魔物討伐の英雄と崇められるのだろうか?
ー
魔人から放たれた雷撃が兵士達を貫く。
『乱風』で乱れる事を知らない一閃は、いとも簡単に人類を無力化する。
辛うじて身を交わしたハミルが、魔人達の腕を切り落とす。
断末魔をあげながら崩れ落ちる魔人達の最後の叫びは、獣の咆哮にも人の悲痛な叫びにも聞こえた。
ハミルは金の鷲の彫刻に叫ぶ。
「各員に告ぐ! 魔術の使用を確認!! 敵は魔術を使う!!」
ハミルの発言を裏付けるかのように、無数の魔術が戦場に飛び交う。
つい先ほどまでとは違い、上空がカラフルに埋め尽くされていく。
まさか、魔術も使うなんて・・・いよいよこいつら『人』になってるじゃないか!!
オレも負けじと魔術戦に応じる。
ハミル達が近くにいることで爆発をさせられない。
持ち前の反射神経で冒険者と兵士達は魔術の中を掻い潜る。
否。避けられた者だけが立っている。
魔人達が魔術を扱う、この予想だにしない現象により人類の勢いは弱まってきた。
しかしいくら魔人達が綿密な計画を練ろうと、魔術の事に関しては人類に一日の長があった。
デパトス軍の魔導隊に勝てる魔導隊など人類の軍にも存在しない。
こいつら意外と弱い。魔術と言っても初級しか使えないみたいだし・・・
徐々に徐々に魔人達の数と人類の数が逆転していく。
魔人達の列がホンレスの壁から遠ざかっていく。
後少しで魔人共の隊列を崩せる・・・!!
そう思った時、それは現れた。
魔人達の最後尾から少し後ろ。空と大地を分ける一本の線しかない空間から、1匹の大型生物が現れた。
蒼い鱗と翼を持つその生物は、地上の争いを見下すように悠々と空を飛ぶ。
その頭はホンレスの方を向いていた。
そしてその生物は1匹ではなかった。
先頭の蒼に付き従うように、黒、白、赤、また黒といったように、どんどん何もない空間から現れる。
30、31・・・・40・・・おいおいマジかよ・・・何でドラゴンが群れてるんだよ・・・・
この世の最強生物の大量の影が、地上で剣を振るう人類をすっぽりと覆った。
同時に地面が蠢く。
ホンレスの壁と人類軍の間に、地面から茶色のドラゴンが姿を表す。
ドラゴンの咆哮と魔人達の雄叫びが、人類の詠唱の声をかき消した。




