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アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
アレク王国
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アレク王国第四話『500年ぶりの買い物』

 教会が十二時のベルを鳴らす。

 

 メイア達と王城の下で別れた後、オレは城下の街を散策していた。街は市場に買い物に来る人だかりで賑わっていた。


 そういえば、腹が減っていたんだ。


 もう十日近く何も口にしていなかったことを思い出す。

 ちょうど昼だし、五百年ぶりの人族の食事に行きますか。エルフの食事も不味くはないが、オレから言わせると味が薄い。そもそもエルフは調味料などは使わない主義なのだ。


「よう、そこの兄ちゃん!一本どうだい?」


 オレが腹を空かせてるように見えたのかちょうどよく屋台のおっちゃんが話しかけてきた。看板には「スカイラットの串焼き」と書かれている。食欲をそそる香ばしい匂いを漂わせている。


「ちょうど腹が減って死にそうだったんだ。一本くれ」


「毎度!!一本100クェールだよ」


 ふむこれ一本で百か、物価はそんなに変わっていなんだな。エルフ達からもらった(拝借した)金も当分は持つだろう。ポケットからボロボロになった財布を取り出し、中のコインをおっちゃんに渡そうとする。


・・・クェールってなんだ!?


 慌てて財布の中を覗き込む。財布の中には銀色に光るコインが一枚と、鈍い茶色混じりの青色の銅貨が十五枚ほど入っていた。可能な限りの情報をコインから得ようとするが、全くもってこの青銅色と銀色が何クェールなのか見当がつかない。


「もしかして兄ちゃん、分からないのか?」


 屋台のおっちゃんが察したようにオレに聞いてくる。


「すいません、今朝王国にきたばっかりなもんで」

 

 恥ずかしい話だ、五百年も外に出ないと買い物もろくにできなくなるらしい。


「ちょっと財布見してみぃや」


 おっちゃんが半ば奪うようにオレの財布をとる。そして何枚かのコインを手に取り、オレに向かって説明する。


「いいか?この銀貨が1000クエール。この青銅貨が10クェール。その間の100クェールは銅で出来ている、茶色いやつだ。銀貨の上には白金貨があって1万クェール。さらにその上には10万クェール金貨というのがある。あ、100クェールもらっておくぞ」


 と青銅貨を十枚オレの財布から抜いた。


 なるほどじゃぁオレの今の全財産は・・ 1050クェールてことか。待てよ肉一個で100ってことは


「ありがとうおっちゃん。ちなみになんだけど、宿の相場っていくらくらいだ?」


「安いところで800クェール、普通で1000ってところかな」


 オーマイゴッド。

 全然金が足りない、今日一日だけ泊まったとしても明日には文無しだ。なんとしても今日か明日には仕事を見つけないと。


 そんなことを考えているオレを察したのか、おっちゃんは市場の終わりの方を指差した。


「もし金がないんだったら、冒険者ギルドに行ってみたらどうだ?あそこには日雇もあるだろうし。すぐそこの角を曲がったあたりだ」


「そうなのか?何から何までありがとーおっちゃん」


 泣きべそを書きながらおっちゃんに抱きつく。おっちゃんの惚れ惚れするほどの硬い筋肉のせいだろうか、一瞬岩に向かって抱きついているんじゃないかと勘違いしてしまった。


「よせ気持ち悪い。あとおっちゃんじゃない、シヴァだ」


 ものすごい力で引き剥がされる。


「ありがとうシヴァ。おれはアーノルドよろしく」


 串焼きを受け取りギルドへと歩を進める。まさかの貧乏旅になってしまうとは。幸先が不安だ。この財布もよく見るとめちゃめちゃボロいし。財布を持ち上げ底面を覗き込む。青い銅貨をジャラジャラと鳴らす財布には小さな文字で『フォルモ』と書いてあった


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