アレク王国第十六話『迷宮攻略』(3)
『脳筋系』『姑息系』『スキル系』
オレはこの世にある迷宮をこの三つに分類している。迷宮はその作成者の財産を守るために在る。そしてその『守り方』は作成者の性格と力量によって大きく左右される。
基本的によくある迷宮は『姑息系』だ。宝のある部屋までにいくつもの罠や分かれ道があり、本当の道は巧妙に隠されている。このタイプは作成者の性格が悪ければ悪いほど難しく、大昔の学者などの迷宮はAランクに分類されることもある。
二つ目に数が多いのは『スキル系』の迷宮だ。これは迷宮の作成者のスキルが、罠として迷宮に組み込まれたものだ。作成者の死後も残り続けるスキルは強力なものが多いが、迷宮のベースとなるスキルを攻略できればさほど脅威ではない。
そして『脳筋系』これの作成者は賢いのか馬鹿なのかが分からない。迷宮用の空間を作った後、その空間に集めた魔獣と魔物達をぶち込む。作らなかったのか、はたまた作れなかったのか。このタイプにはあまり罠が設置されていない。魔物達が間違えて作動させてしまうからだ。集められた魔物達は、どういうわけか迷宮内で生態系を確立させる。そして新しい「家」となった迷宮を守るのだ。
平均的な攻略難易度としては『脳筋系』が一番高い。『脳筋系』は基本的には、「訪れる」場所ではないからだ。作成者自身も二度と訪れることはない。この迷宮を攻略するには全ての魔物を無力化するしかない、例えそれが作成者であってもだ。扱いに困った物などを永遠に屠るためのゴミ箱、それが『脳筋系』だ。
だからこそ珍しい。入り口が塞がっておらず、律儀に階段までついているのは。
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待ってましたと言わんばかりに、ジュールは1メートル弱の長剣を鞘から抜き、構える。
『身体強化!!』
そう叫んだジュールの体は一瞬だけ光り、ジュールは2歩ほど手前に出る。カレンは30センチほどの棒を背負っていたリュックから取り出し、棒に魔力を流し込む。魔力を込められた棒はニョキニョキと上下に伸び、カレンと同じほどの背丈になり魔術用の杖へと変わった。
『火球』
『火球』
カレンの杖から合計六つの火の球が放たれる。魔物達に着弾した火の球は爆発し、前列を吹き飛ばす。魔物達の肉片が足元に転がる。鋭い牙、黄色い肌、少し人に似た顔つきとそれを囲う立て髪。マンティコラだ。
「マンティコラ!毒注意!」
「マンティコラだけじゃない。一角イノシシも多数」
魔獣達を切り伏せながらジュールがオレの叫びに答える。魔獣達の緑色の血を浴びながらも、剣は銀色の輝きを放っている。
オレも二人に負けじと手を地面に当て、詠唱を開始する。五体のイノシシが猛スピードでオレの体を目掛けて突進してくる。
『火よ 燃え盛れ 柱となり 天まで焦がせ 火柱』
5本の火柱はイノシシ達の体を貫き、燃やし尽くす。迷宮の天井まで届いた火柱は消えることなく、魔獣の接近を阻む。
火の柱の出現により、魔獣達の猛攻は一旦止むがそれも束の間。イノシシたちは火の間を潜り抜け、マンティコラは毒の針を尻尾から発射する。
『土よ 壁をなせ 受け止めよ 岩壁』
『土よ 壁をなせ 受け止めよ 岩壁』
カレンとオレが同時に唱えた詠唱は、二つの壁を作り出し、針を受け止める。壁の後ろからジュールは颯爽と飛び出し、火の柱を超えてきたイノシシ達の首を刎ねる。
首を失ったイノシシ達は止まらずに、岩の壁にぶち当たる。緑色の液体を撒き散らせ、その場に倒れ込む。
「このままじゃ埒が開かないわね」
「どうする、迷宮内じゃデカい爆発はできないぞ」
火の柱の奥で大量の魔物達がオレ達を睨む。最初の量からは二割ほどは減っただろうか。ジュールは魔獣達の止まらない猛攻にイライラを募らせる。
「アーノルド、水系統のデカいの使える?」
「使える。あいつらをびしょびしょにするくらいなら」
「完璧!お願い!」
カレンの指示のもとオレは詠唱を始める。魔術陣の前でみるみる水が生成され、丸い形を成していく。
『水よ 穿て 潤せ 水球(極大)』
馬車を包むほどに大きくなった水の塊は、火の柱を潜り抜けて魔獣達の頭上で破裂する。
「これでいいか?」
「完璧よ」
そう笑ったカレンは杖を両手で構え、魔獣達の方へと向ける。
『雷よ 流れろ 痺れよ 雷流一閃』
バリッという鈍い音と共に、カレンの杖から白色の眩い光が放たれる。同時に魔獣達の断末魔と悲鳴が迷宮内に響き渡り、全てのイノシシとマンティコラが崩れ落ちる。
「制圧完了」




