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アンの大往生 ー異世界終活記ー  作者: Shutin
デパトス編
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第一話『リジト村(デパトス入国)』

アレク王国は結構ダラダラ書いたので、ここからは少しテンポ良く行ければと思います。


ブックマークや評価お願いします!!

 凍える風から身を守りながら、オレ達は歩き続ける。幸いにも外出用の服を着ていて、しかも外套を羽織っているにも関わらず手はかじかむ。芽吹きの春はまだ遠いようだ。


 ・・・もう三日くらいろくに食べず歩き続けている。オレは良いが、メイアの体力が心配だ。


 フラフラとしながらも力強く前に進むメイアが気にかかる。


 オレ達はつい三日前、アレク王国から逃げ出してきた。前を歩く今にも倒れそうな女の子がそこの王女様。否。元王女様。


 何やかんや色々あり、彼女は国を捨てる選択をした。当分の目的は「彼女にとっての幸せを見つける」ことらしい。ちなみに今は彼女の父であり国王から逃げている最中だ。


 オレの目的は皆さんご存知、死ぬこと。結局アレク王国での数ヶ月にわたる生活は何だったのか、オレが死ぬためのヒントになりそうな事はなかった。


 まあ、そんなに上手くいくわけも無いだろう。開き直って旅を続けよう。死ぬまでの暇つぶしの旅を。



「もうそろそろだぞ・・・」


 掠れた声でメイアが言う。もう歩くこともやっとだというのに。


 オレ達は今、アレク王国の北東に位置する森の中。行き先はアレク王国の北に位置する王国「デパトス」だ。このルアック大陸最古の国であり、文明が始まった場所でもある。


 しかし仮にもオレとメイアの立場は誘拐犯と誘拐された王女。他の国とはいえ顔が知れてるメイアがノコノコ現れたらすぐバレる為、「リジド村」という離れの村で準備をしてからいく事にした。


 リジド村は大きいが住人自体は少ないそうだ。アレク王国とデパトス間の交易のためにある村だからだ。そのためあまり警戒されずに入ることができ、尚且つ色々なものが手に入るそうだ。


 メイアの指さす方向に集落が見える。周りを森で囲まれているくせに、まあまあな規模の村だ。


「しっかり帽子被っとくんだぞ」


 メイアはミューイ達から渡された黒い帽子をしっかり被る。メイアの綺麗な金色の髪は目立つ。今ままで王女として人目に出る事が少なかったとはいえ、隠しておいたほうがいいだろう。


 一応、村の入り口に衛兵のようなものはいたが何も聞かれず素通りしただけだった。


 呑気というか。平和で何よりというか・・・・


 とりあえずは宿で休む事にした。


 メイアを寝かしつけた後、オレは飯を買いに村を散策することにした。


 季節の影響か村はそれほど賑わってはいない。趣きのある建物の間に凍えるような風が吹く。


 伽藍堂な広場に大きな石が飾られているのが目に入る。その少し角張った、所々に小さな緑が散りばめらた石には見覚えがあった。


 500年前、ギルドからの依頼で森を開いていた時、冒険者仲間がどこらから持ってきた大きな石にそっくりだった。覚え違いでなければ、ちょうど場所もここら辺だったはず・・・


 と いうことは、リジド村とはオレ達が昔に作った村ということだ。その時の村は「ヌベーグ村」で、当初はとてつもなく小さな村だった。


 名前こそ変わったが村は残っていたらしい。感動で目頭が熱くなる。


 自分で作っていうのも何だが、良い村だった。各国のどの価値観にも合わないような「はぐれモノ」達を集めたような村で、色々な個性がここでぐちゃぐちゃになっていた。


 今では国家間の橋渡しの村。大出世したじゃあないか・・・



 串焼きを買ったのは良いものの、宿までの道を見失った。


 このままではメイアが空腹で死んでしまう。


 彷徨いながら石が飾ってあった所とは違う広場に出る。二十を超える人だかりが、何やら飛び跳ねている。


『ふぅ〜!!』


 という掛け声と共に集団の最前列が踊り出す。その手には見たことも無い光る棒を握っていた。


 その踊りを見ているのかと思いきや、集団の目線は前方にあるステージに向けられている。ちょうど1メートルほど高い場所にある踊り場。そこには若い女性3人が歌い、踊り舞っている。

短いスカートに、ヒラヒラした洋服のままの激しい踊り・・・・にも関わらずその長い長足から上は見えない。否。見ようと思わない。その一糸乱れぬ踊りと彼女達の笑顔に目を奪われ、邪な考えなど浮かばない。


