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アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
デパトス編
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第二十二話『魔人』

 オレのスキル『存在証明』は、アーノルド・アンダーソンの肉体と精神の情報を世界に縛り付けるだけのもの。


 肉体の強度は普通の人間と遜色なく、その代わり死んでも時間が経てば何事もなかったのかのように復活するスキル・・・だと思っていた。


 昔、ある男の提案でスキルの解釈をいじってみようと言うことになった。


 オレは自身から漏れ出す微量な魔力と肉体の細胞一つ一つの存在を固定できるかを試してみた。


 結果は思いの外上手くいった。


 身体の周りを漂う魔力を固定化することで、堅牢なシールドを纏うことに成功した。

 魔力のシールドは魔素も物質も通さない。


 破る方法と時間制限はあるものの、それでも強力な技だ。


 それまでは自爆紛いの事をしたら、戦線を離脱していた。肉体の強度は人間と変わらないからだ。


 しかしこのシールドのお陰で自爆技を連続して使える様になった。


 勇者一行の特攻魔術師 アーノルド・アンダーソンはそうして誕生した。



 魔物の群れの中心に突っ込んだ。


 証言通り魔物達は武器を持っていた。異様な光景だ。


 四足歩行で駆け抜けその強靭な顎で攻撃する狼が、二足歩行で剣を構えている。

 獣人にも見えるが、彼らはやはり魔物なのだろう。獣人を凌ぐ背丈と、野生み溢れる体臭、何より顔の輪郭が獣のそれだ。


 獣人の顔はどちらかというと獣よりも人間に近い。


 人の様に振る舞うをした魔物と魔獣たち・・・魔人とでも呼ぼうか・・・


 おそらくホーネットも魔人だったのだろう。


 魔人はどこから生まれたのか? そもそも自然に獣が知能を有することは可能なのだろうか?


 白狼の魔人が剣を振り下ろす。


 しかしもうシールドは展開してある。

 魔人の剣はオレの体から数ミリ浮いて止まる。

 不思議そうな顔をしながらも、他の魔人も一緒になって剣でオレの身体の周りを叩く。叩き続ける。


 全くオレに効いていないのを理解しているはずなのに、魔人たちは距離を取らない。


 そこまでの知能は無いのか・・・? いや、これは戦闘慣れしてないって所だろうな・・・


 そろそろオレも反撃をしよう。


『水よ 削れ 貫け 押し流せ 水砲(アクアキャノン)


 両手に浮かんだ魔術陣を押し当てる。


 二つの相反する魔術が互いに衝突し、魔力の塊だけを放出する。

 白い光に包まれた魔人達が粉々の肉片になり霧散する。



 あと100回くらいやれば、半分は消し飛ばせるかな・・・




 反撃の隙もなく魔人達は肉片になっていく。


 勇敢にも魔人達はオレに飛びかかってくる。

 そんなものは物ともせず、ただ詠唱を唱え続ける。


 6回目の魔術の発動と爆発。1000体くらいは消し飛ばせただろう。


 後ろの方で人間の掛け声が聞こえてくる。


 オレは単身で魔物の群れに突っ込んだから群れ後方の方にいたが、人類の猛攻に魔人達の群れが崩れ始めている。


 ヤバイな・・・ここまでこられたら普通の魔術を使わないといけなくなる。


 オレの爆発は無差別だ。オレはシールドを纏っているので大丈夫だが、普通の人間だと爆散してしまう。


 急いで群れのさらに後方へ移動しようとしたその時、急に身体の自由が効かなくなる。


 つま先から徐々に身体が石へと化していく。

 硬直して動かない視界の端に、裸の人間の女が映る。しかしそれの頭には髪の代わりに蛇が生えていて、下半身が蛇の尾になっている。


 メドゥーサだ。


 マジか・・・危険度Bランクの魔物も混じってんのかよ・・・


 全身が石化する。指一本も動かせない。


 ここぞとばかりに魔人達が飛びかかってくる。体を動かせないので防ぎようがない。


 でも大丈夫・・・


 オレの胸部に魔術陣が展開される。そこから放たれた炎がメドゥーサの頭部を貫く。

 同時に石化が解除される。


 ふぅ・・・! 貼ってて良かった罠魔術(トラップ)


 シールド状態のオレの一番の弱点は封印もしくは無力化だ。あらかじめ自分の体に罠魔術を貼っておくと、身体が動かない時に便利なのだ。


「やはり人類はオソろしい・・・自分の身体に魔術を貼るなんて・・・」


 メドゥーサの身体の横に立っている魔人が恐れ慄く。魔物図鑑でみた事のある魔物だが、思い出せない。


「別に人類全員がこんな事をするわけじゃない。オレは他の奴よりも頑丈だから・・・」


「否!! オマエ達人類は目的のために手段を選ばない恐ろしい生物だ!!」


 魔人が叫ぶ。


 それにしてもこの魔人は流暢に話す。リーダー風なホーンラビットが一番喋れると思っていたが、そうじゃ無いのか・・・?


