アレク王国三十一話『私のために生きる』
イワンを介抱しながら門まで急ぐ。
大通りは目立つため、路地裏に隠れながら慎重に進む。
気づけばオレ達はギルドがある場所まで来ていた。
ギルドの前に集まる冒険者達。ギルド職員のラルムが率先して指示出ししている。そこにはミューイの姿もあった。
「メイアちゃん、アン君、パパ!!」
オレ達に気付いたミューイと冒険者達が駆け寄ってくる。
「メイア王女!! よくご無事で!!」
ラルムの声に冒険者達は湧く。しかし心無しかその声に元気が無いように思えた。
「どうしたの?」
「実はさっきの鐘の音の影響か・・・皆さん赤裸々に自分の秘密を暴露し始めちゃって・・・」
なるほど。痛いほど気持ちが分かる。あの鐘の音はもはや公害の類だ。
後ろの方で男達が何かを呟いているのが耳に入る。
(まさか俺たちのミューイちゃんが年上だったとは・・・)
(鬼だからここ10年くらい容姿が全く変わらなかったのか・・・)
(バカ。あの見た目で年上だから興奮するんだろうが!)
ミューイも鐘の被害者だったみたいだ。しかし鬼だったからといって、ミューイに敵対するものがいなさそうで良かった。
「・・・で、さっきの声のことなんですが・・・」
メイアの方を見据え、ミューイは言う。
「文句大アリです! こんな土壇場で心変わりなんて社会でやっていけないよ、メイアちゃん! 何でもっと早く言わなかったの?」
「・・・すまん」
「許さない。その代わり・・・絶対に幸せになってね」
メイアの頭を撫でながらミューイは笑う。
「行っても良いのか?」
「行っていいよ。国の事は私達で何とかしておくから」
冒険者達は頷く。果たしてこのゴロツキ集団共の意見を国民の総意と受け取って良いのかは定かでは無いが、野暮な事は言うまい。
「ありがとう」
それだけ言ってメイアは馬に乗り込んだ。
「お嬢様、アーノルド。森の中まで行ったら、馬を捨ててデパトスに向かえ。絶対に捕まるなよ!!」
イワンの激励にメイアは頷く。その横でミューイはオレに耳打ちをしてきた。
『ずっと待ってます』その言葉だけでミューイの心を理解するのに十分だった。
「「「それでは剣神の導きがあらんことを!!」」」」
馬は走る。メイアを乗せて。オレを乗せて。
その立派な門には目もくれず、振り返りもせず走り続ける。
「アーノルド! 私は幸せになるぞ!民のために、皆のために。何より私のために!!」
メイアは声高らかに叫ぶ。
そうだな。それで良い。
これからメイアは幸せを探す旅に出るのだ。そこにはどんな困難と試練が待ち受けているのだろう。そしてどんな希望と夢に満ちあふれているのだろう。
今度メイアの思う未来についての話を聞かせてもらおう。そしてそれをシオンとミューイ達に手紙で教えてあげよう。きっと手紙を読んだ彼らは笑ってくれるだろう。
「私は幸せになるぞ!!!」
メイアは叫び続ける。
もう鈴の音は聞こえない。
アレク王国編 完 です