 そう思わせるほど綺麗なダンスだった。


 歌も美しい。何よりテンポが好きだ。棒を振り回す奴らも曲調に合わせ、棒の色を変えたり違う動きをしている。彼らは壇上の踊り娘達の引き立て役のようだ。



『ここは輝く街の離れ

 今はもう忘れ去られ

 空に孤独を歌うだけ


 一人泣くのには慣れ 

 落とさぬよう空を見上げる

 黄金は過去にしか無いから


 君は僕の騎士をしていた

 「見守っている」そう言った

 僕はそれを無視していた

 その視線が白く感じたから


 今日という日を虜にする

 白も黒も関係ない

 僕の色に染め上げる

 

 君を君達を虜にする

 過去を未来に持ってきた

 新しい風吹かせるために


 忘れ去られた僕たちは

 永遠を望んでいない

 変われた君は木陰で一人

 眠り願う

 明日晴れ』



 曲が終わると同時に「引き立て役」共は奇声を発して、空に向かって万歳をする。


 彼らの両の手から花火が打ち上がる。決してうるさくなく、絶対に周りに被害が出ないくらいのちょうど良い塩梅。そして無詠唱。駆け出しの魔術師より洗練されている。


 しかし感心したのも束の間。集団の横にいた衛兵が花火を打ち上げた3人を、集団から掴み出す。

踊り娘達が歌い続けるのを横目に、異様なほどボコられている。衛兵の目は、汚物でも見るようなものだった。


 不憫に思ったので、地面に突っ伏す3人を介抱してやる事にした。少し人が良すぎたかも知れない。


「ありがとう。まさか今日のライブは魔術禁止の日だったとは・・・・ああ紹介が遅れたな、拙者はコルポ」

「拙者はワクテでござる。以後お見知り置きを」

「ミルムです。推しは真ん中のティフちゃんです」


 奇天烈な一人称に面を食らっているのも束の間。3人は回復したやいなや、集団の最前列に戻っていく。さっきまで殴られていたとは思えない動きと声出しをしている。


「おい! これ何なの?」


「もしや旅のお方か? これは『アイドル』という歌って踊れる最強の娘達を応援するための『ライブ』という儀式でござる」


 表現が難解だったが、ある程度は理解できた。『アイドル』という踊り子達の踊りを応援しながら見る余興の事を『ライブ』というらしい。


 またすごいものが流行っているものだ。


「つい一年前にこの村に来た異世界からの使者が残した、最高のエンターテインメントでござる!!」


 ・・・異世界人

 異世界人。別の世界線から迷い込んだ人間。この大陸とはかけ離れた常識と知識を持っている。


 オレも過去に二回しか会った事が無い。それほどレアな人物がこの時代にいるらしい・・・違う世界の常識。オレが死ぬためのヒントを持っているかも知れない。


 会いたい・・・


「なあ、その異世界人がどこに行ったかい知ってるか?!」


「そんなことはどうでも良いです。来なさい、拙者がアイドルの楽しみ方を教えて差し上げよう!!」


 コルポは話を遮り、オレを集団の中へと引き摺り込む。ポケットから赤色に光る棒を取り出しオレの手にセットする。


「まずはこれを覚えなさい『アイドル道 その1 メンバーカラー』」



 すっかり遅くなってしまった。メイアが腹を空かせて待っているに違いない。


「お待たせメイア。食べ物買ってきたぞ」


 幸いにも眠っていたメイアは目をこすりながら起き上がる。


 しかし突如としてその重たい瞼はカッと見開かれた。


「どうしたその格好は?!」


 オレの姿を見るや否やメイアは飛び上がる。


 そんなに変な格好をしているだろうか?


「カッコいいだろ? コルポ師匠達に教わったんだ。これがヲタクの戦闘服だぞ!」


 ドヤ顔で語るも、メイアは困惑している。オレの姿が眩しすぎるのか目を合わせてくれない。


「コルポ?ヲタク?何を言ってる?・・・まあ良い。その瓶の底のようなメガはなんだ?」


「ああこれな。オレ達みたいな奴がティフちゃんを直視すると危ないからな。これが必要なんだ」


「本当に何を言ってるんだ? 私が寝てる間に何があった?」


「そんなことよりこれ見ろよ!! 『サイリウム』って言って、魔力を流すと光るんだぜ」


 メイアはほっぺをつねっている。まだ少し寝ぼけているようだ。


「・・・・その『サイリウム』とやら。高価そうだな、いくらした?」


「『ヲタクセット』で服とサイリウム全部で金貨一枚だ! いや〜良い買い物した」


オレの言葉を聞くや否や、メイアの顔は真っ赤に染まる。三日食わずの寝起きとは思えない怒号が部屋に響きわたる。


「今すぐ返品してこい!!!!!」

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