 ますますこの魔人達を指揮しているのもが分からない。なぜ危険度Fのホーンラビットが人類の勧告に選ばれて、危険度Bのメドゥーサがただの兵士として戦ってるんだ?


 会話をしていた魔人が突如としてしゃがむ。その後ろから他の魔人達が鉄の筒のような物をオレに向ける。


「はっしゃ!!」


 という掛け声と共に、小さな鉄の球がオレの身体に直進し、シールドに弾かれる。


「くそ!! ジュウも効かんのか!!」


 魔人が叫ぶ。


 ジュウ・・・銃か!! 

 本で読んだことはあったが、見るのは初めてだ。

 

 確か火薬か火の魔石の爆発で鉄の塊を飛ばす武器。魔術よりも扱うのが簡単で、速度が早い武器。


 そういえば、デパトスの軍に銃は無かったな。


 辺りを見渡す。周りにいるほぼ全ての魔人が銃を持っているのに気づく。

 竹が割れたような音を出す音と、人類の悲鳴が聞こえる。

 魔人達の攻撃手段が銃に変わったのだ。


「ジダン ソウテーン」


 先程のホーンラビットが指示を出しているのが見える。

 やはりあのウサギはこの群れの頭なのだろうか。


 とりあえず(ウサギ)を潰しとくか・・・


 銃に対する好奇心を捨てて、ウサギの方へ向かう。

 7回目の爆発をさせようとすると、突如として人間の兵士がウサギの横に現れる。


ハミルだ。


 ウサギに振り向く隙も与えずにその首を跳ねる。ハミルの奇襲に反応した魔人も簡単に切り刻まれる。手に持っている銃も一緒に切られる。


「ハミル!」


「アーノルド! ここにいたのか!!」


 久々の再会に飛びつこうとするも、「ちょっと待て」と止められる。

 

 ハミルはポケットから金の鷲の彫刻を取り出して口を当てる。


 同時にオレの持っている銀の鷲の彫刻が小刻みに震え中からハミルの声が聞こえる、。


「各員に告ぐ。敵は銃火器を扱っている。ペンダントに魔力を流し『乱風』を展開せよ」


 ハミルは鷲の彫刻を口から下ろし、今度はその手に握り込む。すると彼の周りに風が発生する。


「もしかしてこの鷲の彫刻・・・魔具か?」


「そうだぞ。あれ? 説明してなかったか?」


 聞いてないぞそんな話。

 まあオレも軍に所属してるわけじゃないから良いんだが・・・・


「この魔具には『乱風(ターボウィンド)』と『電達(エレグラム)』の魔術が組み込まれてるんだ。『電達』の範囲は100メートル程だけどな・・・」


この首飾りは軍内の連絡手段だったのか・・・じゃあ『乱風(ターボウィンド)』はなんのためにあるんだ?


考えていると背後から破裂音がする。銃弾がオレの脇を通りハミルを目掛けて飛ぶ。


ハミルも音に反応する。しかし動かない。


 示し合わせたように銃弾はその軌道をわずかに変え、ハミルの横を通過していく。


 おお・・・すげえ!!


「そしてこれが『|乱風(ターボウィンド)』の効果。銃は確かに強力だが直線にしか進まなくて、弾が小さい。一定方向に流れる風を作っておいたら、そうそう当たらないんだよ」


 デパトス軍が銃を使わない理由が分かった気がする。おそらく銃よりも魔術の方が優秀なのだ。


 特に銃の連射性能の低さが大きい。銃を2回撃っている間に、『火球(ファイアーボール)』を5回は撃てるだろう。

 

「それにしても・・・」


 ハミルはオレの暴れ回った後を見て、苦笑いをする。


「メチャクチャにしたな、アーノルド」


 え・・・?もしかして引かれてる?

 どうせなら褒めて欲しいものだ。


 負けてられないと言いながら、ハミルは暴れ回る。後続の兵士達もハミルに追いついてきた。


 こうしてみるとハミルはやはり頭一つ飛び抜けて強い。


 剣技はイワンとキュークと同等で、そして何より他との連携が上手い。今日初めて共闘してるであろう冒険者とも息を合わせている。


 気づくと魔人達の群れは半壊していた。

 ハミルの言う通り、知能があっても魔物は人類に勝てないのだろう。


 しかしガイア達の言葉が未だに気になる。

 ガイアは魔物達の勝ちを確信していた。


 何かあるはずだ。奴らの秘策が。


 その時、1匹の魔人が空に向かって手を突き出す。


 毛むくじゃらのその腕の先に魔力が集まり、火の玉を打ち出す。

 それを合図に魔人は銃を捨て、手の平を人類に向ける。


 綺麗に一列に並んだ電撃がオレ達に向かって駆け抜ける。


 おいおい・・・魔術も使えんのかよ・・

評価どうぞお願いします!!

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